
この映画、大好きだ!なので、2回観に行った!もお、好きっ!
監督は、好き好き大好きなダンテ・ラム。
主演はおなじみニック・チョンと、ポンちゃんことエディ・ポン!この2人の熱い演技に燃え、更に、萌える!
感想、めっちゃ長くなりますよ。
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この映画は、総合格闘技が題材となっているので、格闘技映画?と思う人もいるでしょう。
しかし総合格闘技は、男たちが未来への希望を掴むために自分を変える、変わるという事のメタファーであって、根底にあるのはどん底の生活から這い上がろうともがく男たちの人間ドラマなのです。
とにかくこの作品、冒頭から不幸のオンパレード。
スーチー(エディ・ポン)は、中国の大富豪の一人息子でありながら家の金には手をつけず、まったく欲のない素直で純粋な好青年(しかもイケメン)。
しかし、やりたいことが何でもできる環境にあり高学歴(たぶん)であるにも関わらず、親の会社の経営を助ける訳でもなく、自分で事業を起こすわけでもなく。人生をかけてやりたい事がみつからぬままに独り悠々とバックパッカーなんぞをやっているのです。
が、親の会社が倒産してしまい、父親は失踪。その父親はマカオで発見したのですが酒とギャンブルに溺れていて、スーチーは肉体労働をしながら父親の面倒を見ることになります。
ある日、スーチーは父親に「俺は20歳で世に出て、30歳で名を成した。ところがお前は、未だに目標すら持たずに生きている!」と罵られてしまう。何も言い返せないスーチー。
そう、スーチーはとてもいい子(しかもイケメン)なのにイマイチ精彩に欠けているように見えたのは、彼には人生の目標がないから。
でも、今の環境で人生の目標と言われても!
そんな時、スーチーは、これだ!というものに出会います。それが、テレビ中継されていた総合格闘技の試合。優勝すれば大金も手に入る。スーチーは、すぐにジムの門を叩き、総合格闘技に全てを賭ける決心をするのです。
ファイ(ニック・チョン)は、元ボクサー。しかも、世界チャンピオンにまでなった実力者。
しかし、若気の至りで驕ったファイは、八百長試合に乗ってしまい逮捕され、前科者になってしまいます。
今ではタクシー運転手をしながらギャンブルに溺れ、借金取りに追われる日々。どうにも首がまわらなくなった彼は、友人を頼って香港からマカオに逃亡します。その友人の世話で、ジムの下働きを始めるファイ。
そこで、ファイとスーチーは出会います。
総合格闘技をやりたいと言っても、初心者のスーチーはなかなか思うようなトレーニングができません。
もう、試合まで時間がないのに・・・と焦っている時に、スーチーはジムの下働きのおっさんファイが、サウンドバックを叩いているのを目撃します。見た目からは想像もつかない(失礼)キレがあって重いパンチ。
テコンドーしか経験のないスーチーはそのパンチを見て、ファイに指導して欲しいと願い出ます。しかし、勝負の世界から身を引いて20年のファイはスーチーの頼みを断ります。
ある夜、ファイはスーチーが父親に困らされている実情を知ります。その父親に怪我まで負わされたスーチーを見て、ファイは彼の頼みを聞き入れて指導する事を決めます。
このファイという男は、人が良い上に、他人の苦しみがちゃんとわかる奴なのです。
多分スーチーは、ファイに「お前も大変だな」と言って貰えたのが嬉しかったんじゃないかな、と思うのです。
声高に「僕は苦労してるんです!大変なんてす!」なんて主張する子じゃないけど、それ故に、やっぱりそれなりに頑張っているところを認めて貰えたのは、スーチーにとって救いだったんじゃないでしょうか。
だから、ファイに指導されるようになったスーチーは、死に物狂いに努力します。時間がないのでファイもかなり無謀なしごきをするのですが、スーチーはファイと過ごす時間が本当に嬉しく楽しいのか、犬コロのようにファイに懐き、じゃれつきます。
