こんにちは。
今回は結構笑えるかもしれない話を書かせていただきます。
もう25年以上前の事でしょうか。
これは神奈川県にある有隣堂という本屋さんで私が実際に経験したエピソードです。
有隣堂は横浜に住む人間がまず思い浮かべる書店です。
本好きだった私も頻繁に通ったものです。
あれはいつものように参考書を買いに横浜駅西口の地下街にある有隣堂へ行った時のことでした。
参考書を買った後、ちょっと調べたい事があって歴史書コーナーで本を物色していました。
色々な本を立ち読みしながら良い本を探していたところ、どこか地方から旅行に来たのだろう親子が私の横で何か話し出しました。
最初は見向きもしなかったのですが、物凄い訛り言葉で、かつ大声で会話をしているので振り返って見てみると、リュックサックを背負った頬っぺたが真っ赤で巨人帽を被った小学生位の男の子とその母親らしき親子が会話をしていました。
他のお客さんも気になったらしく皆見ています。
母親(以下、母)「いいが、ここでおどなしくしでるだぞ!」
息子(以下、息)「んだ、オラにぬかりはねえ。」
息「この図書館の本、綺麗な本ばっかだなあ~。」
母「んだな。あまり汚すでねえぞ。キレイに読め。」
と、図書館?!
そして息子を本屋に残し、母はどこかへ消えて行きます。
息子はリュックを通路におろして一冊の本を手に取り、通路に座りこみました。
手にしている本のタイトルは「大日本帝国戦史」でした。
本を読みながらその子は、何やらブツブツ独り言を言っています。
息「ブツブツ・・・・オラも戦闘機乗りなるだ~・・・・ブツブツ」
航空自衛隊にでも入りたいのか?まさか、ゼロ戦?今はもうねえぞ、などとツッコミを心の中で入れている私はすっかり彼の虜になっていました。
その時です、夢中で本を読み漁っている彼がリュックに手を伸ばします。
リュックのカバーを捲り、手を差し入れます。
何が出てくるのだろう?と思いつつ見ていると、そこから出てきたのは巨大なバクダンおにぎりでした。
そして彼は本を読みながら、そのおにぎりを食べ始めます。本屋で。
息「ムシャムシャ・・・んめえな、さすが母ちゃんだべ。・・・ムシャムシャ」
"黙って食え!"とツッコミ入れかけましたが、"食え!"ではなく"本屋で食うな!"だよな、などと悩んでしまう私。
そしてまた彼はリュックに手を入れます。
固唾を飲んで見守る私。
今度は何が出てくるんだろう?
そして出てきたもの、それはタッパーに入った沢庵でした。
その沢庵を彼は素手でボリボリと美味しいそうに食べます。
沢庵の匂いが書店に充満します。
本にも沢庵の色と匂いがついたのではないでしょうか。
さすがに匂いはマズかったのでしょう、店員さんが飛んできます。
店員「ちょっとここで飲食は困ります。」
まあ、当然の理屈ですね。
それに対し彼
息「オ、オラ何も悪いことしてねえだ。図書館でいつも飯食ってるだ。」
絶句する店員さん。
その後の顛末は知りません。
が、おおよその見当はつきますけど。
まあ、世の中にはいろんな人がいるんだなあ、と勉強させてもらった若き日の思い出でした。
