ご無沙汰しています。
晩秋をのんきに過ごし、年末に向かったところで引越しが急に決まり、手続その他に奔走し、年取った両親の助けを借りて二月半ばになんとかやり遂げたのですが、もともとアメ車と言われる体力の私。
こんな時にかぎって不具合が生じました。
まずは、一月半ばに歯茎の上部にしこりのようなものができ、かかりつけ医に相談したところ傍にある歯の根幹が傷んで膿が出ていると判明、完治には時間がかかるとのことだったので引っ越しを終えるまで治療をストップ、転居してすぐに紹介された歯科の門を叩きましたがこの空白の数週間があだになったのか、当初の予想より困難な状況に…。
当時口腔がんが話題に上っていたこともありそちらを疑われていた矢先、目の異常に気付いたのです。
きっかけは地元紙に掲載された東山彰良さんのエッセイで、その内容は彼自身が加齢黄斑変性を発症し手術をしたというものでした。
視線の真ん中がぼやける、またはゆがむ症状だと具体的に描かれていたのですが、数日後にパソコン画面を眺めていて気が付いたのです。
あれ?
私も真ん中がうっすら濁ってる。
まさかね。
そう思いながらも左目を手で隠して前方を見据えるとちょうど一文字分、眼球に鱗でも貼ったようにぼやけて見える。
右目が、変だ。
明らかにおかしい。
長年飛蚊症を患っているのでそれだと思いたかったけれど、眼球を動かしてみても中心部分の見えにくさは変わらない。
夫に打ち明けるとすぐに眼科へ行くよう言われましたが、引っ越したばかりで近隣の眼科でどこが良い病院なのかわからない。
なので今年初めに検診を受けた旧居近くの眼科に行きました。
前回は飛蚊症と老眼の進行を疑っての診察で、眼底検査をしていませんでした。
眼圧と視力検査のみだったためなのか、その時はまだ症状が出ていなかったのか…。
今となってはわかりませんが。
とにかく結果は、「黄斑上膜」。
女性に多い病気だそうです。
それと、白内障の治療とセットで行われることが多いようです。
眼球の奥の網膜で物を見る大事な場所が黄斑というのですが、そこに膜が張り付いて縮む過程で網膜にしわが寄り、視界がゆがんだりだんだんと支障がでてくるのがおおまかな症状です。
網膜の状態から手術が必要と告げられ、頭はまっ白になりました。
手渡されたリーフレットをざっと読んだだけで血の気は引き、もう逃げ出したい。
手術の内容としては、眼球に針のようなもの刺し入れて奥に張った膜を除去。
入院日数は4日間。
数日後にもう一度検査をし、手術の予約を入れる手続きをしました。
およそ一月後の四月の半ばに手術。
手術時間は三十分余りだと言われて、ああ、それほど難しくないかもと安堵したり、説明文の末尾の「成功の保証はない」という一文に震えたり。
親の友人の中には同じ黄斑上膜を患って二十年、経過観察のままでいると聞き、ならば私もそうしていいのではと思ったりと、ずいぶん揺れました。
取りやめにしなかったのは、そのわずかな日々の間に視野に変化が生じたからです。
最初は一文字程度のかすみだったはずなのに、気が付いたら二文字、いやそれ以上?と悪化していきました。
もちろん視力検査の数値もがたっと落ち、これは腹をくくるしかないと…。
物を見ることが好きである限り、大切なことだと思いました。
夫と両親には目を使うなと散々忠告されていましたがじっとしていられず、ネットで手術に関するブログを探し始めたのはこの時です。
それで見つけたのが上橋菜穂子さんのブログ。
勝手ながら紹介させていただきます。
興味を持たれた方は下のリンクからご覧ください。
この体験手記は術後とあわせてたしか13回くらいまであります。
しっかりと微に入り細に入り記述されており…。
さすが上橋菜穂子さん・・・。
もともと力強い文章を書かれる方です。
とてもとてもリアルに描かれていたため怖くなり、一度ざっと目を通してしばらく読めませんでした…。
でも、前日にもう一度勇気を出して読み直したおかげで、術中は怖くありませんでした。
「ああ、上橋さんがおっしゃったとおりだな…」と思うことが多々あり、術後すぐに病院食を平らげて両親を拍子抜けさせたくらいです。
色々な眼科のホームページや何人かのブログを拝見して挑みましたが、一番頼りになったのは上橋さんの記述でした。
ありがとうございます。
そのようなわけで。
もしも同じ診断をされた方はお勧めです、上橋さんの手術体験記。
ただし上橋さんは聖路加病院での治療でしたし、白内障の手術もあわせてされているので、私とは若干違います。
手術の結果、上膜の除去は成功、今の時点での経過は良好です。
おかげさまで視力も回復してきていますし、眼底検査の画像では正常な状態に戻りつつあります。
術前に実家の庭の花を見た時、これがもしかしたら右目で見られる最後の花かもしれないと思ったりもしました。
ですが、退院して綺麗な青空とこでまりの白い花弁を堪能することができ、本当にありがたいことだなと。
この件で心配をし、そして今も助けてくれる家族と友人や知人のみなさんに感謝します。
術後まだひと月に満たないし三年は通院が続くとのことなので、これからは右目を大切に、なにごとも気を付けて過ごそうと思います。
そういえば。
最初に触れた歯の治療の件は、手術の前になんとか終了しています。
こちらも一時はどうなることかと気をもみましたが、一応、根幹治療の範囲内で終えることができました。
立て続けに起きた色々を思うに、歳をとるとはこういうことなんだなあとしみじみ思う日々です。
今までさぼっていた健康診断、今年は受けようと反省しています。
以上、近況でした。