クレオの夏休み 2024.8.10 ヒューマントラストシネマ有楽町2 | ギンレイの映画とか

ギンレイの映画とか

 ギンレイ以外も

 ナニーが戻る場所はどこだろう。アフリカの海岸のあるポルトガル語を話す国のようだ。アフリカはフランス語か英語だと思っていたが、ポルトガルも植民していたのか。やるなポルトガル。こうして私のささやかな知識が増えていく。

 

 ナニー、乳母は聞き慣れないし、そんな人見たこともない。身近にいたためしが無い。戦前の裕福な家庭には女中と共に、子どもの面倒を見る専門家として乳母がいた。昔の映画で彼女らの存在は知っていた。ただ私の近くにはいなかった。知ってはいてもいない人、不思議な存在。まして外国のこと、こういう例はまだありそうだ。

 

 6歳のクレオにとってナニーのグロリアは母親だ。グロリアにとってクレオは故郷にいる実の息子の身代わりとも言える。子への愛情を全てクレオに注ぐ、そんな気持ち。ナニーは仕事だけど、子育ては仕事じゃない。仕事以上の熱量が必要だ。でも一歩引かなければならないこともある。

 

 いわば出稼ぎではるばるパリに来ている。自分が本来いるべき場所はここではない。家族がいる場所、そこからお呼びがあれば戻らざるを得ない。仕事を打ち切って戻れば良い。だけど簡単に気持ちを入れ替えるのは難しい。工場で製品を作る仕事なら、代わりはいくれらでもいるし、離れられる。

 

 でもクレオはどうなる。毎日めんどうを見て、これだけ大きくなった。この先も見ていたいと思う。まるで我が子と別れるような気持ちだ。それはいい、仕方ないことだ。問題はクレオのことだ。

 

 クレオは気配を感じた、グロリアが行ってしまうと。

 事情は聞いた、もちろん分かる。時が来た。

 別れはつらい。つらくてもやってくる。

 解決はある。クレオが解決させた。グロリアのところに行った。

 言葉が通じない。慣れるしかない。でも慣れない。

 世界が変わった。そこはパリではなかった。とまどった。

 元気な男の子に混じれない。ひ弱な自分を意識する。

 思いきって飛びこむ。目がまわる。

 助かった。

 

 世界は変わった。でも別れはある。これが世の中の定めだ。無理を通すのにも限界はある。それを身をもって知ったクレオ。

 

監督 マリー・アマシュケリ

出演 ルイーズ・モーロワ=パンザニ、イルサ・モレノ・ゼーゴ、アブナラ・ゴメス・バレーラ、フレディ・ゴメス・タバレス、ドミンゴス・ボルゼス・アルメイダ

2023年