小さい頃からしばらく、全く思いもしなかったことがあります。
「おとこのこってばかだなあ」
なぜならば身近な男の子である初孫の兄は親族の中では絶対的存在で、馬鹿だなんてとんでもない、という風潮だったからです。
たとえ兄が、
建築中の公園で滑降遊びをして気管支をこじらせても
ラジオ体操のあとに道草食って近所の公園の遊具から落ちて骨折しても
近くの川でいかだ遊びをしてとっつかまつても
その川で釣りをしていて己の身体を釣り上げてしまい、通りすがりの人が病院へかつぎ込んだとしても
全て運のなかったことで彼のせいではなく、兄の失態だと一度たりとも疑わなかった幼年から少女時代・・・。
そっと、目を逸らしていましたね、みてはならぬと思っていたので。
本当は、ごくごく普通の男の子だったのに、ね。
逆に私が毎日何か失敗する度に強い瞳でにらみつけてくるので、男性は専制君主的な畏れ多い存在だと思っていました。
親に対しても言わずもがな。
たまに反発してみると何倍にもかえって叩きのめされるので、いっそのこと目に触れないように小さくなっている方が良いとも思いました。
それが尾を引いて、控えめに、隅っこにいるうちに、だんだん自分が解らなくなり・・・。
本当に、二十代初めまで何もかもわからなくて、その混乱に巻き込まれた当時の方々には申し訳ないと思います。
扉を少し開けて、自分で考えるようになったのは23歳の時に友人達と行ったイギリス。
滞在はロンドンでしたが、足を伸ばして出かけたストーンヘンジが力を分けてくれました。
ただっ広い草原と高い秋の青空の真ん中で、呼吸の仕方を少し覚えた気がします。
その風景はこどもの頃度々尋ねた九州の草千里と大差ないかも知れないけれど、空と地面以外何もない世界に、心が動いたのです。
色々悩みがあって食事も喉を通らなくなり、針金みたいな胴体にに大きな顔が乗った漫画の火星人のような身体に、少しずつ力がわいて、少しずつ、自分で考えて、歩けるようになりました。
もちろん、自分で考えて進めた全てが正しいわけではなく、良いことも悪いことも続き、人を傷つけたり、後悔もたくさんしましたが、空洞なままでいるよりずっと良かったと今は思います。
前置きのつもりが、随分と重い話になりましたが。
これから紹介するのは、真逆の、笑いしか浮かんでこない絵本です。
『おっとあぶない かわのなか』
なんだろうな。
読後に冒頭の通り、「おとこって・・・」と言う言葉が真っ先によぎるこの一冊。
あらすじとしては、
川の中州にライオンの親子とゴリラの親子が釣りに来て、互いに対抗心バリバリとむき出しで釣りに熱中するうちに・・・。
豪雨に襲われ、遭難しかけるのです。
あわや・・・と言う時に、互いの能力をフル回転させて難を逃れ、和解して別れるのですが。
最後まで負けん気たっぷりの大人げない一言をこぼす親たち。
いやいや君たち、その負けん気で命落とすところだったって解ってねえだろう!!
もう一回、川の中へ行って、しっかり考えてくるが良い・・・と、彼らの妻だったら言うかも知れません。
しかし反省させたところで、たいした成果はないでしょうねえ。
そしてきっと、そのどうしようもない負けん気とプライドは息子たちに継承されるのだろうな・・・。
ちなみに、これを読んだ知人達の一番最初の感想は「・・・さかなが、もったいないな・・・」でした。
この視点の違いが、親しい人たちと絵本を読み合う時の醍醐味ですね。
私は魚のことは一切考えなくて、ただもう「ばっかだな~、こいつら・・・」しかありませんでしたから。
馬鹿だけど、憎めない。
むしろそこが可愛くなってしまう。
そんな感想を抱けるような歳になってしまったな・・・と、ふと、寂しくなったり。
ところで、この絵本で私がたまらず吹き出し笑いしたのは・・・。
一番最後の、作者近影です。
きむらゆういちさんとみやにしたつやさんの、捨て身の笑い取りに完敗。
そういえば、「おとこって・・・」と言う感想を直球で書いている絵本があります。
その名もずばり、『おとこのこなんてだいきらい。だってね・・・』。
女の子視線で、男の子と相容れない部分をずばんずばんと並べ立てております。
汚くて騒がしくて・・・それでね、と。
この絵本を読み聞かせると、女の子はたいてい面白がりますが、男の子は無口になります。
もちろん、この作者は公平で、逆の視線バージョンも出しております。
『おんなのこなんてだいきらい。だってさ・・・』
この時は、読まれた女の子のご機嫌がまがってしまうこともあるからご注意とか・・・。
そりゃそりうだよな。
耳が痛いというか、いちいちこんなこと指摘して何が楽しいの?って腹が立つだろうから。
とはいえ、「おおむね、こんなかんじ・・・」なので、それに当てはまらない男の子と女の子は多分、「ふーん」と言うだけなんだろうなと思いますが。
たった一冊の短い話なのに人の色々な気持ちや考えを引き出せる絵本って、本当に凄いなと思います。
大人になるまでもなってからも色々あるけど、こうしてありとあらゆる絵本に触れられる環境に辿り着いて、本当に良かったなと思うこの頃です。
「おとこのこってばかだなあ」
なぜならば身近な男の子である初孫の兄は親族の中では絶対的存在で、馬鹿だなんてとんでもない、という風潮だったからです。
たとえ兄が、
