指定された時間に横浜港に着いたが、橘の継承者とやらの姿はまだなかった… 

俺が知っていると云う空手家はいったい誰なのかが早く知りたい 

暫くして暗がりから俺と同じ体格をした男がやってきた 

何とそこには栃木県代表 
68kg級日本一の日下部晃だった

-----

平成18年、決勝でこいつと闘い
俺が勝った 

翌年、俺は無差別級を選び日下部とは対戦していない 
ほぉなるほど…さては俺と闘いたい訳が判ったぞ 、優勝したはいいけど相当バッシングを受けたな? 

まぁ久々だし話しでもするか… 


悟)よぉ、日下部!何でお前が此処にいるんだよ 

「兵藤、俺はお前を倒したい! お前を倒さなきゃ、真の日本一になれない」 

悟)階級が違うだけで、お前も立派なチャンプなんだぜ

「何故、お前は逃げたんだ!」 

悟)逃げたんじゃない、上を目指しただけだ! 

「お前が居なかったお陰で優勝した呼ばわりされて 散々だったよ」 

悟)68kg級では本当の意味で日本一じゃないと俺も思っていたが、多分それは違う、体重別は単なるカテゴリー分けにすぎない 、現に68kg級の方が圧倒的にスピードは上だった


「何だ兵藤、俺と闘いたくないのか?」 

悟)お前こそ何も分かっていない! 
この闘いは殺し合いだぞ?お前にその覚悟があるのか? 

「俺はお前と闘いたい!それだけだ!」 

悟)じゃあ…しょうがない…友が一人減るな…日下部ぇ手加減せんぞぉ


日下部は多分、始めてだろう本物の殺し合いを… 日下部が降参したら 許すつもりで、男は闘いを始めた

悟)さぁ!こい!日下部! 


闘っている間、違和感を感じていた 
執拗に空手技で挑んでくる、コイツは震術を知らないのか? 橘に躍らされてるだけなのか… 


悟)止めだ!止めだ!
お前、震術を継承してないだろ? 


「俺はお前と闘いたいから此処に来た!震術とは関係ない」 


と日下部が言った瞬間、目から血が噴き出し、日下部がその場に崩れ落ちた

それは背後から現れた男の仕業だった… 


悟)出たな、お前は橘家の人間か? 


「俺は橘家に支える始末屋だ、使えない奴は抹殺する」 


悟)ほぉ~丁度いい
俺の新技を受けてみるか? 


「何だその技は、興味があるなフフフッ…」 


悟)お前だけか?此処に来たのは 


「あぁそうだ、一人でおつりがくるぜ!」 


悟)好都合だ、橘に真似されると後々厄介だからな


橘は基本的に武術の心得はない 、笑みさえ浮かべ、空手技で奴を追い詰めてやった 


悟)さて、処刑の時間だっ

俺はピストルの形を手で作り、奴に向けた! 

[バキュ~~ン!] 

一瞬で男の額に風穴を孔けた… 
震術を放ったかの如く、頭部が無惨に飛び散った、
人間を貫くと同時に震も伝える効果があるらしい… 


あぁっそうだっ‼︎日下部は大丈夫か? 

悟)お前…死んでしまったのか? 


「うぅ~」 


震術には陰と陽が存在する 
・敵を殺める術、これが陰 
身体の奥底にダメージを与える技だ 

・震の傷を負った仲間に対し、施術が行える、これが陽だ 

受けたダメージを元に戻す技だ 
この施術は自身には効果はない 

日下部は貧血気味ではあったが、陽の施術を施し自力で立ち上る迄に回復した 

そして俺達はベンチに座り、話し始めた 


悟)日下部よ…あまりつまらない事を考えるなよ、俺は「殺める奴」ってのは誰からにも恨まれてる奴って決めてるんだ… 

俺達は拳を合わせた仲間だろ? 

「悪かったな、兵藤… 久しぶりにお前に会えて良かったよ 
俺は今、都内の警備会社で武術の指導をしている 、困った事があったら何でも言ってくれ、必ず力になるから…」 


悟)お前はまだ空手家なんだな? 
おぅそうだ、お前は橘の小僧に会ったか? 色々裏で悪さしてるらしいが


「俺は電話で話しただけだから何者かは知らん、噂によると相当悪党らしいが…」 


悟)居所が判かれば奇襲攻撃もありなんだが 、日下部も知らなかったのか? 


