久々に、感じたことを書き留めておかなければ、と思うドラマに出会えたので更新します。
『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』(2018)
キャスト:イ・ソンギュン、IU他
脚本:パク・ヘヨン
割と最近の作品で、色んなレビューで評価が高く気になっていたんですが、期待通り、心に響く素敵な作品でした。
正直、観ている最中はすごい面白い!とか、次が気になって止まらない!という感じではなかったのですが…一話一話に涙して、最終話を観終えた後にじんわり温かい余韻が残って。長い道のりのラストにようやく光が差し込むような、納得の傑作ドラマです。
さて、簡単にあらすじを書きます。
IU演じるイ・ジアンは子供の頃に母親の借金を肩代わりし、借金取りにひどい仕打ちを受けるうちに、祖母を守ろうとして相手を刺し、死なせてしまった過去があります。そのため自分の過去を知られるのを恐れ、他人と距離を置き、人の優しさや愛を信じられず冷ややかに生きてきました。
イ・ソンギュン演じるパク・ドンフンは、3兄弟の次男で、唯一大企業の部長として会社勤めを続け、実家の家族から期待を受ける一方、自分の子供は海外で勉強中、弁護士の妻とはほとんど会話のない毎日。何となく会社に行っては飲んで帰る、という日々を送っていました。
そんな二人が会社である事件をきっかけに近づき、互いの傷を知り、それぞれの人生にかかわっていくようになります。
ジアンは、毎日を退屈そうに生きるパク部長に狙いをつけ、最初は目的のためだけに利用しようと考えていましたが、パク部長の言葉、行動に次第に心を惹かれるようになります。
パク部長も、ジアンの若いのに人生を悟ったような生き方と言葉に、自分の押し殺した感情を見透かされ、また共感し、彼女を思いやるようになります。
二人のやりとり、そして周囲の人たちとの交わりによって、温かな奇跡が生まれていくヒューマンストーリーです。
この作品のベースにあるのは、現実社会に生きる人と人とのつながり。会社、家庭、地域といった身近な社会を通して描かれる人々の縁に、きっと誰もが前向きな希望や尊さを感じられるはずです。
ここからは、私なりに心に残ったシーンを綴っていきたいと思います。
※ラスト以外のネタバレも含みます。
まずは私が最初に心を掴まれたシーンから。
賄賂受け取り疑惑をかけられ、窮地をジアンが救ってくれたと思ったパク部長が、電車の中で一言、ジアンに ”고맙다”「ありがとう」と言います。
このときの低い声と言い方、電車が流れていく情景、音楽が全てマッチして、急に静かな感動が込み上げるのを実感しました。たぶん、初めてジアンの心がほんのちょっと動かされた瞬間だったと思います。
同じく、パク部長が見送った家の前でジアンに ”착하다”「いい子だな」と言うシーンも、心がほどけて涙がこぼれてきました。ここからジアンは少しずつ変わっていくんです。いい子だな、この一言がこんなに温かいなんて…。
なぜこの言葉が出てきたのか、このセリフを選んだのか、脚本の素晴らしいセンスと丁寧な見せ方に、序盤から絶賛したい気持ちになりました。
次に印象的だったのは、パク部長が仕事に家庭に行き詰まる中、親友で僧侶のギョムドク(サンウォン)の元を訪れ、寺で語ったやりとり。
パク部長が「自分を犠牲にすればうまく回ると思っていた」と言ったのに対し、ギョムドクは「犠牲と言えるほど偉いのか?犠牲などと言い訳にするな」と返します。
予想外の返事に一瞬驚いたのですが、ギョムドクがここで伝えようとしたのは、「自分の人生を受け入れ、自分の幸せを考えなさい」ということでした。どんな人生であろうと、誰かの”犠牲”なんかじゃない、生きてきた全てが自分自身の人生。その生き方を素直に受け止めて、これからは自分の人生を幸せにすること、自分が幸せになろうと思えばいいんだ、そう背中を押してくれたのです。
”아무것도 아이야” 何てことないさ
”행복하자” 幸せになろう
彼の言ったこの言葉は、パク部長の今後の支えになっていました。彼は主要キャラではないのですが、生きてく上で大事な考え方、捉え方を投げかけてくれる重要な存在だったと思います。
続いて、パク部長が妻の不倫を知ったときに不倫相手のト社長に言ったセリフ。
「ユニ(妻の名前)とは別れろ。俺が知ったことは言うな。そしたら何も攻撃はしない。」
、、、こんなこと言えますか??
