何から書いたら良いんだろう??
とにかく素晴らしい作品にまた出会えました😭
『ディア・マイ・フレンズ』(2016)
キャスト:コ・ヒョンジョン、キム・ヘジャ、コ・ドゥシム、ナ・ムニ、ユン・ヨジョン、パク・ウォンスク、チュ・ヒョン、シン・グ他
脚本:ノ・ヒギョン
あぁ~~、ほんとに良かった、素晴らしかった!!
おじい様おばあ様たちが主役の話って初めて観たんだけど、笑えて泣けて愛おしくて、温かくも現実にしっかりと向き合った作品。
これまで観た韓ドラで『ありがとうございます』に並んで(超えて)一位かも✨
これを書いている今の私は27歳。
この作品の主人公たちとは人生経験も全く違うし置かれている状況も異なるけれど。
年齢も親も子も文化も関係なく、みんなが共通して自分自身の人生と闘っていること、その事実に自ずと気づかされのめり込んでいました。
さて、あらすじですが、簡単に言うと、
人生の終盤に差し掛かった老人たちが、過去の傷や事情を抱えながらも日常を生きていく中で、親の死、子のDV、夫婦仲やかつての恋人、病気、介護など、様々な問題に直面し、友人たちと支え合いまた自分自身も変化しながら乗り越えていくお話。
メインに登場するのは7人で、
病気の父、父を介護する母、事故で足に障害を負った弟、そして一人娘のワンを持つ母、ナンヒ(コ・ドゥシム)
3人の娘(長女は養女)がおり、今は夫と二人暮らしで世界一周を夢見る良妻賢母のジョンア(ナ・ムニ)
ジョンアの夫で亭主関白、学歴コンプレックスがあり、ケチで定年後も働き続ける頑固なおじいちゃんソッキュン(シン・グ)
夫に先立たれ、3人息子はそれぞれ独立、孤独を抱え豪邸に一人で暮らす天然なおばあちゃんヒジャ(キム・ヘジャ)
妻を病気で亡くし、今は一人暮らしで初恋相手のヒジャに想いを寄せる、心は若い元弁護士のソンジェ(チュ・ヒョン)
ナンヒの夫の不倫相手との関係でナンヒと確執を持つが、自らはガンを患い男性関係も恵まれない女優ヨンウォン(パク・ウォンスク)
12兄弟の末っ子で、10歳から働き親戚たちを金銭的に支え続ける、貧乏嫌いでカフェを営む独身老女チュンナム(ユン・ヨジョン)
とそれぞれに事情を抱え個性たっぷり。
そんな7人に振り回されながらも、彼ら彼女らの生き方から人生を学び客観的に語っているのが、ナンヒの娘でコ・ヒョンジョン演じる小説家のワンです。
この作品は、7人の老人と、それを見守るワンの語りで進行していきます。そしてその語りこそが、『ディア・マイ・フレンズ』、“私の老いた友人たち”、というワンの書いた小説になっているのです。(この構成も素晴らしい!)
だから老人たちが主人公といいながら、本当の主役はワンであり、ワンから私たちへのメッセージとなっている作品なのです。
当のワン自身も恋人や母親とぶつかったり辛い思いをしたりしながら生きていく様子が展開されていきます。
ちなみに、ワンの恋人ヨンハを演じるのはチョ・インソン!同じ脚本家の作品『大丈夫、愛だ』では精神病を患う難しい役柄でしたが、今回も交通事故で車椅子生活になり、スロベニアでワンを待つ切ない役です。でも前述の作品とは印象が違って、落ち着いた、大人の男の人、って感じ(前はイケてるモテ男って感じだった笑)。そんなヨンハとワンの繰り広げる恋愛模様は切なくて苦しくなるけど、とっても美しい。ヨンハはスロベニアで暮らしてるんだけど、その風景、映像もまあ美しいこと。二人のエピソードの時に流れる曲もすごい合ってて、こういうロマンスも入れてるからちゃんと大人の恋愛というか、ときめき要素も楽しむことができました!
