武器博物館を出てからバスの出発までにはまだ少し時間があったので、商店街に買い物に出かけた。
自分のいる位置の基点をはっきりさせるため再びストックホルム駅前に行った。
買いたいものはビートルズの曲の楽譜であった。
ちょうど駅前の階段にギターを持ったストリートミュージシャンとおぼしき中学生くらいの少年たちがいたので、楽器屋はどこかと聞いてみた。
そうしたら突然英語で話しかけられて、びっくりしたせいもあると思うが、一語一語考えたり、つまりながらもその場所を説明してくれた。
中学生でも片言以上にしゃべれるのだとその時思った。
さてその場所に行ったら楽器屋はあったが、残念ながら店を閉めていた。
この時点で楽器屋はあきらめ近くにあったスーパーに行った。
あとから思ったが、本当はここでスウェーデンの世界的小売りメーカーのIKEAやH&Mの本店をを探すべきだった。
その時は気づかなかった。
スーパーで眼鏡や船の中で使う生活用品小物を買って、時間もせまったので帰りのバスの集合地点へと戻った。
このバスの停留所のすぐ脇には川が流れているが、多くの釣り人でにぎわっていた。
こんなに流れが急でルーアー釣りが成立するのかと思った。
もうこれはねらいはサケ、マスしかない。
バスの前でしばらく見ていたが魚をあげている人は見かけなかった。
その時近くで釣りをしていた人に話しかけた。
その人は航空会社のケータリング関係の仕事をしていると言っていたが、名古屋に1年間ほどいたことがあると言っていた。
この人といい、駅前で道を聞いた少年たちといい、また町中で道を聞くため適当に尋ねたご婦人方といい、スウェーデンの人はとても親切だ。
イクスキューズミーといって話しかけると、必ず自分の方を向いてにこっとしてイエスと答えられる。
また説明等も丁寧で親身になって相談に応じてくれているという感じを受ける。
34年前の時もそうだった。
横断歩道の近くにたっているだけで車が止まり、中から手振りでどうぞお渡りくださいというジェスチャーをしているのには驚いた
。また店の店員の対応等もよい。
要するに一言でいうと人間ができているということである。
街も通りも建物もきれいで整っており、雑な感じや手抜き的な雰囲気は全く感じない。
落書きや壊れたものが修理されずにほっておかれているというような所もない。
まさにマナー大国という 印象である。
これは他のヨーロッパ諸国と比較しても一段階違う。
旅をしていてもすがすがしい気分になる。
今回は一日しか日程がないので残念である。
スウェーデンをもっと知るためには、田舎に行った方がよい。
多分ストックホルムより田舎の方がもっとよいだろう。
一般に先進国は田舎の方が、大都市よりきれいだ。
家並み、田園風景、環境、人などびっくりするような雰囲気に出くわすことが多い。
話は全く変わるが、スウェーデンといえば昔はフリーセックスや性教育が有名で、日本のプレーボーイなどの大衆週刊誌にも多くの記事が書かれていた。
今は全く話題になっていない。
多分それは40年前には画期的なことだったが、今ではそれがある程度世界に浸透して、興味の対象からはずれたということだと思う。
おそらく婚前交渉、性病予防教育と避妊法がおおげさに伝えられたのではないか。
あるいは80年代よりのエイズの流行で環境が一変したかもしれない。
釣りを見ているとバスの中から声がかかった。
もう出発ですよ。
何か一人帰って来ていないというのである。
バスのすぐ横にいたんですけどすいませんと言いながら座席に戻った。

