シンガポールにはマレー系の焼きそばともう一つの中華系焼きそばである。
これはホッケンミーと言われ、シンガポールを代表する郷土料理である。
シンガポールはイギリス植民地時代に中国人移民を苦力(クーリー)として迎え、各種の肉体労働に従事させた。
彼らは中国南部沿岸地域の福建省、広東省、海南島からのものが多かった。
また南部インド人もつれて来た。
この福建人が持ってきたのがこの焼きそばである。
ホッケンとは福建の福建省南部語(ビンナン語)での発音である。
台湾にはここから多くが移っていったので、台湾語(ホーロー語)とも同じである。
今の標準語の大陸普通語、台湾国語、北京語とは全く違う。
近くの違う店で今度は福建面にチャレンジした。
注文の際にこの看板を見て、思わずフーチエンミエンと言ってしまった。
中国語漢字を見るとどうしても北京語発音が出てしまう。
そうしたらコックがホッケンミーと答えたので、イエスイエスといった。
シンガポールの中国系公用語はこの北京語なので、中国系全員が喋れる。
ホッケンミーの作り方は変わっていた。
この面にかなりの量のスープを入れて、また野菜やエビ、イカなどの海鮮具を半ば煮込むような形で作っていた。
そして面がスープを吸収して、程よい焼きそば加減に持っていくのか。
こうした作り方の焼きそばは日本国内では見たことがない。
タンメンが干上がったみたいだ。
これは煮込み焼きそばといったほうが良いみたいだ。
ただしこの地域にはホッケン焼きそばはいろいろとあるみたいなので、この店のオリジナルかもしれない。
しかしここは庶民料理の本場であるゲイラン地区である。
やはりスープがまだ残っている。
またレモンライムとサンバルを置くのも特色らしい。
面と具が絡み合っているのが見てとれる。
味はそんなにしない。
辛くも塩っ気も醤油味もない。スパイスもない。
これがミーゴレンとは違うところだ。
日本人も安心して食べられる。
もし味が必要ならこのレモンライムとインドネシア、マレーの辛味香辛料であるサンバル(タバスコと同じ)で補えというわけだ。
ただ強いエビの味はする。
要するにホッケンミーをエビ焼きそばということもある。




