座頭市は見たことがなかったので、いちおう見ておかないといけないかなと思った。痛快な部分も少しあったが、おおむね暗くて辟易。一本見たから座頭市はもういい。
暗い原因は平手御酒のためと思われる。演じるのは天地茂、この役にぴったり。座頭市はずいぶん若く精力がありそう。今回のフィルムセンターで上映された60年代の日本映画は私がまるで見ていない頃のもので、しかもこの映画のように有名なのがあって、それでもどうしても見たいと思わせるものがなくて、行こうかどうか迷うことが多い。
これで50年代とかそれ以前だと無条件で見たくなるのはどうしてだろう。日本映画の内在する力が60年代にはすでになくなっていたのかどうか、きちんと見ないで何を言うかと思われるかもしれないが、行く気を起こさせる映画という点では現在の日本映画が一番なくなっていると思うし、それならまだ60年代には少しはあったと思う。こうしていくらかでも見に行っていることがその証拠にもなっている。誰に対して証拠立てているわけではないが、強いて言えば自分に対してだ。
座頭とはどういう意味か、盲ということかあるいは按摩ということか。とにかく彼はめっぽう腕が立つ、だから表面上は下手に出ているようでいて、腕には自信があるからどんな危険なところへも出向いていく。映画の主人公はほとんど死ぬことはないから無鉄砲なのだ。たまに死んだりすると意外に感じるし、主人公は死んではいけない。
でもこの映画の主人公のように絶対に死なない決まりになっているのは先が読めて面白くないこともある。決闘しても勝つに決まってるから安心、これではスリルがない。特に今回は相手が平手御酒だから、彼は自滅するに決まっているし、実際にそうなる。敵味方に別れているといっても表面上のもので、それぞれに付いているのは一時のものでしかない。やくざの出入りの手助けみたいなものだから、ぜんぜん危機感がない。なんだろう、この映画は。重く陰鬱な印象に終始していて見ている者の気持ちも沈む。娯楽に徹するなら明るいのがいい。
監督 三隅研次
出演 勝新太郎 万里昌代 島田竜三 三田村元 天知茂 中村豊 真城千都世 毛利郁子 南道郎 柳永二郎 千葉敏郎 森田学 舟木洋一 市川謹也 尾上栄五郎 山路義人 堀北幸夫 福井隆次 菊野昌代士 越川一 志賀明 浜田雄史 愛原光一 西岡弘善 木村玄 千石泰三 谷口昇 細谷新吾 長岡三郎 馬場勝義 結城要 淡波圭子 小林加奈枝
1962年