これまで国内で承認されたインフルエンザワクチンは皮下注のタイプだけでしたが、今シーズンから経鼻で投与できる弱毒生インフルエンザワクチンが使えるようになりました。当院の採用はまだ決めていませんが。まずは引用を。

 

『日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会は9月2日付で「経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方」を作成し、昨日(9月9日)公式サイトに掲出した。昨年(2023年)3月に承認され、2024/25シーズンから接種が開始される見込みの経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV、商品名フルミスト点鼻液)の使用に関する考え方を提示した。(関連記事「経鼻投与インフルワクチンなどを新たに承認」「24/25シーズン突入準備!インフルエンザ動向の早読み」)

日本人小児に対する有効性は確認済み

 LAIVに含まれる弱毒生インフルエンザウイルスは鼻咽頭部で増殖し、野生株の自然感染後に誘導される免疫と類似したIgAを介した局所免疫、全身における液性・細胞性の防御免疫を誘導することが期待される。

 LAIVと不活化インフルエンザHAワクチン(IIV)を直接比較した試験はない。2016/17シーズンに2~19歳未満の健康小児を対象として行ったプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験では、全ての株によるインフルエンザ疾患に対するLAIVの有効性は28.8%で、日本人小児における有効性が示された。ただし、A/H3N2亜型株に対する予防効果が認められた一方で、A/H1N1亜型株やB型株に対する有効性は示されなかった。

 海外の市販後調査では、IIVとLAIVでA/H3N2亜型株に対する有効性の差は見られなかった。A/H1N1pdm2009株が流行した2015/16シーズンに有効性の減弱が認められたことを受け、米国予防接種諮問委員会(ACIP)は2016/17、17/18シーズンは一時的にLAIVの推奨を中止していたが、18/19シーズン以降は推奨を再開。IIVを含む他のインフルエンザワクチンと同等に推奨している。

主な副反応は鼻閉・鼻漏、咳嗽、口腔咽頭痛など

 安全性に関しては、国内における主な副反応は①10%以上:鼻閉・鼻漏(59.2%)、咳嗽口腔咽頭痛、②1~10%未満:鼻咽頭炎、食欲減退、下痢、腹痛、発熱、活動性低下・疲労・無力症、筋肉痛、インフルエンザ、③1%未満:発疹、鼻出血、胃腸炎、中耳炎、④頻度不明:顔面浮腫、蕁麻疹、 ミトコンドリア脳筋症の症状悪化

 LAIVの接種適応年齢は2~19歳未満。接種回数は各シーズン0.2mLを1回(左右の鼻腔内に各0.1mLを1噴霧ずつ、計2噴霧)。注射用ではないため、絶対に注射しないよう注意を促している。

 

 接種不適当者として、発熱例、重篤な急性疾患例、アナフィラキシー既往例、免疫抑制例、妊婦などを挙げ、注意事項として、ゼラチンアレルギー、卵アレルギー、喘息、ワクチンウイルスの水平伝播、妊産婦などを挙げている。

日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会の推奨は、以下の通り

●IIVとLAIVの間に、インフルエンザ罹患予防効果に対する明確な優位性は確認されていない。

①2〜19歳未満に対し、IIVまたはLAIVのいずれかを用いたインフルエンザ予防を同等に推奨するが、特に喘息患者にはIIVの使用を推奨する。LAIVは飛沫または接触によりワクチンウイルスの水平伝播の可能性があるため、授乳婦、周囲に免疫不全患者がいる場合はIIVの使用を推奨する

②生後6カ月〜2歳未満、19歳以上、免疫不全患者、無脾症患者、妊婦、ミトコンドリア脳筋症患者、ゼラチンアレルギーを有する患者、 中枢神経系の解剖学的バリアー破綻がある患者に対しては、IIVのみを推奨する。』

 

以上です。特徴は①生ワクチンであり投与が1回でよいこと、②2~19歳にのみ適応があること、そして③全てのインフルエンザに対する有効性は3割弱だが、A/H3N2亜型株に対する予防効果が認められた一方で、A/H1N1亜型株やB型株に対する有効性は示されなかったというところでしょうか。B型に効かない(!!)んですね。昨シーズン後半はB型が大流行して大変でした。そういう意味では今シーズンはB型の流行はちょっと抑えられる可能性が高いとは思いますが、例年シーズン後半で流行するのがB型ですから、特に受験生の方々にはちょっと経鼻インフルワクチンはお勧めできないようです。

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