建築中の公園で滑降遊びをして気管支をこじらせても
ラジオ体操のあとに道草食って近所の公園の遊具から落ちて骨折しても
近くの川でいかだ遊びをしてとっつかまつても
その川で釣りをしていて己の身体を釣り上げてしまい、通りすがりの人が病院へかつぎ込んだとしても
全て運のなかったことで彼のせいではなく、兄の失態だと一度たりとも疑わなかった幼年から少女時代・・・。
そっと、目を逸らしていましたね、みてはならぬと思っていたので。
本当は、ごくごく普通の男の子だったのに、ね。
逆に私が毎日何か失敗する度に強い瞳でにらみつけてくるので、男性は専制君主的な畏れ多い存在だと思っていました。
親に対しても言わずもがな。
たまに反発してみると何倍にもかえって叩きのめされるので、いっそのこと目に触れないように小さくなっている方が良いとも思いました。
それが尾を引いて、控えめに、隅っこにいるうちに、だんだん自分が解らなくなり・・・。
本当に、二十代初めまで何もかもわからなくて、その混乱に巻き込まれた当時の方々には申し訳ないと思います。
扉を少し開けて、自分で考えるようになったのは23歳の時に友人達と行ったイギリス。
滞在はロンドンでしたが、足を伸ばして出かけたストーンヘンジが力を分けてくれました。
ただっ広い草原と高い秋の青空の真ん中で、呼吸の仕方を少し覚えた気がします。
その風景はこどもの頃度々尋ねた九州の草千里と大差ないかも知れないけれど、空と地面以外何もない世界に、心が動いたのです。
色々悩みがあって食事も喉を通らなくなり、針金みたいな胴体にに大きな顔が乗った漫画の火星人のような身体に、少しずつ力がわいて、少しずつ、自分で考えて、歩けるようになりました。
もちろん、自分で考えて進めた全てが正しいわけではなく、良いことも悪いことも続き、人を傷つけたり、後悔もたくさんしましたが、空洞なままでいるよりずっと良かったと今は思います。
前置きのつもりが、随分と重い話になりましたが。
これから紹介するのは、真逆の、笑いしか浮かんでこない絵本です。
『おっとあぶない かわのなか』
- おっとあぶない かわのなか (日本傑作絵本シリーズ)/福音館書店
- ¥1,404
- Amazon.co.jp
なんだろうな。
読後に冒頭の通り、「おとこって・・・」と言う言葉が真っ先によぎるこの一冊。
あらすじとしては、
川の中州にライオンの親子とゴリラの親子が釣りに来て、互いに対抗心バリバリとむき出しで釣りに熱中するうちに・・・。
豪雨に襲われ、遭難しかけるのです。
あわや・・・と言う時に、互いの能力をフル回転させて難を逃れ、和解して別れるのですが。
最後まで負けん気たっぷりの大人げない一言をこぼす親たち。
いやいや君たち、その負けん気で命落とすところだったって解ってねえだろう!!
もう一回、川の中へ行って、しっかり考えてくるが良い・・・と、彼らの妻だったら言うかも知れません。
しかし反省させたところで、たいした成果はないでしょうねえ。
そしてきっと、そのどうしようもない負けん気とプライドは息子たちに継承されるのだろうな・・・。
ちなみに、これを読んだ知人達の一番最初の感想は「・・・さかなが、もったいないな・・・」でした。
この視点の違いが、親しい人たちと絵本を読み合う時の醍醐味ですね。
私は魚のことは一切考えなくて、ただもう「ばっかだな~、こいつら・・・」しかありませんでしたから。
馬鹿だけど、憎めない。
むしろそこが可愛くなってしまう。
そんな感想を抱けるような歳になってしまったな・・・と、ふと、寂しくなったり。
ところで、この絵本で私がたまらず吹き出し笑いしたのは・・・。
一番最後の、作者近影です。
きむらゆういちさんとみやにしたつやさんの、捨て身の笑い取りに完敗。
そういえば、「おとこって・・・」と言う感想を直球で書いている絵本があります。
その名もずばり、『おとこのこなんてだいきらい。だってね・・・』。
- おとこのこなんてだいきらい だってね…/フレーベル館
- ¥1,058
- Amazon.co.jp
女の子視線で、男の子と相容れない部分をずばんずばんと並べ立てております。
汚くて騒がしくて・・・それでね、と。
この絵本を読み聞かせると、女の子はたいてい面白がりますが、男の子は無口になります。
もちろん、この作者は公平で、逆の視線バージョンも出しております。
『おんなのこなんてだいきらい。だってさ・・・』
- おんなのこなんてだいきらい だってさ…/フレーベル館
- ¥1,058
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この時は、読まれた女の子のご機嫌がまがってしまうこともあるからご注意とか・・・。
そりゃそりうだよな。
耳が痛いというか、いちいちこんなこと指摘して何が楽しいの?って腹が立つだろうから。
とはいえ、「おおむね、こんなかんじ・・・」なので、それに当てはまらない男の子と女の子は多分、「ふーん」と言うだけなんだろうなと思いますが。
たった一冊の短い話なのに人の色々な気持ちや考えを引き出せる絵本って、本当に凄いなと思います。
大人になるまでもなってからも色々あるけど、こうしてありとあらゆる絵本に触れられる環境に辿り着いて、本当に良かったなと思うこの頃です。