ちょっと今日は専門的な話です。通常、抗菌薬を使用する場合は、1日1~4回内服したり点滴したりすることが大半です。特にペニシリン系(サワシリンなど)やセフェム系(ケフレックスやメイアクトなど)はそうしてある程度の血中濃度以上に抗菌薬の濃度が保たれると効果を発揮します。中にはピークの濃度が問題となる抗菌薬もありますが。今回ご紹介する論文は、敗血症という重症な感染症に対し、抗菌薬を持続点滴したら少し予後が改善したというものです。ちなみにβラクタム系というのは、前述のペニシリン系やセフェム系に加えてカルバペネム系を含み、細胞壁の合成を阻害するタイプの抗菌薬で、抗菌薬が一定の濃度以上に保たれる時間が効果に影響するタイプの抗菌薬です。まずは引用を。

 

『敗血症または敗血症性ショックでICUに入院中の重症成人患者において、β-ラクタム系抗菌薬の持続点滴投与は間欠点滴投与と比較し、90日死亡リスクの低下と関連していることが、オーストラリア・クイーンズランド大学のMohd H. Abdul-Aziz氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析の結果で示された。β-ラクタム系抗菌薬の持続点滴投与が、敗血症または敗血症性ショックの重症成人患者において臨床的に重要な転帰を改善するかどうかはわかっていなかった。著者は、「今回の結果は、臨床医が敗血症および敗血症性ショックの管理における標準治療として持続点滴投与を考慮すべきことを示している」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年6月12日号掲載の報告。
 

 研究グループは、敗血症または敗血症性ショックの重症成人患者を対象にβ-ラクタム系抗菌薬の持続点滴投与と間欠点滴投与を比較した無作為化臨床試験について、データベース開始から2024年5月2日までに公表された論文を、言語を問わずMEDLINE(PubMed経由)、CINAHL、Embase、Cochrane Central Register of Controlled TrialsおよびClinicalTrials.govを用いて検索した。

 2人の研究者が独立してデータ抽出を行い、バイアスリスクを評価。エビデンスの確実性は、GRADEアプローチを用いて評価した。主要統計的手法としてベイジアンフレームワークを、二次的手法として頻度論的フレームワークを用いた。解析にはランダム効果モデルを用い、リスク比または平均差としてプール推定値を求めた。

 主要アウトカムは90日全死因死亡率、副次アウトカムはICU死亡率、臨床的治癒率などであった。
 

 敗血症または敗血症性ショックの重症成人9,108例を含む計18件の無作為化試験が解析に組み入れられた。全体の患者背景は、年齢中央値54歳(四分位範囲[IQR]:48~57)、男性5,961例(65%)であった。18試験のうち17試験(9,014例)より主要アウトカムのデータが提供された。

 β-ラクタム系抗菌薬の間欠点滴投与と比較して持続点滴投与の90日全死因死亡率のリスク比は0.86(95%信用区間[CrI]:0.72~0.98、I2=21.5%、エビデンスの確実性:高)であり、持続点滴投与が90日全死因死亡率の低下と関連している事後確率は99.1%であった。

 β-ラクタム系抗菌薬の持続点滴投与は、ICU死亡リスクの低下(リスク比:0.84、95%CrI:0.70~0.97、エビデンスの確実性:高)および臨床的治癒率の増加(リスク比:1.16、95%CrI:1.07~1.31、エビデンスの確実性:中)とも関連していた。』

 

以上です。間欠的投与よりも持続投与の方が当然血中濃度は保たれますから、想定内の結果と言えるでしょう。ただ抗菌薬も溶いて放置しておくと徐々に失活しますし、保たれる血中濃度が低すぎると殆ど効果を発揮しなくなることが予想されるため、間欠的投与よりも注意が必要に思いました。しかしいずれにせよ、それほど大きな差ではないとはいえ、持続投与の方が予後を改善したわけですから、成人の敗血症に対してはβラクタム系抗菌薬は持続投与が望ましいと言えそうです。

敗血症に対するβ-ラクタム系薬、持続投与vs.間欠投与/JAMA|医師向け医療ニュースはケアネット (carenet.com)