サウンドフェスタ2015 ZOOM F8 MultiTrack Field Recorder | 写楽ブログ 映像制作/音声制作

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ご無沙汰しております。
久々の更新です。

もう6月末。サウンドフェスタの季節です。
昨日、初日にちょっと行ってきました。

今年も魅力的な機材がたくさん展示されていましたが、「おおっ」と思ったのが、ZOOMの8chポータブルレコーダー「F 8」

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本体はかなり小さいですが、なんと24bit、fs=192kHzで8chの同時録音が出来るそうです。

これまで弊社ではポータブルレコーダーとしては、TASCAMのHD-P2、DR-680、その他ZOOMのR16やH2n、ROLANDのR09、古くはTCD-D7やD8(以下略)を使ってきましたが、24bit、fs=192kHzで収録できるのはHD-P2(2ch)とDR-680(2chまで)だけでした。

24bit、fs=192kHzのMTRというと他社では4chで実売20~80万円くらいですが、さすがZOOMさん、8ch同時収録で実売15万円前後だとか! すんごい価格破壊ですね。

このF 8。収録はSDカードで、2枚同時収録できるとのこと。TC入出力もあり、サンプリングは受けたTCにアキュレートシンクだそうです。

このブログでも以前取り上げましたが、ZOOMは低価格ですがいろんなとこの仕様が何気にちゃんとしているところが凄い。F8もまったく隙がありませんね。

R16などは(うちでもそうですが)けっこうメジャーな現場の最終のバックアップMTRとして使われていたり、けっこういろいろなところで使われているようです=3
r16_01

個人的に山中でサウンドスケープを録る以外、仕事では192kHzで録ることは今すぐはないと思いますが、お仕事では96k収録してMAで最終的に48kHzに落とした音楽もんの完パケがとても良いので、まずは8chからでも192kのマルチ録りをやってみたい。


無駄話は置いといて、F8の本体を見ていきましょう。

操作パネルはディスプレイとHAゲイン、トランスポート操作部、スレートマイクとOSC(1kHz)、メニューの操作ノブがあります。

panel

スレートマイクは任意のchにアサインできるそうです。
映画やドラマの録音現場で有線やRXなど様々な入力が混在するトラックに一斉にクレジットを入れたり、CUEトーンを入れたり出来るのは素晴らしい!

その他、ファンタムなどほとんどの設定はメニューで行うようです。

disp
本体ディスプレイ

trim
HAゲインのトリマーとレベルメーター

確認するのを忘れたんですが、この操作部のトランスポートボタンはREC中に何らかの方法でロックできると良いですね。できるのかも。

そして、特筆すべきは最大HAゲイン。なんと+75dBまで。

75

他のHAやミキサー出力を収録するバックアップ専用のMTRならなんでも良いですが、ドラマや映画録音の現場で使用するHAは、最大ゲインが60dBでは足りないことがあります。
個人的にはより音質の良い
外部HAを常に使いたいですが、省力化して内部HAで行く場合にこの設計はありがたい。

次に、本体左は入力1~4ch(XLRとTRSのコンボジャック)。ヒロセ4ピンのDC電源入力とUSB端子、SDカードスロットがあります。

1-4

このヒロセの4ピン端子はSONYのWRR(ワイヤレスのポータブル受信器)や海外製のミキサー、海外製のポータブルレコーダーの電源入力でよく採用されている端子で、電圧(12V)もピン配もいつからか各社共通になっています。
ちなみにプロテックの有線インカムの外部電源端子とはオスメスが逆です。

弊社で使っているWENDTのNGS-X3の電源入力もF8と同じで、コネクタ
内部がとても小さいので自分でハンダ付けするのは大変でしたが、抜け止めのロックがあるのでこのサイズの電源端子としては最も安心できるタイプ。

ngsx3
NGS-X3の外部電源端子


現時点では既製の電源ケーブルは海外製が殆どで、国内ではWRR用のパーツとして(両端ヒロセ4ピン)しかないですが、今後ZOOM社からも出てくるでしょう。

こういったポータブル機器では、外部電源の入力端子はとても大事なポイントです。
一般的なロックなしのDC入力端子では、移動を繰り返す現場では抜けてしまう事故が起こり得ます。
抜けないようにテープで貼ったりという対策も出来なくはないですが、そもそも安全性の高い端子がついてるほうが安心。
特に電源端子のロック機構は業務用機に求められる必須条件ですよね。