その後パク部長は本当に何事もなかったように妻の証拠を消すんです。もう、不憫だし悔しい!結局妻には知られてしまうんですが…
でも、今まで築いてきたもの、家庭を守ろうとする意地のような強い信念は伝わってきました。パク部長が恐れていたのは、周りの期待通りに生きようと自分を押し殺して生きてきた人生を、無駄だったと否定されること、壊されてしまうことだった。だから、必死でこれまでの人生の意味をつなごうとしていたんです。「誰も知らなければ何てことない。」そうジアンに言ったのも、彼のこれまでの生き方を示していました。
都合の悪いことを知ってしまったらどうするか?知らないふりをするのも一つの選択だし、知っていることを支えに変えることもできる。パク部長がジアンに盗聴されていたことを知ったとき、「その人のことを知ってしまえば、何をされても関係ない。俺はお前を知っている。」と言ったのも印象的でした。
それぞれの選択に正解なんてないけど、一時の感情ではなく、”自分の人生において守りたいものを守る”選択をすることが、後悔しないために大事なのかなと思いました。
それから外せないのは、ジアンのまっすぐな想いが言葉に出るシーン。
「うれしくて。私の知り合いにもこんなに優しい人がいて」
「私を価値ある人間だと思わせてくれた、パク・ドンフン部長への感謝は忘れません」
「おじさんに出会って、私は初めて生きました」
私には、彼女の辛さは本質的にはわかりません。でも、これらの言葉には嘘偽りなく、なぜかこのときの気持ちはわかるような気がしました。どんな境遇や過去があっても、必死に生きている人には必ず価値がある。ジアンは、パク部長に出会って初めて自分の価値を認め、生きる意味を持つことができたんだと思います。
何かの能力や才能、地位だけでない、人としての価値を他人に見出すことができたら…世の中はもっと明るく生きやすくなるのかも、なんて考えてしまいました。
そして、最後はジョンヒのお店のシーン。
人生うまくいかないと愚痴をいいながら仲間と酒をのみかわすおじさんたち、みんなが良い味を出していて、この居酒屋シーンが一番人間らしさを感じたかも。厳しい現実や生きづらさを分かち合いながら、互いに慰め、癒される場所だった。
そんなおじさんたちも、他人のジアンを家まで送り、仲間に安全を見守らせ、ジアンの祖母の葬式にまで出席してくれる。
葬儀の後に兄のサンフンが言った言葉も素敵だったなぁ。
「人生で痺れる瞬間を作ってくれた」
あなたの行動こそ痺れたよ…
最終話の兄の計らいは、涙のピークで私の中で最も好きなシーンです。
この作品を通して、人との出会いって深入りするのは怖いけど、本当は怖がらなくていいものなんだなって思いました。素直に「ありがたい」って思えば良いんだって。
人に迷惑をかけるとか、良いことをしてくれて申し訳ないとか、そんなことは相手は気にしていない。自分が相手を助けたり、良いことをしたりしたら、誇らしく思えるのだから。
人は助け合って生きている、その優しさを素直に受け取って、幸せに生きることで返すこと。それがこの社会で、人生でみんなが果たすべきことなんだって、教えられました。
私って優しさに飢えてたのかな?って思うくらい、こんなに人の優しさに涙した作品は初めてです。
やっぱり韓国ドラマは凄いなって、改めて思います。伝えたいメッセージがちゃんとあって、そこに向かって丁寧に作り込まれてる。製作陣の熱意と技量、チームワークの高さもよくわかります。そして作品を引き立てる役者の演技も本当に素晴らしい。
IUちゃん、言葉でなく心の演技が多かったけど、気づけば私もジアンと一緒に泣いていました。イ・ソンギュンさん、何と言っても声が素敵で、最終回の食事シーンでジアンを見つめる眼差しもすごく優しくてパク部長そのものでした。兄のサンフンを演じたパク・ホサン、弟のギフン役のソン・セビョク、仲間のおじさんたち、自然と滲み出る人間味が流石でした。
きっと役者さんたち自身が人生経験を積んで色んなことを考えてきて、この作品を深く読み取ってるんだろうなぁと感じられました。
とまぁ、色んなシーンについてつらつらと書きましたが…
本当に、会社帰りの道を歩きながらこのドラマを思い出して、「頑張ろう」って思えるような作品(実際私がそう)なので、とくに社会人の方に、ぜひおすすめしたいです。
みんな、”화이팅” ファイティン!