表情も明るくなり、黒目がちな瞳はキラキラしています。そんな可愛いスーチーに、ファイは希望に満ち溢れていた若き頃の自分を重ねあわせます。
スーチーを指導することでファイもまた、これまでの虚無と後悔に満ちた日々を取り戻しているのです。
ところで、ファイはマカオに来てアパートを間借りするのですが、そこにはクヮン(メイ・チェン)とシウタン(クリスタル・リー)という母娘が住んでいます。
不幸のオンパレードには、この母娘も含まれています。
クヮンは、余所に女を作った夫に捨てられ、残された子供二人を懸命に育てていました。そのストレスから、キッチンドリンカーになってしまったクヮン。
酔って眠りこけている間に、なんと下の子供が浴槽に落ちて亡くなってしまった。そのショックで心の病が本格化し、自殺未遂まで起こしたクヮンはとうとう入院措置させられ、娘のシウタンは施設に送られてしまいます。
シウタンは、その忌まわしい記憶のせいで、退院したクヮンを懸命に支えています。
まだ10歳なのに・・・。
出会った当初は、歳に似合わず家の事をテキパキと仕切るシウタンと、まるで何かに取り憑かれたように精気のないクヮンに戸惑っていたファイですが、事情を知ると、この母と娘を何かと気遣うようになります。
初めはファイを警戒していたシウタンも、次第にファイに心を開くようになり、三人はまるで疑似家族のような微笑ましい関係で結ばれていきます。
スーチーとの濃密なトレーニング、クヮンとシウタンと過ごす時間は、ファイの日常をとても充実したものと変えました。
ファイとスーチー、クヮンとシウタンの、つかの間の幸せな日々。
スーチーは総合格闘技のデビュー戦、続く第二戦と、なんとか勝利します。若さと鍛えられた肉体を駆使し、経験不足をメンタルの強さで乗り切る懸命なスーチーの戦いぶりは、観客からの熱い支持を得て試合はかなりの盛り上がりを見せます。
しかしその反面、テレビ中継されたその試合を見た借金取りに、ファイの居所がバレてしまうのです。
ああ、幸せな日々は長くは続かないのかー!
借金取りは、いきり立ってマカオのファイのアパートを襲撃。
ファイの家族と勘違いされたクヮンとシウタンも巻き込まれ、シウタンは階段から転落。
それを見たクヮンの心の病が再発してしまいます・・・。
このままだと、クヮンは再び入院させられ、シウタンが施設に送られてしまう。責任を感じて悩むファイ。せめてシウタンを引き取りたいと願っても、前科者のために許可が下りません。
この騒動の最中にスーチーの第三戦が開催されますが、ファイは試合に駆けつける事ができず、事前に作戦を錬ることもできませんでした。
第三戦ともなると、スーチーの粘りだけでは太刀打ちできない強敵(アンディ・オン)が立ちはだかりますが、ファイの不在はスーチーに不安感を植え付け、試合は苦戦します。
スーチーは試合前のインタビューで、他の選手ならとうにギブアップしている場面で、なぜそこまで耐えることが出来るのかと訪ねられ、今自分が懸命に努力している姿をある人に見せたいからだ、と言います。それは、スーチーの父親です。
自分の姿を見て、立ち直って欲しいというスーチーの願い。
それはすでに父親には伝わってはいて、会場には命がけの息子を見守る父親の姿が・・・。
試合中、苦境に晒される中でスーチーはそんな父親の姿を視界に捉えます。しかし、その直後、スーチーは頭からマットに叩きつけられてしまい・・・。
スーチーの大怪我、クヮンの入院、施設に送られたシウタン。
ファイは、ひたすら考えます。今、自分に出来ることは何なのか。何をするべきなのか。
もう、運命から逃げるのはごめんだ。かつての虚しい日々が、このような不幸を招いた。
それならば、ここで立ち上がり、命をかけて懸命に努力する姿を見せ、再び未来に希望を抱くきっかけを作るべきではないのか。
ファイは、スーチーに代わり総合格闘技の試合に挑戦する決意をします。
そんなファイを、友人は必死になって止めようとします。
