JDC・JEPA共催の「デジタル社会に必要な情報アクセシビリティ」ウェビナーを聴講した | しゃっぴいおばさんのブログ

JDC・JEPA共催の「デジタル社会に必要な情報アクセシビリティ」ウェビナーを聴講した

ディスレクシアや伊藤忠記念財団のマルチメディアDAISY図書のことを、いつかきちんと聞いてコラムにまとめてみたいなあと思っていました。

そんな時に、JDC(日本DAISYコンソーシアム)とJEPA(日本電子出版協会)共催のウェビナーの案内が来て、昨日の午後はそのセミナーを聴講しました。

法律や企画など私にはわからないことも多かったけど、ちょっとだけ紹介です。

セミナーには5人の方が登場しました。

 

・基調講演:「全ての人のためにアクセシブルな電子書籍とは」 石川准氏

電子書籍とは、ウェブサイトの音声読み上げ対応のことだけを言うのではないというのが一貫して根幹にありました。

車いすの方が階段でつまずいたとき、あなたは障害はどこにあると思いますか?

医学モデルでは「足に障害」と答えますが、社会モデルの答えは、「階段が障害、障害こそが障害」となります。

目の見えない人も耳の聞こえない人も、配慮が要る/要らないの医学モデルの視点ではなく、障害者の人権を守るためには、社会は、障害者が直面している社会的障害を取り除かなければならないとのことでした。

障害者差別解消法などができてきても、アメリカに比べると日本はまだまだ法整備が遅れているのだそうです。

デジタル教科書はアクセシブルでなければならないと、GIGAスクール構想にも触れました。

 

・「当事者の立場からディスクレシアとは」 神山忠氏、小澤彩果氏

ディスレクシアとは、知能には問題ないものの文字の読み書きに限定した困難さを持つ疾患です。

実際に文字がどんなふうに見えるのかを話してくれました。

行間が掴めない、縦書きが苦手な人、ルビが読めない人など、人によって困難さも違うようです。

小澤氏は家族の協力にも恵まれDAISY政策ソフトのモニターもし、大学院までいかれ、今は支援技術開発機構研究員をされています。

書体は、明朝体など凹凸がある書体は間違いやすいとのこと。

図書館の案内などの字体にも工夫が必要だと感じました。

 

・EPUBアクセシビリティのJIS規格化について 村田真氏

主に電子書籍(EPUB)について話されました。

イタリアでの状況を説明し、実現したいのは、

音声読み上げができるように作り、その認証を受け、音声読み上げが実現できることを明示し、買う前に確認できること。

そして、一番は独自仕様にはしないこと。

とはいえ、認証をどこでやるのかなどの問題はあるようです。

 

・IDC技術委員会のEPUBに関する取り組み

先にも言いましたが、音声読み上げができればアクセシブルというのは大きな誤解と話し、必要なのはナビゲーション機能と説かれました。

ナビゲーションとは、読み上げの移動を中心とした操作で、細かなことは色々あるけど、目次や栞のようなものだと思います。

縦書き/横書き、ルビの有無、分かち書きの実現など、健常者も障害者も同じEPUBを使って読書ができるボーンアクセシブルな電子出版を実現する仕様の策定に取り組んでいます。

ステキなことですが、一般の書籍もこれだけのことを要求されると、出版の壁が高くなる懸念があり、少し複雑な思いもしました。

 

・アクセシブルな電子出版への展望 河村宏氏

「著者には著作権があり、読者にはアクセス権がある。この2つの権利の調和を図る努力が求められている」と話しました。

ゆりかごでは著者も読者も一緒だし、著者も障害とは無縁ではありません。

公立図書館の役割にも触れ、ネットワークを通じた出版物の収集(購入)やアクセシブルな情報アクセスの保障は、ボーンアクセシブルな出版の普及で初めて実現するとのことでした。

問題はまだまだあるけど、GIGAスクール構想は、アクセスビリティの確保とリテラシイ教育も踏まえて実現するのが将来世代への責任と結びました。

 

聴講して

近眼や白内障レベルではないディスクレシアの方々の体験を聴けたことは、自分の日常は私の日常だということを再認識させてくれました。

その上で、私にできることをやらなきゃと思えたセミナーでした。

いつかまとめられるといいなあ。

やっぱり一度調布の図書館にお邪魔したいなあ。