拉致と決断/蓮池薫 | ブログ

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おはようございます。岡本大輔です。
本日の紹介はこちらです。
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【出会い】
帯広図書館で予約して借りました。正直なところ”拉致被害”とは無縁の生活を送っていたので、その現実に目を背けず直視しようと思って読みました。

【本書紹介のねらい】
日本での生活の素晴らしさと北朝鮮での生活の現実を知る。



【気になった抜粋】

北朝鮮での二十四年を振り返ったとき、拉致された当初は何よりも自由への渇望が強かったが、しだいに戦争で犬死したくないという思いも大きくなっていた。

私にとって今度起きる戦争で北朝鮮とアメリカのどちらが勝つかということは、さほど大きな問題ではなかった、戦争が起きたら、わが身はどうなるのか、家族は生きながらえることができるのか、そちらのほうがより切実な関心事だった。

北朝鮮社会は、ほぼ慢性的な食糧不足に苦しんでいた、80年代まではよかったが、90年代に入ってからは、急激に食糧事情が悪化した。

拉致によって自由を奪われた人間にとって、故郷を想うということは祖国に戻って自由になりたいと願うことにほかならない、ただ、それに浸っていてはつらくなるだけだから、帰国への想いを心の片隅に封じ込めようとしていたのだ。

テレビに映る国際競技では、北朝鮮の選手やチームがかならず勝ち、日、米、韓は必ず負けていたのだ、「そんなはずはないのに」と思って観ていたら、すべて勝った試合や得点シーンだけを編集した録画放送であることに気づいた。

あんなに暗記した日本史の年表は、ほとんど記憶に残っていないのに、マージャン牌の図柄と役、点数計算は、何一つ忘れていないことだった。

外国人であることを隠すために子どもを遠くの全寮制学校に送っているのに、一方で外国人であることを盾に非売品の服を売らせている現実に、やるせない矛盾を感じた。

【響いた抜粋と学び】
ありきたりのように思われるかもしれないが、私にとっては絆と夢が幸せだった、この絆と夢を、ワタシはあの夏の夜の、おぞましい拉致という行為によって、一瞬に断ち切られてしまった。

家族の絆、子どもへの夢があったからこそ、二十四年の自由のない生活に耐えられたと言っても過言ではないだろう。

私自身このまま日本に残れたらという気持ちは強くあった、しかし、子どものもとに戻るということは、親の義務であり、なんとしても譲れないと思っていた、私たちが北に戻っても、日本にいる華族はこれまでどおりに暮らしていける、しかし北にいる子どもたちはそうはいかない、私たちが戻らなければ彼らの将来はない。


子どもたちは日本に来ることができましたが、当時はきっと辛かったんだろう、と僕には読み取れました。人間というのは水と酸素があるから生きていけるのではない。夢と希望があるから生き続けられるのだと実感しました。

北朝鮮は日本でいう経済的、政治的自由は、普く認めていない、というより、そういう自由こそが『国家体制をむしばむ悪の根源』として公然かつ徹底的に排除されていた。

なるほどなぁ。確かに国家体制を磐石にするためには、政治的自由は不要なのかもしれない。今あるものが正しい! と決め付けた方がいいのかもしれない。

会いたい人がいれば、いつでも会えるし、連絡を取りたければ、どこにいても取れる、行きたいところがあればどこへでも行けるし、学びたいことがあれば自由に学べる、まわりに空気や水があるような、この当たり前の自由が、実に新鮮に感じられた。

日本にいると、この自由のありがたみに気づきにくいかもしれない。しかし、この当たり前が「当たり前」ではなくて「ありがたい」ことと改めて気づかせてくれる抜粋です。

北朝鮮社会に比べたら無制限にも近い日本の自由だが、これが浦島太郎のような存在である私たちには、興奮とともに戸惑いをもたらしたのも事実だ、その気になれば何でもできるということは、逆にいったい何をしたらいいのかわからないという選択の悩みも生むからだ。

高齢者介護の現場でもこの「自由」については見受けられます。無数に思えるくらいの選択肢を提示されて「自由に選んでください」と言われても実際困るわけです。どういうわけか介護の専門職の中には「自由に選べること自体」が素晴らしいことだと認識している人がいるようです。

例えば、通所介護が何か? 訪問介護が何か? よくわからないのに、通所介護サービスを受けるには事業所がどれくらいあってどの事業所がいいのか? 言われても何をどうすればいいのかよくわからないのが現実です。
担当の介護支援専門員であれば、目の前にいるお客様にとって、通所介護を利用するのであればどれくらいの人数のところがいいのか、どれくらいの時間がいいのか、ある程度は絞り込むことが求められます。

「自由民主主義」は欧米の価値観であり、風土や環境、歴史的発展段階のちがう国や民族、すべてにそのまま適用されるものではない、他の民族を屈服させ、抹殺しようとするような自由民主主義をどうして受け入れられよう。

これは僕も同感です。今まで僕たちは「アメリカのやり方」=「素晴らしい」、「正しい」と思い込まされました。もちろん、アメリカのやり方が素晴らしい部分もあり、最先端である場合もあります。しかし「絶対」ではないのです。
僕たちに今求められていることは「自分の目で見て考えて何が必要なのか自分で考えること」です。


【編集後記】
本日の読売新聞の朝刊(?)に「人生はワンチャンス」の僕の書評が掲載されている予定です。愛読者のあなた、愛読者ではないあなた、ぜひ読売新聞をご覧くださいませ。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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