これはあまり知られていないかもしれませんが、腹痛で小児科を受診する子どもの最大の要因は便秘です。またときに激烈な痛みを伴うこともあり、救急車で搬送されたけど便秘だったというケースも珍しくありません。今日はそんな便秘の話をします。まずは抜粋を。

 

『前述の警告症状のうち、症状がない便秘症では便塞栓が重要となる。便塞栓の診断は、①身体所見上、下腹部に硬い便塊に触れる、②肛門指診上、大量の便塊によって直腸の拡張が認められる、③腹部X線検査上、結腸内に大量の便が認められる―の有無で行う。ポータブルエコーは施行時に広いスペースが不要なため、便塞栓の判定に有益である。なお近年、直腸における便塊の判定を人工知能(AI)が支援する直腸観察ガイドプラスを搭載したエコーも登場し、乳幼児への施行時に利便性が期待される。

 

第一選択薬はグリセリン浣腸、浸透圧性下剤、刺激性下剤

 

 便秘症では便塞栓の存在によって負の連鎖が生じることから、治療では便塞栓に注意を要する。

 具体的には、便塞栓があると直腸が拡張するとともに便中の水分が吸収されることで便が硬くなるため、排便痛が出現(2)。トイレトレーニングで排便に対する恐怖心を抱き、排便を我慢するようになり、便塞栓がさらに貯留する。この一連の流れについて、萩原氏は「まさに"呪い"のようであり、便塞栓を解除することが便秘症治療の肝である」と強調した。

2. 便塞栓による悪循環

(表、図1、2とも萩原真一郎氏提供)

 また日本における便塞栓治療として、軽症例やグリセリン浣腸に抵抗がある例では浸透圧性下剤または刺激性下剤が、抵抗がない例では浣腸が第一選択薬となる。さらに、漏便を伴う重症の便塞栓症例や浣腸がトラウマになっている例については、同科ではガストログラフィンを用いた注腸造影を施行し、酸化マグネシウムおよびピコスルファートによる治療を行っていると紹介した。』

 

以上です。まさにこれに書かれている通りで、便塞栓があると便が固くなり、排便時に痛みが出ることから排便を我慢することが多くなり、さらに便塞栓が悪化するという悪循環になります。私もよく外来で言っているのですが、便がたまっていない状態を維持することが重要で、そのために浣腸したり下剤を使ったりします。よく「頻繁に浣腸をすると浣腸するのが癖になって、浣腸しないと排便しなくなるのではないか?」と聞かれることがありますが、実際には逆で、浣腸して便がたまっていない状態を保つ必要があり、「浣腸せずに便がたまっているのが癖になること」が問題なわけです。

他の小児の多くの病気と同様、便秘も大半は上手くコントロールできますし、上手くコントロールすれば全く支障なく日常生活できます。お子さんの便の回数が少ないとか、しょっちゅう腹痛を訴えるという際は、一度小児科を受診されることをお薦めします。

「うんちの呪い」を断ち切ることが治療の肝|小児|医療ニュース|Medical Tribune (medical-tribune.co.jp)