昨年からようやくHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の積極的勧奨が再開され、本年春からは9価のワクチンが定期接種に含まれるようになり、ようやくHPVワクチンを積極的に行う土壌が出来てきた感じです。今回ご紹介する論文はHPVワクチンの勧奨の有無でどう接種率が変わったのかを年代ごとに評価したものです。まずは引用を。

 

『ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの積極的勧奨が再開しているが、接種率は伸び悩んでいる。この状況が維持された場合、ワクチンの積極的勧奨再開世代における定期接種終了年度までの累積接種率は、WHOが子宮頸がん排除のために掲げる目標値(90%)の半分にも満たないことが推定された。八木 麻未氏(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学教室 特任助教)らの研究グループは、2022年度までのHPVワクチンの生まれ年度ごとの累積接種率を集計した。その結果、個別案内を受けた世代(2004~09年度生まれ)では平均16.16%、積極的勧奨が再開された世代(2010年度生まれ)では2.83%と、積極的勧奨再開後も接種率が回復していない実態が明らかとなった。本研究結果は、JAMA Network Open誌2024年7月16日号に掲載された。

 HPVワクチンは2010年度に公費助成が開始され、2013年度に定期接種化されたが、副反応の報道や厚生労働省の積極的勧奨差し控えにより接種率が激減していた。2020年度から対象者へ個別案内が行われ、2022年度からは積極的勧奨が再開(キャッチアップ接種も開始)されたが、接種率の回復が課題となっている。そこで、研究グループは施策を反映した正確な接種状況や生まれ年度ごとの累積接種率を調べた。また、2022年度と同様の接種状況が続いたと仮定した場合の2028年度時点の累積接種率を推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・生まれ年代別にみた、2022年度末時点のHPVワクチン定期接種終了時までの累積接種率は以下のとおり。
接種世代(1994~99年度):71.96%
停止世代(2000~03年度):4.62%
個別案内世代(2004~09年度):16.16%
積極的勧奨再開世代(2010年度):2.83%

・生まれ年代別にみた、2028年度末時点のHPVワクチン定期接種終了時までの累積接種率の推定値は以下のとおり。
接種世代(1994~99年度):71.96%
停止世代(2000~03年度):4.62%
個別案内世代(2004~09年度):28.83%
積極的勧奨再開世代(2010~12年度):43.16%

 本研究結果について、著者らは「日本においては、ほかの小児ワクチンの接種率やパンデミック下の新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種率が世界的にみて高いことから、HPVワクチンの接種率だけが特異な状況にあることは明白である。今後、子宮頸がんによる悲劇を少しでも減らすため、HPVワクチンの接種率を上昇させる取り組みに加えて、子宮頸がん検診の受診勧奨の強化も必要となる。本研究結果は、今後の日本における子宮頸がん対策を検討する際の重要な資料となるだろう」と考察している。』

 

以上です。ここで「停止世代」とされている2000~2003年度生まれの女性の接種率の低さがヤバいですね。それに個別案内世代と積極的勧奨再開世代の接種率も全く不十分です。HPVワクチンに関しては、HANSと呼ばれる特有の副作用も否定されたことですし、欧米ではすでにHPVワクチンにより子宮頸がんが激減しているという報告もあるわけですから、接種しない理由が見当たらないと思われます。

HPVワクチン、積極的勧奨の再開後の年代別接種率は?/阪大|医師向け医療ニュースはケアネット (carenet.com)