企業不祥事はなくならない? | 弁護士 渡辺 久の法律ブログ

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ブログを更新しない間に、平成28年熊本・大分地震が発生しました。

災された方々には、心よりお見舞い申し上げます。

さて、今回は、最近発覚した三菱自動車の燃費データの偽装問題について考えたいと思います。

三菱自動車は、4月20日、国土交通省による軽自動車の燃費試験に際し、燃費を実際より5~10%良く見せるため虚偽のデータを提出していたと発表しました。同社の不祥事は、平成12年と同16年に発覚したリコール隠しに続き、今回で三回目となります。2度あることは3度あるとは、よく言われることですが。。。。。

前回のリコール隠しは、「不作為」によるものですが、今回の偽造データの提出は、幹部社員による意図的なものであったようです。そうであるならば、今回の不正は「作為」によるものであり、悪質性は、さらに一歩進んだといっても過言ではありません。三菱自動車は、2度にわたるリコール隠しに懲りて、コンプライアンス経営を進めてきたはずですが、その実態はどうだったのでしょうか。今後、第三者委員会がその真相にどこまで踏み込めるのかが注目されるところです。

企業不祥事には、その動機において様々なパターンがありますが、業績拡大のプレッシャーから不正に走るというのが典型的なパターンであることは、これまでの企業不祥事の歴史からも明らかです。私も執筆に参加した「企業不祥事インデックス」(商事法務)でも取り上げられている三井住友銀行金利スワップ事件、リソー教育事件、コスモ証券不当勧誘事件もこのタイプですし、最近では「チャレンジ」の東芝も同様です。

会社はその企業価値を増大させる使命を負っており、そのため、会社の経営者は、会社の業績目標を掲げ、その達成にコミットします。しかし、業績目標の達成にばかり目を囚われ、設定した目標自体の妥当性に関する検証は置いてきぼりになっている感が否めません。経営者が、設定した目標の達成にコミットするのは、設定する目標値に合理性があるからです。設定する目標値を達成するためのプロセスに合理性があるのかを検証し、それを徹底的に詰める責任が経営者にはあるのです。そうであるからこそ、設定した目標の達成にコミットするのです。不合理なプロセスにでもよらない限り達成不可能な経営目標を設定することは、それ自体、経営者の責務に反します。その点を勘違いしている経営者が多いのではないかと思います。

三菱自動車は、昨年11月1日、予定していた主力車「RVR」のフルモデルチェンジを延期し、その開発に失敗した担当部長2人を諭旨退職とし、相川哲郎社長の役員報酬の一部自主返納や執行役員ら2人を降格する処分を行ったと発表しました。

諭旨退職に至った事情の詳細は明らかではありませんが、開発に失敗したことだけを理由として諭旨退職させたのが事実であれば、これは尋常ではありません。そもそも、雇用契約に基づく被用者の使用者に対する義務は、ベストエフォートを尽くすことであり、結果を出すことではありません。結果が出なかったことのみを理由として従業員に対し退職を迫ったのであれば、それはもはや違法行為と言わざるを得ないのではないでしょうか。

会社が目標にコミットして、その結果を出せなかった場合、その原因が従業員にあるとしても、

責任を取るには、設定した目標を達成するプロセスの合理性の検証を誤った会社の経営者である役員、特に代表取締役なのです。

三菱自動車のこの処分をみますと、同社においても、経営者に前述の勘違いがあることが見てとれます。このような統制環境のなかで、従業員は、何が何でも目標を達成しなければならないとのプレッシャーに追われ、目標達成のためには違法行為をも辞さないという「統制活動」が根付いてしまうことになるのです。これが、まさに今回のデータ偽装を生んだ最大の原因ではないでしょうか。

会社の経営者は、経営目標の達成にコミットするだけでなく、自ら設定する経営目標を達成するためのプロセスの合理性にも責任を持ち、そして、従業員が目標を達成するために不合理な手段を用いることを厳に許さないという企業風土を作り上げるという義務を負っています。このような当たり前のことが、当たり前のことととして認識され、それが企業風土として根付かない限り、企業不祥事がなくなることはないでしょう。