私が6/24のブログ記事で書いた通り、ロシアからドイツにパイプラインでガスを送っている「ノルドストリーム1」はドイツの企業シーメンスのタービンを使用しているのですが、それをオーバーホールのためにシーメンスのカナダ工場に送った後、カナダ政府がロシアへの経済制裁を理由に返却を拒否し、ロシアから欧州に天然ガスを送る「ノルドストリーム1」のパイプラインの流量が 6/17以降、大幅に減っていましたが、7/11から定期点検の為、ノルドストリーム1のガスが全てストップしたようです。
点検は7/21までの予定ですが、点検が終わったら本当にガスがまた流れ始めるのか、ドイツは心配でならない状況のようです。
本日はこの記事をご紹介します。
Russia halts Nord Stream for maintenance, creates European anxieties
(和訳開始)
ロシアがメンテナンスのため停止、欧州の不安材料に
ロシアがメンテナンス期間を延長したらどうする?欧州が不安の声を上げる。
パイプラインの運営会社であるNord Stream AGによると、Nord Streamパイプラインを通じたロシアのガスの欧州への配送は、メンテナンスのため月曜日の日本時間午前4時に停止した。
メンテナンスのための停止に加え、7月11日から21日まで、パイプラインの2本のストリングは機械部品と自動化システムのテストが行われている。
欧州の政府、市場、企業は、10日間のガスの流れの停止により、ウクライナでの戦争が進むにつれてパイプラインが閉鎖されることを恐れ、あるいはロシアが定期メンテナンスを延長して欧州のガス供給を削減することを恐れている。
ロシアはノルドストリーム1を通じて、バルト海を経由してドイツに年間550億立方メートルのガスを輸送している。先月、この流量が40%減少したのは、ロシアが、ドイツのシーメンス・エナジー社がカナダで修理している機器の返却が遅れたためと非難したからだ。
もし、定期メンテナンスが延長された場合、冬に向けてロシア産ガスを大量に貯蔵する計画が中断され、現在の欧州のガス危機を悪化させることになる。そのため、抜本的な対策を講じ、痛みを伴う値上げを行うことになった。
ドイツのロバート・ハーベック経済大臣は以前、"ロシアが予定されたメンテナンス期間を超えてノルドストリーム1を通じたガスの流れを停止する可能性に直面しなければならない "と発言している。
クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、ロシアがエネルギー資源を政治的圧力の武器として利用しているという非難を否定し、"メンテナンスの停止は定期的かつ予定された出来事である "と主張した。
土曜日、カナダはガスパイプラインNord Stream 1のメンテナンスに必要なタービンをドイツに返却することを決め、ロシアはこの機械の到着を待って供給を増やすことにした。
ウクライナは、ドイツがエネルギー供給を強化しようとしている一方で、ロシアに対する国際的圧力を維持しようとしているため、カナダにタービンを返却しないよう求めていた。
キエフは、モスクワが供給量の減少を修理の必要性のせいにしていることから、ベルリンがロシアの「脅迫」に屈したと非難している。
(和訳終了)
ドイツ政府がカナダ政府と交渉して、タービンを返却するように促したようで、カナダ政府は悩んだ末にドイツの要望を受け入れ、タービンを返却することになったようです。
もちろん、これにはウクライナ政府が猛反発しています。
Ukraine express 'deep disappointment' after Canada grants 'time-limited' permit to Siemens Canada to return turbines for Russia-Europe gas pipeline to Germany:
— CBC News Alerts (@CBCAlerts) July 10, 2022
Earlier story for background: https://t.co/TB1iEc4ynF
上のtwitterの和訳
カナダがシーメンス・カナダにロシア-ヨーロッパ・ガスパイプライン用タービンのドイツへの返還を「期限付き」で許可したことにウクライナは深い失望を表明した。
欧州がガスを大量に消費する冬に向けて戦々恐々となっている中、EUとNATOの加盟国でありながらも ロシアに経済制裁しないということで、ガス価格も安く抑えることができて、「ガスの他国への融通?そんなことしないよ。」と余裕を見せているのがハンガリーのオルバン首相です。↓
Hungary not selling its gas to other EU members
(以下上記の記事の和訳)
ハンガリー、そのガスを他のEU諸国に売るつもりはなし
EUは、ロシア産炭化水素の禁輸措置の反動に対処するため、6月に一時的な免除を受けた国が蓄えた燃料を保管・分配する手続きを考案し、ロシアからの直接購入を継続できるようにした。
戦後3カ月間で、EUはロシアから570億ユーロ相当の石油、ガス、石炭を購入した。現在、ロシアと直接取引をしているのは、チェコとハンガリーだけである。
しかし、ウクライナ戦争の支配的なシナリオを否定し、禁輸措置を非難し、免除さえ得ているハンガリーの場合、ヴィクトル・オルバン首相がモスクワとの良好な関係から交渉した優遇レートでロシアから購入しているガスを共有するつもりはない。
オルバン首相の外務大臣ペテル・シヤルトーは、欧州の政治体制をソビエト経済体制になぞらえたほどである。
(和訳終了)
以上、ロシアからの石油を巡る欧州の戦々恐々とした状況を伝えるニュースをご紹介しました。
ロシアに対して米以上に好戦的な英国以外の欧州各国の本音は 秋までには この戦争が停戦してほしい。そして、依存度は下げるにしても ロシアからもガスを購入し続けたい というところだと思います。
冬に向けてガスの十分な備蓄も出来ていないし、中東からスポット価格で購入というのは高すぎるし、量にも限度がある。
また、中東はガスや石油の増産もしないと言っているので、どうしようもない状況のようです。
しかし、小国ながらも ハンガリーのオルバン首相は存在感ありますね。
あくまで「自国の国益第一主義」というのが彼の姿勢から伺えます。どんなに他のEUやNATO諸国から圧力をかけられても「ロシアへの経済制裁によってハンガリーの経済を犠牲にすることはできない」と頑なに応じていません。
世界中で起こってきた「色の革命」による政府転覆やグローバリズムを推進してきたハンガリー系ユダヤ人のジョージ・ソロス氏がハンガリーのブタペストに設立した大学を 2019年、オルバン首相が閉鎖させた というニュースを聞いてからずっとですが、私はオルバン首相に注目しています。