肝心の老人たちの話は、本当に何から書いていいかわからないくらい、それぞれにストーリーがあってどれも重くて、実際に考えさせられることばかりでした。
中でも3者(3家族)に焦点を当ててエピソードを紹介したいと思います。ここからはネタバレありますので見たくない方は飛ばしてください。
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まずはジョンア夫婦の話から。
ジョンアは、昔姑にいじめられたりお腹の子を亡くしたりと、すごく辛い過去があっても、夫と約束した「世界一周旅行」を楽しみに耐えて過ごしてきました。一方夫のソッキュンさんはお金がないないと一向に旅行に行く気はなく、男尊女卑で威張ってるし、そのくせ身の回りのことは全て妻任せ。一見、ジョンアが可哀想に思うんだけど、ジョンアがついに家を出て別居し始めてから、だんだんとソッキュンさんも可哀想に思えてきて…。
若い頃に自分のしたことや妻に言ったことは、当時は一家を支えることに一生懸命で全く悪気はなかった。ずっと家族を守ろうという気持ちや責任感は強くて、実は娘が性被害に遭ったとき犯人を殴りに行っていたり、お金を出し惜しみするのも、昔遊んでいたときに弟の目に怪我を負わせてしまって、罪の意識から弟のために資産を充て、何かと弟の面倒をみるようになったりと、本人しか知らない姿があったんですね。
だけど、これまでジョンアにしてきた態度や言動は気にも留めていなくて、別居中に回想する中でやっと気が付くんです。そして、「一番の罪は、自分の罪に気づかなかったことだ」と言いました。
結局なんだかんだこの夫婦は関係修復できたんですが、一度距離を置いたことでお互いの大切さに気づき、自分自身の愛情も確かめることができた。熟年離婚とか現実でも割と聞くけど、長年連れ添った夫婦でも分かり合えないこともあるし、知らずに傷つけてしまっていることもある。だから、一度自分を顧みること、自分の知らない相手の姿があることを想像することの大切さを、この夫婦から今一度学ぶことができるんじゃないかと感じました。
続いてヒジャさん。
ヒジャは優雅な老人で一見何の苦労もなさそうだけど、昔、生まれたばかりの子どもを背負って病院へ行く途中で、その子が亡くなってしまったという悲しい過去を持っています。その後無事に3人の息子が誕生したけど、息子たちが大人になった今、彼らのお荷物になりたくないと頑なに「一人で生きていける」なんて言っていて。迷惑をかけるくらいならいっそ死んでしまおうと橋から飛び降りようとしたり、自分を唯一慕ってくれている末息子のミノ(イ・グァンス)に嫌われないよう気にしつつも寂しさをわかってほしかったり、正直ちょっぴり厄介なんですが…。観ているうちに、ちょっと世間ずれ(?)したところも可愛らしく見えてくるの。ヒジャを演じるキム・ヘジャさんは言わずと知れたベテラン大女優ですが、この方本当に演技がお上手で!『母なる証明』でしか観たことがなかったから、こんな愛らしい役柄もハマっちゃうのが本当にさすが。
そしてこのヒジャ、終盤で認知症であることが発覚するんです。自分が絶対なりたくなかった病気…残酷ですね。私が印象に残ってるのは、子どもに見立てたタオルか何かを背負って、当時の病院まで歩いて行こうとするシーンがあって、後で、「ずっと後悔している」と罪悪感を抱えてきたことを吐露するところ。この歳になっても、子どもを亡くしてしまった記憶は「後悔」として残り続けるんだなと。それは、悔やんでも悔やんでも消えることがなく、一生抱えながら生きるんだという現実、これまで考えたこともなかったけれど、そういうものなんだとこのときハッとさせられました。人生に後悔がないことはないし、後悔してはいけないこともない。ただ私たちは自らの抱える後悔と共に生きていかなければならない。その重みと葛藤、やり切れない苦しみが伝わってくる場面でした。
最後に絶対書いておきたいのは、ナンヒの話。
