今年度は6年に一度の同時改定
公的医療保険と介護保険は、数年に一度、見直されることになっています。
医療保険は2年に一度、介護保険は3年に一度、見直されるのですが、今年2024年度は、6年に一度の同時改定の年となりました。
その結果、医療保険については初診料や治療費などの診療報酬が0.88%、介護保険の介護費は1.59%引き上げられました。
引き上げられた分の多くは、勤務医や看護師、介護職員の賃上げや処遇改善に使われます。
働く人の待遇を改善して、少しでも人材不足を補うことが狙いです。
また、介護保険料と医療保険料の見直しも行われました。
介護保険料の増額は、前々回の記事にアップしています。
全国各自治体の介護保険料の格差は、マスコミでも話題になりましたね。
保険料が日本地図上で一覧になった図を、テレビでご覧になった方も多いと思います。
医療保険については、75歳以上の後期高齢者の保険料が、全国平均で7.7%増加して、過去最高の増額となりました。
増額の背景は、2023年5月に成立した「改正健康保険法」に遡ります。
改正健康保険法
目的
1.現役世代に偏る負担を緩和する
後期高齢者医療制度の財源
5割=公費
4割=現役世代からの支援金
1割=高齢者の保険料
このうち
現役世代からの支援金
➡️制度開始の2008年から2022年度にかけて
1.7倍に増加
対して
高齢者の保険料
➡️1.2倍に増加
と、現役世代の負担が、より重くなっています。
このように、負担のバランスが現役世代に偏っている現状を見直し、両者の足並みを揃えるために
「現役世代1人当たりの後期高齢者支援金」
と
「後期高齢者の1人当たりの保険料」
の伸び率が同じになるように、保険料が見直されました。
目的
2.出産育児一時金の費用を全世代で支え合う
出産育児一時金に必要な費用のうち、7%を後期高齢者の保険料から支援することが決まりました。
✳️出産育児一時金:2023年3月より42万円から50万円に引き上げ
ただし、急激な負担の増加を避けるために、2024年度と2025年度は、半分の3.5%に軽減されます。
改正による後期高齢者の保険料増額
後期高齢者の保険料は、特に所得の高い方の増額が続いています。
今回も、
●年金収入153万円相当以下の方(61%に当たる)
➡️制度見直しによる増額なし
●年金収入153~211万円の方(12%に当たる)
➡️2024年度は増額なし
●年収1,000万円を超える方の年間保険料の上限
➡️段階的に引き上げ
2024年度は73万円
2025年度は80万円(1.1%)
結果、今年度は、年金収入211万円以上の方の所得割額が増額されました。
所得割額は、所得に所得割額をかけて算出されるもので、収入が多い方ほど保険料の増額分も多くなります。
現役世代の健保 財政悪化
2024年4月、健康保険組合連合会によって、「健康保険組合」の2024年度予算が公表されました。
それによると、6,578億円という、過去最大の赤字が見込まれるということです。
平均保険料率は、9.32%で前年度より0.05ポイント増加。過去最高の保険料率です。
赤字の拡大は、高齢者医療への支援金が増える要因か大きいとのことで、このうち、後期高齢者向け支援金は4%増加する見込みとされています。
健康保険組合とは、大企業の従業員とその家族が入る健保組合で、約1400組合が加盟しています。
その中で、赤字の組合は86.6%を占めており、前年度から103組も増えました。
一方、中小企業の従業員とその家族が加入する「協会けんぽ」の平均保険料率は、前年度と同じ10%に据え置かれました。
賃上げで保険料収入が伸びたことなどによって、据え置きが可能となりました。
ただし、今後5年間の予測では、医療費の伸びが収入に追い付かず、2027年度には赤字に転落すると見込まれています。
3/19の日経新聞の記事によると、高齢化やインフレの影響で、家計の所得に占める「税と社会保険料の負担率」が昨年9月時点で28%と過去最高水準になったとのことです。
負担は若年層に偏っていて、29歳以下の世帯が30.2%と最も高く、80歳以上の世帯では20%と、世代間の格差が大きな問題だと指摘されています。
現役世代に偏る負担を解消するということで、今後も高齢者の保険料や自己負担は、増えていくことでしょう。
多くの保有資産を抱える高齢者をターゲットに、収入だけでなく、保有資産に基づいて、自己負担が考慮される方向も検討されています。
税や保険料負担の高まりは、「可処分所得」の伸びを抑え、消費行動の低迷を招くと言われています。
どの世代でも、社会保険料が過度の負担にならないように、低所得層への軽減措置等も併せて行われることが必要です。
そして、より一層の賃上げや、高齢者の社会参加を通じて、社会全体が活性化することこそ、根本的な解決策です。
高齢者も負担増を徒に恐れることなく、まずは目の前の医療費や介護費の削減のためにも、いくつになっても健康で、社会で元気に活躍できるよう、自助努力が求められている時代なのでしょう。
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