CNN presents: Footnotes of 9.11
500ページを超える「9.11調査報告書」は、以下の文章から始まる。
2001年9月1日は、雲ひとつない快晴だった・・・
そして、この報告書には1000を超えるFOOTNOTES=「脚注」がついている。
報告書の本文には掲載されなかった脇役の人達に、何がおこり、そして10年たったいま
どのような事を考えているのか。
これがこの番組の趣旨だ。
番組は、複数のストーリーが同時に進んでいく。
アメリカン航空のチェックイン・カウンターで働いていた男性は、
ボストン発ロサンジェルス行きの11便の担当だった。
ワールドトレードセンターに最初に突入した航空機だ。
「ファーストクラスの2400ドルもするチケットを持った2人がきました。
主犯格のモハメド・アタは、身分証明書を見せるときに私の顔を全く見ないで
うつむいていたのです。
まるでアラブのテロリストみたいだと思いましたが、
アラブの人達をそんな偏見の目で見てはいけない、と思い直したのです。」
数時間後、彼はすぐに気付く。
「あいつらだ!」
FBIがたくさんの写真を持ってきた。
「すぐにあの2人が分かりました。」
そして彼は10年間苦しみぬくことになる。
「定年退職後、8ヶ月ほどたったときに、ノイローゼになりました。
家の前に停まっている車から、犯人たちが私を見上げる幻覚をみたりもしました。
もちろん彼らが死んだということは分かっています。
でも・・・」
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別の空港の職員は当時の状況をこう話す。
「搭乗時刻が近付いて、空いているカウンターに2人がやってきましたが、
すぐにチェックインしない。おかしいなと思ったのです。」
ワシントンDC発ロサンジェルス行きのアメリカン航空77便。
ペンタゴンに激突した飛行機だ。
そして、犯人のアルハズミ兄弟について、
「ロスに行くのに荷物は一つだけ。さらに一人はニコニコしすぎているし、
もう一人は落ち着きがない。
通常このような不審者がいると、暫く後を尾行してから、
空港の警備員に教えるのですが、この日は2、3歩、歩き出して止めてしまいました。
私は人種的な偏見でやっているのではないかと思ったからです。」
9.11の犯人がその2人だと分かったのは、翌日、FBIの捜査官がやってきたからだ。
「1秒で犯人が分かりました。」
それから後悔の日々が続く。
「私がやったんだ。私が犯人達をチェックインさせてしまったんだ。
もし私があの時、別の行動をとっていれば・・・
今でも一日として、そのことを考えない日はありません。」
仕事に戻ることが辛く、職場に復帰するまで数ヶ月の時間が必要になる。
いっそ仕事をやめようかと思った。
復帰しても、またテロリストを飛行機の中に入れてしまうかもしれない、
その恐怖と戦わなければならないからだ。
それを救ったのが妻の一言だった。
「あなたが仕事に戻らなければ、それはテロリストの勝利ということよ。」
この一言が彼を職場に復帰させた。
「非常に残念なことが一つあります。
それは雲ひとつない青空を、嫌いになってしまったことです」
了