ナンヒは娘への執着が強く、「不倫はダメ」「障がい者との結婚はダメ」と常々言っていました。そんな母がワンにとって重荷になっていて、ヨンハが事故で足に障害を負ったとき、「障がい者になったから」と自分の中で理由付けしてヨンハとの結婚を諦め別れました。そして自暴自棄になり妻帯者のいる勤務先の編集長と不倫…まではいかないけど、ちょっとした男女関係に。不倫疑惑を知ったナンヒは娘に強く当たりますが、逆にワンは「あなたのせいで」「あなたの言いつけを守って」ヨンハと別れたんじゃない!と激しく怒り大ゲンカに。このときの演技もほんとすごい剣幕なんでぜひ見ていただきたい。だけど、後でワンは「本当は違った。母のせいにして逃げたのだ」と語っています。その母も、娘への言いつけには理由があった。実は、ナンヒの弟は昔電柱に上って落ちたときに足に障害を負い、今もずっと松葉杖で暮らしていて、弟のリハビリのために稼いだお金を回していました。その大変さを知っているからこそ、娘に同じ苦労をかけまいと思っていたのです。また、若い頃自分の夫が同級生と不倫している姿を目撃してしまったショックから、「不倫」に対する相当な嫌悪感を持っていた。だから自分の大事な娘が自分の絶対に許せない不倫をするなんて、とてつもない怒りと悲しみに陥ったのでした。色んな事情や背景を知ると、ナンヒのことも理解できます。
ケンカの後ナンヒとワンは和解し、ワンは密かにヨンハとヨリを戻します。一件落着に思えましたが、この後二人に襲い掛かる予想もしなかった重い現実…それは、ナンヒの病気でした。ナンヒは肝臓ガンと診断され、それもステージ3か4という危険な状態とのこと!それを知ったワンはショックを受けますが、手術日まで母と気晴らしに出ようと、旅行に連れていきます。そこで二人で友達のように歌って踊って、素敵な親子の様子が映されるんですが、その後のワンの語りがまた胸に来るもので。
「自分は最低だ。母への心配をよそに、自分自身の心配をしている。ヨンハと私はどうなる?」と。
あぁ、そう思っていたのね…でも、それもわかるかもしれない、そんな風に考えてしまいました。びっくりするほど正直だけど、綺麗事じゃないのがまた共感もできて。理想の自分と違う考えをしていることに、時に自分を恨めしく思うこともあるけど、そんな自分を客観視して受け入れることは、きっと生きていく中で必要なんだ。ワンはそのことに気づかせてくれました。
そして、もう一つ大事なことを教えてくれた。それは、子は親が当たり前にいてくれるという“錯覚”に陥っている、ということ。幸いなことに、術後ナンヒは大事に至りませんでしたが、これから一生ガンの再発の不安と共に生きていくこととなってしまった。老人7人の中で一番健康そうで、何ならナンヒの母の方が年齢的にも体の不調が出そうなのに、先にナンヒの生死を心配することになるなんて。人生何が起こるかわからない、親が健康に生きているのは当たり前ではない。いつかは皆死ぬとわかっていても、私たちは親の死を身近に感じていない。だけど、親子とはそういうもので、親は子をずっと愛しているけれど、子は同じくらい愛しているのにそのことに親の死に直面して初めて気づくのだという。私たちはずっと錯覚しながら生きるのだという、これもまた否定できない真実を投げかけられました。
ラストシーンで、ワンはナンヒの母に問いかけます。
「人生をひとことで表すなら?」
「どうってことないね」
90歳そこそこの人が言う“どうってことない”人生、それが正解かもしれない。
ワンは思います。
年配者は死に向かっていくだけじゃなく、私たちと同じように、今、この瞬間を一生懸命生きているのだ、と。
最後の瞬間まで、輝けるように…
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すごく深いメッセージのある作品でした。
説教じみたことはなくて、
“この瞬間 誰の人生にも 一人一人に意味があって美しいのだ”
その事実を、ただただ体現していました。
このキャスティングって、脚本書いたときからイメージしてたのかしら?でもこのキャストじゃなかったらきっとこの完成度にはならないな、ってくらい本当に皆さん感嘆してしまう素晴らしい演技でした。さすが、さすがすぎる。
どの年代の方にも観ていただきたい、絶賛の人生ドラマです。
最初はちょっとわちゃわちゃしてて苦手な人いるかもしれませんが、めちゃくちゃ良いので諦めないでほしい!
ノ・ヒギョン作家、キャストの皆さん、尊敬します。
本当に素敵な作品をありがとうございました!!