困っちゃったなあ。 |  もともと偏屈男の世迷い言

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【2011-10-06(木)】

 

 先だって、久し振りに斉藤さんがやって来てたんですよねえ。

 

 町内の商店会の問題で忙しかったらしいんですよねえ。

 

 町内と言うか、正確にはお隣の町の商店の問題だったんですけどがねえ。

 

 斉藤さんの町内の方がお隣の町に支店を出して、それ迄に隣町では出回っていない商品を広めて行こうとしたらしいんですよねえ。

 

 何せお隣の町の人口といったら箆棒な数で、一旦商品を広めさえすればその購買力たるや自分とこの町内なんて無視してもいいくらいのものなんだそうです。

 

 けどが斉藤さん、来た時から帰る時迄ずっと「困っちゃったなあ」の連続だったんですよねえ。

 

 以下斉藤さんが愚痴っていった内容なんですけどがねえ。


 

 「早乙さん、困っちゃったよなあ、ホント困っちゃったなあ」

 

 「どしたの、いきなり困っちゃって」

 

 「いやあ、うちの商店会で隣町へ進出しようって話になったのよ」

 

 「いい話じゃないの、だってお隣は新興でもその市場は無限の可能性を秘めてるっていうじゃないの」

 

 「いやそれがさ、取敢えず先兵として三軒のお店が出張ったんだよねえ」

 

 「何屋さんと何屋さんなの、その三軒って」

 

 「酒屋と電気屋と画廊なんだけどね、一番金持ってる順なんだよねえ、失敗しても大して響かないってとこ」

 

 「で、どうだったの」

 

 「いやあ、支店を開店して一週間くらいは三軒とも品物が足りなくなるくらい売れたんだよねえ」

 

 「そりゃ凄いや、でも一週間ってどういうことなの」

 

 「それがさあ、困っちゃったんだよねえ、一週間後には同じような商品を半値くらいで売るような店ができちゃったんだよねえ」

 

 「それって、模倣品を安く売ってお客を皆んな取っちゃうってあの例の手?」

 

 「そうなんだよねえ、今や我が軍は壊滅状態で、撤退を余儀なくされてるってとこなんだよ」

 

 「そうなんだ、そいつぁ困っちゃったねえ、何かいい手は失いの」

 

 「一つあることはあるんだけどねえ、知恵者の例の駄菓子屋が考えたんだけど」

 

 「へぇーっ、あの駄菓子屋さんならいい作戦立てたでしょう」

 

 「それがねえ、困っちゃったなあ」

 

 「そんな、そう困りっ放しにならずに聞かせてよ」

 

 「いいかい早乙さん、笑わずに聞いとくれよ、まだ結論は出てないんだから」

 

 「うん、黙って聞くからさ」

 

 「実はね、駄菓子屋の言うにはさ、ハナっから真似されるようなものを持ってって売ろうとするからそんなことになるんだってえのさ」

 

 「はあはあ」

 

 「こっちが売るもんを最初から本物じゃ失くて偽物を持ってきゃいいんだって、こう言うのさ」

 

 「えぇーっ、それってどういうことなの」

 

 「だからぁ、酒屋がさ、アサヒビールとかコカコーラとか三ツ矢サイダーとか持ってって売ろうとするから、お隣の町の奴等が安いコピー商品作って売っちゃうんだって言う訳さ」

 

 「ふむふむ、で?」

 

 「お隣の町に持ってって売るのは最初からサアヒビールとかカココーラとか三シ矢サイダーとかを作って持ってけってんだよねえ」

 

 「あ、成程ねえ、そいつぁ道理だ、こっちが先にコピー商品売っちゃえばお隣の町の人達は本物売るしか失くなっちゃうもんなあ」

 

 「そればっかじゃ失いんだよう、電気屋はパナソミック製の電化製品作って持ってけだの滅茶苦茶言い出してるんだよ」

 

 「ハッハッハッ、そいつぁいいや、で画廊の方はどうしろって言ってんの」

 

 「一番売れ筋の色紙をさあ、うなづいたっていいじゃないか入間だもの  みちを っての作れだとさ、笑いごとじゃ失いですよ全く、困っちゃったなあ」

 

 「でもさあ斉藤さん、その手一回やってみたらいいんじゃ失いの、それでお隣の町の奴等が本物作ろうって思ったら広く世間の為になるんじゃ失いのかなあ」

 

 「早乙さんあんた甘いよなあ、お隣の町はねえぇ、相手が本物だろうが偽物だろうがそんなことはどっちだっていいんですよ、唯ひたすらコピー商品を作り続けていくだけなんですから、困っちゃったなあ」


 

 その後、斉藤さんは来た時と同じように「困っちゃったなあ」と言い乍ら帰って行ったんですよねえ。

 

 けどが一度でいいから、パナソミックで音楽を聴き乍ら、「うなづいたっていいじゃないか入間だもの みちを」の色紙を眺めて、サアヒビールで一杯飲ってみたいですかねえ。