その後、俺達は互いの連絡先を交換して別れた 


ーーーー 


店に帰り、今夜の事をマスターに全て伝えた 
歩はモニタールームで宿題をしているらしい 

悟)なぁマスター、新規の依頼はないのかい? 

"明日、店に依頼人が来るらしいですよ~" 

橘はどの様な作戦を企てるか…
明日辺り何か動きがある様な気がする …


-----


悟)歩!ラーメンでも食いに行くか? 

折り鶴を片手に歩が走ってOKサインをした 

"私もお一緒に願いしますよぉ~"とマスターが拗ね、笑いを誘った。 



END



iPhoneから送信



『狙われた男』 


旅先から帰ると店が不審な事に気が付いた 

店の鍵が開いており 
壁の内側にはみ出たポストには
手紙が届いていた 

手紙には消印が無く、直接 投函したのが明らかだった 

封を開けた…がそこには魔除けと書いた御守りと携帯電話の番号が記載されただけの折り紙が入っていた 

しかしその御守りは俺が持っている筈の物… 
橘准教授から授かった物だ 

モニタールームに行き 
あるべき場所を探したが無い

俺達が留守の間、何者かが侵入した形跡があった 

店の扉は内側からしか鍵は掛からない、勿論外側に鍵穴は無い 

裏口の扉でしか侵入経路はない

しかも朝7時から夜10時迄は守衛が居る 

守衛を訪ね、三日分の防犯カメラの映像を見せて貰い、或る男の姿を見て驚愕した 

俺は目を疑った
その男は橘准教授に似ていた… 

折り紙に書かれた携帯番号を思い出した、震える手を制し電話を掛けてみた 


「兵藤だが…」 

おぅ兵藤か?久しぶりだな

「誰だ貴様は!」 

僕は橘に決まっているだろう 

「いや、違う!橘准教授は僕とは言わん」 

違う違う!お前と同期の橘だよ

「と…云う事は…お前橘准教授の息子だったのか?」 

やっと気付いてくれたね

「お前は何故、店に侵入した?」 

あっ悪かったね
実は親父の遺品を整理していたら、日記が出て来てね
兵藤に託した御守りに震術の奥義を記したと書いてあったのさ

「奥義だとぉ!」 

そう、この奥義は継承者の物だから勘弁してね

あっ!それと、橘の血を引く震術の使い手は全国にまだ相当居るよ

覚悟しておけよ!兵藤! 
プツ!プープープー 

「おっお前ちょっ…あぁ…」 

ーーーー 


悟)なぁマスターちょっといいかな? 

"何でしょうか?" 

悟)歩の初仕事の時の事、覚えているか? 

"あ~たしか獲物は女性記者でしたねぇ~" 

悟)そうそう、その女性記者はな、
橘准教授の娘だったんだ 

"そぉ~でしたねぇ確か橘 薫でしたっけねぇ~" 

悟)あの女は手強い震術使いだったよ、
歩が居なかったらヤバかったかも知れない 

今の電話の話しな、
あの御守りの中に震術の奥義が書いてあったらしいのだ 

それを薫の弟が盗みに入ったと云う話しだ 

"ほぉ~なるほどねぇ~" 

ーーーー 


物思いに耽った… 

何だか狙われる立場になってしまったみたいだ 

同じ技を使う相手にどう立ち向かうか考えた 

俺は或る結論に辿り着いた 
新しい技を磨くしか無いと… 

そう、遠隔に出た気の砲弾だ、
俺はこの技を「気弾」と名付けた 

それから毎晩、歩と公園で修行した 

指先の先端に気を溜め銃弾を放つイメージだ 

射程距離は最大10mが妥当だ、より近ければ威力は大木を貫く程だ! 

気を巧く操れ様になった歩と俺はターゲットが移動しても貫く技を修得した 

気を出す範囲を狭めた事により連弾も可能になり、且つ鋭利になった 

俺達は敵がどう接触して来るのか注意を配った 

ーーーーー 

或る晩の事、橘から電話があった 

俺だ!兵藤だ!今度は何の用件だ! 

「橘から刺客を送るよ、覚悟はいい?」 

橘家は絶えてしまうが… それでいいのだな? 

「何だぁそんな事?最初の刺客は元空手家だよ、
兵藤も知ってると思うよ?

兵藤を倒せるぞって言ったら即、継承志願して来たよ」 

まぁいい、お前は奥義とやらをそいつに伝授してないだろ? 