それから、電池を内蔵できるのにどうして外部電源を使うかですが、長時間の収録や連日撮影が続くような場合、ワイヤレスの他にレコーダーまで内蔵電池でやってしまうととんでもない本数の電池を消費してしまいます。
弊社の現場では内蔵電池はバックアップとして入れてはおきますが、ポータブルレコーダーはVマウントの外部バッテリーから給電するのを基本にしています。

しかし、リチウムイオンの外部バッテリーから給電する場合、放電停止電圧との兼ね合いが問題になります。

そもそも音声レコーダーが外部バッテリー給電を想定しておらず「外部DC入力=ACアダプタ」と認識する場合など、外部電源の電圧低下警告は出ません。

ac

Vマウントのリチウムバッテリーは過放電防止回路が内蔵されているので、10V程度まで低下しても動く音声レコーダーでは、電圧警告が出る機種でも適切な警告電圧に設定できないとバッテリー側の過放電防止回路でのカットオフのほうが先になります。

たいていの機種ではレコーダー本体に電池を入れておけば自動的に切り替わるので電源断にはなりませんが、これは嫌ですね。

対策として、うちの現場では「容量的には24時間使えるけど12時間で交換」とか、他の電圧計で電圧を監視しながら使ったりして避けていますが、ちょっと手間です。

voltagemeter


サウンドフェスタでメーカーの方に聞いたところでは、F8では外部電源入力時の電圧警告について「設定はありません」とのことでしたが、webで確認してみると警告電圧設定機能は搭載されているようです。発売前にどんどん改良されているのでしょう。


5-8
本体右は入力5~8chで、こちらもXLRとTRSのコンボジャック。他社では途中のチャンネルから入力端子が変わるレコーダーもあったりしますが、言うまでもなく全部同じほうが使いやすい。

出力はMIX OUTのL/RがTA3(ミニXLR)、ヘッドホンは標準ジャック。サブアウトとしてステレオミニジャックがありました。
TA3のメインアウトもステミニのサブアウトも基準は-10dBVという記載がありました。MTRのミックスアウトですし、カメラや映像レコーダー送りのガイド用ですね。

それと、撮影を忘れてきたんですが、本体底面には一般的なDCジャックと電池ケース、ZOOM製のマイク?を使える拡張端子がありました。
外部電源入力がヒロセ4ピンだけでないってのは面白いですね。
電池は単3が8本だそうです。どのくらい電池駆動できるかは聞いたけど忘れました。DR-680より長かったような?

それから、iOSでリモート操作できるとのこと。Wi-FiではなくBTで繋がっていました。最近はBTのほうが安定していることが多いですね...
rem

リモートアプリでは、HAゲインとミックスのPAN、レベル設定、トランスポート操作ができるようです。しかし、録音中にモニターMIXを調整する場合など、トランスポート部にミスタッチして録音が止まっては困るので、部分指定のロック機能があるといいですねと提案してきました。


その他、気になるのは不慮の電源断の場合の録音データについて。

TASCAMのHD-P2では、数秒ごとにファイルを書き込んでいるため、録音中に電源がすべて落ちても切れる直前までの音声が残っていますが、DR-680や他社のレコーダーでは不慮の電源断が発生すると録音中のテイクがすべて失われてしまい、
本体でもPCを使用しても修復不能になってしまう機種があります。

F8は不慮の電源断の場合にどうなるか、展示会では正確な回答を得られなかったのですが「最近の他の機種は修復機能があるので修復できるのでは?」とのことでした。

この部分が大丈夫なら、もはや敵なしって感じですね。

いや、買うのは一応HAの質を確認してからかな。
マイクとヘッドホン持参で今日も行こうかな...

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