
なにせ、二代目アコードは会社としても力が入っていて、新技術満載のクルマでした。
その中で、発売後の大型新技術搭載として、「ホンダ・エレクトリック・ジャイロケータ」というのがありました。

当時、私は発売した二代目アコードインパネの担当でしたが、そこへ「テレビをインパネに載せたい」と電装研究室から偉い方がこられ話はじめました。
つまり、自分達はこんなにすごいのを開発したんだ、しっかり載せてくれと。
その説明は「自車の位置は小さな丸い光がブラウン管に点灯するから、地図をテレビ(ブラウン管ディスプレイ)の表面にこうやって挟み込んで、地図を合わせれば、それで自分がどこにいるかわかる」「自車の動きはガスレートセンサなど色々なセンサでセンシングしているが、自車が動くと地図とどうしてもずれていくので、地図をこうやって手で動かしてあわす。また、画面の端まで来たらこうやって戻す・・」とおっしゃって、よくわからんけど、すごそうな感じはするな!と。
それが、「ホンダ・エレクトリック・ジャイロケータ」だったんです。
機能としては現在のナビを目指したものでした。マジ、先進でした。
勿論、パッと考えてそんな重いものをインパネに載せて固定したら、インパネがお辞儀するんじゃないか? と、つい設計者のネガティブ思考を発揮しましたが、「出来ないことをやるのが偉いんだ」とかなんとか誰かのお言葉のような事を言われ、仕方なしに引き受けました。
当時のホンダのインパネは、「一体ダクト方式」という独特なもので、一般的なインパネ本体を鉄のフレームで保持するのでなく、インパネを箱形状にして剛性をもたせ、その箱のなかをエアコンの風が通るようになっていたものでした。
剛性を持たせたと言っても、インパネ自体を保つのが精一杯程度の剛性で、テレビを載せたら耐熱耐久等するまでもなくだんだんと手前側に「お辞儀」して、「カワイイ奴」になってしまうのは目に見えています。
仕方なしに、φ20~位のパイプをインパネに通して床に固定して保持するしかないかと思いましたが、インパネは先ほど書いたように一体ダクト方式インパネなので、そこにパイプを通すべく穴を開けると、まず風がもれます。
また、そもそもインパネの中はエアコンコントローラやオーディオ、下にはヒーターユニットと、全くパイプが通る隙間は無いのです。
でも、絶対に断れないので、なんとか図面で見ながら隙間を縫うように、クネクネとしたパイプ形状をレイアウトし、その図面を描きました。
何日かして、設計室にいると形相を変えた試作組み立ての親分が、設計室のマネージャーのとこに「この鉄パイプを設計した奴はどこにいる?」と激しく詰め寄り、マネージャーは私の方を見て「あいつ」と。
形相を変えた親分は、「このどうにもならん、クニャクニャしたパイプを作ったのはお前か!! こんなもん組み立てられるか!」とパイプが私を一撃!!!
すぐに一緒に試作組み立てまで連れて行かれて、しかし、一緒に歩いている間に、また一撃がくると行けないので、まずはパイプを親分から取り上げて、「すぐ組みます」と、私。
それで、いざ組んでみたらその時に気がついたのは、「静的なレイアウトだけして、上からパイプを入れていく道筋の検討をしていなかったことに気が付き・・・ヤバ」。
すぐ謝って「すぐ設変して作ります!!」
しかし、パイプを通す道筋は難しく、さらにパイプはクネクネとなりました。それで、再試作のパイプをすぐ作ってもらって、試作組み立ての親分のトコに行って、「これでお願いします」と言って、組み立ててもらうと何とか入りました。親分はニコッとして「入ったな」と一言。
しかし、極度のクネクネパイプで組み立ては出来ても剛性が持つかどうか心配でしたが、とりあえず親分がニコッとしてくれたので、良いかと思い心配事は先に伸ばすことにしました。
このパイプを設計したお陰で、完成車に一番のりで、テスト走行というか「乗ってきていいよ」と偉い人から言われて、大喜びで先輩と二人で、「和光から川越当たりまで走ってくるか」となり、意気込んで出かけました。
「なんつったって、俺達がこの世で一番最初にこの先進装備に乗っているんだ」とそういうことが、大変うれしい時代でした。
最初、先輩が運転しまして、横で私が地図と自車位置の光の点をあわせる役に回りました。
走り出すと自車の位置はドンドン動き、ドンドン地図上の道路から外れていき、その都度先輩から「ずれてる」とわかりきった事を言われながら、地図を手で修正していきました。インパネ上のブラウン管はやはりユラユラと揺れるし、まじめに作業していた私はすっかり酔ってしまい、ゲロゲロになってしまい先輩と運転を交代してもらいました。
当然、先輩もゲロゲロになったのは、言うまでもありません。
「これは、一体何のためのものか?」「乗り物酔いのテスト機械?」
その後、パイプの剛性は上げましたが、買ったお客さんは酔ってなかったかな???