アカメを釣るために高知への遠征を予定していた8月末。
今シーズン13号となる台風の影響で、浦戸湾周辺は強い風と波が予想された。
中断か強行かの2択を迫られていた時に、しゃっく会長から台風の影響が少ない地域のダムへバス釣りに行かないか?との誘いがあった。
3年程前に先輩に誘われ何度かバス釣りへ同行した事があったが、当時はそれほど興味が湧かず、釣れなかった事も相まって私の中で『つまらない趣味』認定されていた。
以前同行してくれた先輩たちが、トップウォータープラグのみでブラックバスを釣るスタイルの#0というチームを確立し、完全無欠の存在に敷居の高さを感じていた私にとっては、もはや『縁の無い釣り』だと思っていた。
そんなところに転がり込んだ急な話に、正直釣りへの期待より、せっかく休みを合わせた事が徒労に終わるよりはと、半ば仕方なしに了承した。
タックルを持ち合わせていない私に快く貸してくれるだけでなく、これからトップウォーターに興味を持つならと、フライハイトのルアーをプレゼントしてくれた。
初めて手にしたハンドメイドのトップウォータープラグはまるで工芸品のようで、これを竿先に付け、投げるところを想像するのが難しいほど美しかった。
どうせ行くなら楽しもう。このルアーでバスを釣ってやろう。
今思えば私のトップウォーターバスフィッシングはここから始まっていたのだ。
ダムに着くと、歴戦の風格漂うアルミボートに乗りこみ、NAO先輩にキャストやルアーアクションの基礎を一通り教えてもらい徐々にコツを掴んだ。
投げ続ければいつかは釣れると信じ、愚直に繰り返す私の横でNAO先輩もキャストする。
横でおこなわれている上級者の所作を、見様見真似で投げ続けた。
NAO先輩があっさりバスをキャッチしていく中、私のノーバイトは続いた。
時間がすぎていく中、ルアーの動きが急に不規則になり、あれ?っと思った瞬間、バシャッと水面が割れた。
そのあとは無我夢中でハンドルを巻き、バスを持つまで必死だった。
やり取りの記憶はない。しかし、たとえ小さくてもこのバスは一生忘れない。
初めて見たバイトシーンに初めて手にしたバスは『つまらない趣味』の汚名を返上するには十二分のインパクトだった。
興奮も冷めやらぬ中、しゃっく会長に釣果の報告をすると返す刀で
むむ、さすが会長。
帰りの車内。#0の分家的な存在を、末端メンバーでやりたいとしゃっく会長が一言。
何となく新しい何かが始まる予感がした。
一つの歴史を築いてきた#0の系譜。簡単なことではないのはわかっている。どこまでやれるかも分からない。
でもやってみたいと、年甲斐もなく胸が躍る。
ここから#0 REMNANT 始動します。