「兵藤は鋭いね、正解!そんな簡単に伝授しないよ」 

まぁお前は頭だけは良かったからな、
だがお前のその体力で奥義なんか使えると思えないけどな

「あまり甘く見ない方がいいよ、
僕は生まれ変わったんだからね」 

ハハハッ!まぁ早く刺客とやらを送れ!
但し俺は報酬のない仕事はしない主義だ

「僕を倒したら奥義を渡す、それでいい?」 

別に奥義なんかどうでもいいが約束は破るなよ、いいな? 

「じゃあ今夜、横浜港に来て、それじゃ~」 

ーーーー 

随分と明るくなったな… 
或る意味生まれ変わったのか? 




つづく


iPhoneから送信



熊を嘗めて危険な目に遭わせたことを、俺はみんなに謝った 

俺達は浅隈の車に乗り込み 
そして浅隈は俺達の術に興味を示した 

武)何て技なんだ? 
あの熊を吹っ飛ばした砲撃みたいなモノは、あんなモノ始めて見たよ… 

俺は浅隈に話した 

悟)あれはあの時、無我夢中で放ったんだが、試したのは始めてだった、想像以上に上手くいったよ 

いや、しかし体力の消耗は半端じゃなかった、たぶん一発しか撃てない 

俺と歩は修行を重ね 
気を溜め放出する術を学んだ

歩の見た目は華奢だがパワーはもの凄い、頼れる相棒だ


-----


浅隈の車は一時間程で街に着いた 

今晩は取り敢えず街の宿でお世話になる事にした 

今後の闘いに備え、俺達は鋭気を養った


ーーーー 

翌朝、街は騒然としていた、獲物が減った村から餌を求め、屍が街に姿を現したのだ

街中に悲鳴が響き渡った 

浅隈が血相を変え、宿へやって来た

武)跨の仲間を連れ来た、村人を救ってくれ! 


その時、俺は浅隈に或るお願いをした 

悟)歩は母親に嘘をついてここに来た

俺もこの先、仕事がやり辛くなる

だから約束だ、 屍を退治したらお前が仕留めた事にしてくれ


そして浅隈は、なに呑気な事を言っているんだと俺を罵った 

悟)凄く大事なことだ!これ程の大惨事、ニュースにならない訳がない 

俺達は仕事柄、有名になっては拙いのでな


まぁいい、とにかく来てくれと浅隈は促した 


悟)マスターは宿に居てくれ、
歩、行くぞ! 


-----


俺達は宿から出た 

街の人達は悲鳴をあげながら屍の恐怖から逃げ惑う 

逃げ遅れた人が、次々と屍の餌食になっている 

辺りは血の海だった 

屍は目が血走っている
まさに呪われた悪魔がそこに居た 

跨が散弾銃で屍を狙うが全く効果がない、浅隈の言った通りだった 

デカい…とてつもなくデカい… 

体長は二階建ての家をも凌ぐ 

俺は跨達に告げた 

悟「俺達は屍の背後に周る! 屍を銃で惹きつけてくれ、俺達が背後に周っても構わず撃ってくれ、心配ない俺達に流れ弾は絶対に当たらない、俺と歩は気が盾になる 、だから安心して撃ってくれ! 」


俺と歩は宿の裏手へ周り、屍に気付かれないように背後につけた 

こいつは悪魔の化身だ! このデカさ尋常ではない

歩に耳打ちした 

悟「俺を踏み台にして跳ね、屍の上半身に震術を放てっ! 俺は足元を狙う!」

「よしっ!今だっ! 」

歩は俺の肩を踏み台にし、跳ね上がり屍の首に震術を放った! 

俺はすぐさま屍の右足を粉砕し 

空中から降ってきた歩をキャッチした 

そして、横たわる屍に渾身の震術を放ったが、屍はまだ死んではいない

俺は浅隈を呼んだ

悟「浅隈ー!!屍を至近距離で撃てっ!」

ダンッ!! 

ダンッ!! 

ダンッ!! 

やっと屍は息絶えた 

俺と歩はその場で大の字になり青空を見上げ、屍の恐怖から逃れ安堵した… 


悟)よし、仕事は終わった、浅隈
観光案内をしてくれ



俺達は慰安旅行を存分に楽しんだ 




翌日のニュース報道 


伝説の空手家、北海の熊が[跨またぎ]に転身
苦闘の末、旭川の屍を退治し死の恐怖から道民達を救った。 


浅隈 武 身長197cm 120kg 

高校時代 全国空手選手権 無差別級2位 

素晴らしい功績である… 




END




iPhoneから送信