今回はその時に使った音声機材についてです。
うちの会社が撮影・録音を担当する対談や座談会・インタビューは、素材を放送番組やプロモーション映像、Web配信で使用する場合が当然多いんですが、その他として専門誌の取材やメーカーのカタログ作成、市場調査などの資料用として記録したりする(映像や音声素材を直接は公開しない)場合があります。
また、会議や団体間の交渉などの記録、記者会見の音声分配を依頼される事もあります。
(バウンダリーマイクを7本設置した状況) ※以前の別の現場です

バウンダリーマイクは目立たないので便利です。
映像制作分野も様々な方面からご依頼いただいていますが、対談や座談会、市場調査の撮影、インタビュー撮影などの分野は、国内外の製薬会社・医療機器メーカー、農薬関連、通信販売大手、Web制作会社、他の映像制作会社さんから主にご依頼いただいています。
変わったところでは、海外の調査会社が日本国内各地で調査する際に弊社が記録担当として同行したり、裁判員制度開始前の法曹関係者向けの研修で、別室での評議を大阪高等裁判所の大法廷に生中継(映像・音声)したことがあります。
対談や座談会などの収録や中継は、放送番組の収録や中継とそれほど変わりない(バラシ運用のEFP)ですが、中小規模の映像制作会社では体制としてマイク数本のENGロケ以上の音声にはすぐに対応できないところが多く、また、映像と音声が同時に必要とされるのでPA・SR・録音関係の会社さんだけでは対応できないというニッチな部分でもあります。
うちの会社では、通常の映像制作のほか、対談や座談会などの収録も行なっています。マイクはガンマイクやピンマイクのほか、卓上グーズネックマイク(AT857QMa/12本)や

バウンダリーマイク(AT871R、T961R/7本)などなど、状況に応じて色々使い分けています。

(バウンダリーマイクの設置例)

特に資料用の記録や中継は予算的にも内容的にも厳しい場合が多いですから、大手の制作技術会社さんでは割に合わず、複数社で役割分担するのも難しい場合がよくあります。
機材やエンジニアとしても臨機応変な対応が求められるので、うちのような小回りのきく(小回りしかきかない!?)会社が向いているんだと思います。
それと、私はラジオ局にも居ましたから、生ミックスはお任せあれ(笑)
今回の対談収録は紙媒体用の資料で、ある分野で世界的に有名な方たちが新しい機器について話し合うというものでした。
卓上で機器を手に取って部分部分を示しながら、操作もしながら話が進んでいったので、単純にICレコーダーで録音しただけでは後から音だけ聞いても全く要領を得ない状況になっていたと思います。
専門用語が次々と飛び交いますが、一般のICレコーダーでは距離があったり話者の声が小さいと言葉が聞き取れなかったり、誰の発言なのか正しく判別できなくなってしまうこともよくあります。
あるクライアントさんから伺ったお話では、一般のICレコーダーでは話者の声が小さくて録音状態が良くないと、文字起こしのプロに依頼しても「聞き取れず」とか「話者不明」という箇所が多発して大変なんだそうです。
うちの場合、スタジオ収録の放送番組の音声品質を標準として考えているので、一般的なグループインタビュールームや裁判所の公式録音よりはるかに明瞭度が高くクリアな収録が可能です。
当然ではありますが、うちが収録した素材では「聞き取れず」とか「話者不明」といったことは今までありません(笑)
グループインタビューの専用施設は東京・大阪以外にはほとんどないので、市場調査の収録をしたいという地方の企業さんや調査会社さんからご依頼いただくこともよくあります。
さて今回はビデオカメラが1台、使用したマイクはワイヤレスピンマイクが2本とバウンダリーマイクが4本(うち2本はワイヤレスの予備用)でした。紙媒体なので同時に写真撮影も入りました。

(ピンマイクECM-77B)

(バウンダリーマイクAT961R、円卓だとこんなふうに置くことも)

ふだんは参加者が数名以上の場合、予備回線やEQ、ダイナミクス処理等も考慮してミキサーはYAMAHAのデジタルミキサーDM1000V2を使っています。
YAMAHAのDM1000V2は在京・在阪のテレビ中継制作(スポーツ中継など)でもよく使われている16chのデジタルミキサーで、小型ながら自由度が高く、非常に多機能な音声卓です。
(YAMAHA DM1000V2、他の現場にて)

いつもはDM1000V2ですが、今回は資料用としての収録で音声を公開用としては使用しないので、試みとしてZOOMのR16でいってみました(笑)

