前回は、70歳以上の方の健康保険や、65歳以上の方の介護保険の一部負担金割合について、おさらいしました。

 

医療機関の窓口で支払う金額は、70~74歳までは原則2割です。

75歳以上は原則1割、昨年一部の人が新たに2割となり、70歳未満と比べて負担が少なくなっています。

 

前回の記事

 

しかしながら「現役並み所得者」と呼ばれる方は、70歳未満と同様に3割負担となります

今回は、その現役並み所得者について取り上げてみましょう。

 

現役並み所得者とは

 

現役並み所得者とは、課税所得145万円以上であるかどうかが、大きな分岐条件となります。

課税所得145万円とは、収入から基礎控除や社会保険料控除などを引いた金額なので、収入に換算するとだいたい386万円ぐらいと言われています。

それに加えて、例外規定があります。

課税所得が145万円以上でも、昭和20年1月2日以降生まれであれば、「賦課のもととなる所得金額」210万円以下であったり、単身世帯の場合は本人の収入が383万円未満、複数世帯の場合は、本人と同じ世帯の被保険者の収入合計額が520万円未満であれば、現役並み所得者とはなりません。

 

判定フローチャートは、次のようになります。

 

(東京都後期高齢者医療広域連合 自己負担割合判定フローチャートより作成)

 

※なお、383万円未満や520万円未満の判定については、申請が必要な場合もあります。

 

所得や収入について

 

さてこの図には、

「課税所得」

「賦課のもととなる所得金額」

「収入(合計)額」

という3種類の判定基準が出てきます。

相変わらず、ややこしいですね。

 

●課税所得と、賦課のもととなる所得金額の違い

収入金額から、必要経費や公的年金控除、給与所得控除等を引くと、「所得金額」が算出されます。

そこから基礎控除43万円のみを差し引いた金額が

「賦課のもととなる所得金額」であり、

さらに配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除等を差し引いた金額が

「課税所得」です。

判定に用いる課税所得は、住民税課税所得です。

 

●収入とは

所得税法上の収入金額です。

必要経費や公的年金控除などを差し引く前の金額であって、所得金額ではありません。

退職金は除かれます。

ここで注意したいのは、土地や家を売却した場合、その収入も、383万円や520万円の判定をする際の収入に含まれるということです。

上場株式等の売却も同様で、確定申告したものはすべて、上記収入に含まれます。

たとえば、株式譲渡で損失が出て、損益通算や繰越控除をするために確定申告をした場合も、売却金額は収入としてカウントされてしまいます。

所得(収入-必要経費)がゼロ円、またはマイナスになる場合でも、売却金額が収入となるため、注意が必要です。

 

自己負担割合は、当該年度の収入によって毎年判定され、負担割合が見直されます

当該年度の判定は、毎年8月1日に行われ、2022.年8月1日から2023年7月31日までは、2022年度の「住民税課税所得」に基づいて決まります。

住民税は、前年の収入に基づいて賦課されますので、たとえば、2023年7月末までに医療にかかった場合、その自己負担割合は、2022年度の住民税、つまり2021年1月~12月までの収入に基づいた割合ということになります。

 

誰しもいつ病気にかかるか、予測できません。

所得が多くても現役並み所得に該当していなかった方が、たまたま家を売却したり、株式譲渡の損益通算をして、思いがけず3割負担となった年に、大きな病気にかかってしまい、医療費の負担が重くなる場合もあるでしょう。

思わぬところに、落とし穴が潜んでいるかもしれません。


介護保険の自己負担が3割となる方

 

65歳以上の介護保険自己負担は、所得によって、1割~3割となります。

合計所得金額が220万円以上、かつ、「年金収入+その他の合計所得金額」の合計額が、単身世帯340万円以上、複数世帯463万円以上の場合、3割負担となります。

健康保険とは、3割や2割となる基準が異なるので、混乱しがちです。

フローチャートは、前回の記事を参考にしてください。

 

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