格闘家にとって、歳を重ねる事はマイナスでしかない、総合格闘技は命を失う事もあるし、スーチーの二の舞になるかもしれないと。
「スーチーは目的を成し遂げた。決して負けてはいない!」
戦う意味。
それこそが重要なのだと、ファイは友人を説き伏せ、死に物狂いのトレーニングを開始します。
そこに、クヮンとシウタンを捨てた父親が姿を見せます。
自分が犯した罪は拭えないが、せめてクヮンが回復するまでシウタンを引き取りたいから説得して欲しいと。
あんたの力にはなれないと突っぱねるファイに、父親は言います。
シウタンは、ファイの試合が終わったら自分のところに来ると言っている、成し遂げた姿を見たら決心すると・・・。
ファイの第一戦は、スーチーをマットに沈めたチャンピオンが相手に決まります。
どん底の人生を巻き返すため、なんとしても勝つ。
その姿を、スーチーに、シウタンに示す事が贖罪なのだと、ファイはリングに身を投じるのでした。
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私は香港映画が、とりわけノワール物が大好きなので、ダンテ・ラムはかなり好きな監督なのです。
香港ノワールの、あの濃密な人間関係にはとても心惹かれるものがあります。
それも、アジア人特有の感性と言うか、ハリウッドでは得られない味わいに。
しかしこの作品は、濃密な人間関係に加えて、未来への希望を得るため、それも自分の為ではなく、愛しい人たちのために成し遂げる男の生き様を描いていて、何というか、己を貫いた先にあるものを想定しているのが、散り際の美しさを描くノワール物とは違う感動を生み出していると思いました。
個人的には、大好きなポンちゃんがまさかのアクション俳優として映画界で大頭してきた事への驚き、更にここ近年すっかり香港映画の顔とも言えるようになったニック・チョンが、アラフィフで総合格闘技の選手たる肉体改造を成し遂げた姿が、この作品で演じる役と重なり、更なる感動を覚えました。
また、ダンテ・ラムの演出の手腕として、登場人物に厚みと深さを与える街の風景、音楽、それらが決して過剰ではなく、しかし的確に物語を彩っている。
この作品では、サイモン&ガーファンクルの「サウンド オブ サイレンス」の女性ボーカルによるカバー曲が、本当に、ここぞ!という場面で使われていて、このセンス素晴らしすぎる!と唸らせられます。
特筆すべきはまだあって、シウタンを演じるクリスタル・リー!この子が、本当に上手い!
ダンテ・ラム作品では、「証人 ビーストストーカー」の誘拐される女の子もとても素晴らしい演技をしていましたが、子役にも妥協しない心意気と、それに応える才能もこの映画の評価を上げていると思います。
この作品の演技でニック・チョンはアンソニー・ウォンやルイス・クー、ラウ・チンワンを抑えて影帝に輝きました。
更に、台湾のアイドル俳優から飛躍したポンちゃんの姿にも感慨深いものがあり、個人的にかなり思い入れの深い作品となりました。
やっぱり、香港映画は良い!その事を再認識させられた、実に素晴らしい作品でした。
まあ、文句も多少はあります。
あれだけの怪我を追ったポンちゃんが、ラストですっかり回復してしまっていたのはどうかな、とか。
せめて、さらに濃密なリハビリ生活を描いてくれても萌え要素に拍車がかかって良かったのになー!なんて。
そう、スーチーとファイの二人には、かなり萌えます。
ポンちゃんが従来持っている人懐っぽさ、犬コロ感が、この作品では存分に発揮されているのです。
スーチーは、家が富豪であった時でも、財産目当ての友人や女性たちには決して心を開かず、わりと孤独な奴でした。
それなのに、ファイへの凄まじい懐きっぷりは、実はスーチーはゲイなのではないかという憶測まで感じてしまったのですが、そう思わされるようなサービスシーン(?)もちゃんと用意されているので、そういうのが好物な人への需要もある映画であることはここに記しておかねばならないと思います。
はー、長くなってすいませんでしたー!