ZOOMのR16は昨年発売された機種で、SDHCカードに同時8ch録音できるミキサー内蔵のデジタルMTRです。
昨年、このR16が発売されるまで、CFやSDHCなどのメモリーカードで収録するタイプのMTRでは同時録音が4chまでの機種しかありませんでした。
(2010/4現在、TASCAMがメモリーに8ch収録できるポータブル機を2機種リリースしています。今後発売されるDR-680に興味があります)
ZOOMのR16の市場価格は、普段使っているDM1000V2と比較するとなんと1/20以下の3万円台…
今回の対談、DM1000V2ではなくR16にしたのは予算の都合ではなくて…
YAMAHA DM1000V2…21kg 梱包重量…36kg(車輪付きハードケース)
ZOOM R16 …1.3kg 梱包重量…2.5kg(PCバッグ)
という理由です。R16の梱包重量はDM1000V2の1/14以下…
このR16、もともとは今まで現場収録のDAWのバックアップとして使ってきたTASCAMの8ch MTR(DA-88、DA-38)を引退(+軽量化)させる目的で導入しました。
R16を選択したのは、今後AudinateのDanteカード(ネットワークオーディオのデジタルインターフェース)をDM1000V2に装着し、HUBで分配してDAW(16ch)と予備DAW(16ch)、さらにR16を2ndバックアップ収録機(アナログBUS OUT 8chから接続)として、2MIXをHD-P2で別収録する体制(主に音楽ライブやステージなどの収録)で使おうという算段だったので、ワードロックもTC同期も無しで独走させる、安くて手軽な予備MTRという基準でした。
民生機を仕事用に導入する事はあまり無いんですが、あまりの軽さに…。
R16のHA(ヘッドアンプ/マイクアンプ)は高価な業務用ミキサーと比較してしまうと低ノイズで音質が良いとは言えませんが、外部からラインレベルで入力する分にはなんとかなると思います。
しかしR16、なかなか侮れません。単体MTRモードではfs=44.1kHzのみ(16/24bit変更可)ですが、AudioI/FモードではASIOドライバで24bit 96kの8ch RECに対応。Mackie Controlのエミュレート(フェーダー)も可能なほか、DAWソフトのCubase LE4まで付いてきます。
なんというCPの高さ…。ZOOMのサービス精神はすごいです。
贅沢を言うとPANやEQ、ダイナミクスなどはこんなふうに操作子が出ていると良いんですが…

これだとR16が150台くらい買えるお値段です…。(YAMAHA PM5D)
YAMAHA製品が高いと言っているのではありません。ZOOMが…(笑)
また、R16は収録レベル(HAゲイン)とは関係なく、録音中にもフェーダー操作でモニターミックスを作れます。トラックダウンやピンポン用だけとしてではなく「ミキサー内蔵のMTR」としては当然求められる仕様だと思いますが、以前検討していた他社のレコーダーでは収録だけに特化して小型化されている関係で自由なモニターミックスができませんでした。
ZOOMの製品はどれも低価格ですが、細かい設計思想がとてもしっかりしていますね。

R16のフェーダー(45mm)は、DM1000V2(100mm)と比較すると音量変化の段階が粗いのが気になりますが、実際の使用(対談など)ではなんとか無視できるかも…。
ENG用の4chミキサーにオプションユニットを付けて、ロータリーフェーダー8つでMIXするよりは格段に楽で素早い操作が可能です。
このR16ですが、やはりDM1000V2と比較してしまうと音声卓としての音質や操作性はだいぶ劣ります。
個人的には収録素材を放送やVP、Webなどで使用するのであれば、やはりDM1000V2などの機材でMIXすべきだと思います。しかし、ちゃんと使えばR16でも記録用としては全く問題ない品質で収録できました。
肩掛けはできませんが、電池駆動可能でこれだけ簡単・軽量な8ch MTRがあると、今までMTR収録をしていなかったような現場でも気軽に使えそうです。
今回、R16(ファンタム給電は5/6の2つのチャネルのみ可)ではファンタム電源が足りないので、ソニーのマイク電源AC-148Fを追加使用しました。R16で各マイクをMTR収録(テスト収録)しつつ、R16のMIX OUTをWENDTのNGS-X3(3chミキサー)に入れてレベルを確認して、カメラとHD-P2(予備レコーダー)に分配しました。

映像はカメラ本体での収録のほか、PCでMPEG2収録しました。対談終了後、撤収している間にPCでDVD-Rを数枚作成して即座に納品。初めてのクライアントさんだとびっくりされる方もいらっしゃいます。(現場納品は機材の関係であらかじめご依頼があった場合に限ります)
バックアップ機材が多めですが、ワイヤレスマイクやミキサー、レコーダーなど主要部分に冗長性を持たせるのは放送現場にいた頃からの習慣です。セッティング時間もそれほど変わりません。
バックアップ収録は当然として、万が一いづれかの機材にトラブルが発生しても組み替えれば即座に最低限の機能を維持できる体制になっています。これも大事なポイントですね。
その他、クライアントさんから特に指定がなくても、万が一の商用(電源)断でもバッテリーや電池で収録を継続できるような機材をあらかじめ選択していたり、そのために仕様変更していたり… と少々やりすぎの感もありますが、このあたりもうちの考え方であり品質の一部なんです。
今回の収録現場、ホテル32階から見た神戸ポートタワー。

改修で2ヶ月ほど休館していたそうですが、3/19から営業再開したそうです。工事用の足場は4月中旬に撤去予定だとか。こんな姿も珍しいですね。
映像制作/音響制作/制作技術
株式会社 写楽 www.sha-raku.co.jp














































































