ワン・セカンド 永遠の24フレーム 2022.5.30 TOHOシネマズ シャンテ3 | ギンレイの映画とか

ギンレイの映画とか

 ギンレイ以外も

 中国、1969年。砂漠を歩く一人の男、彼は強制労働所を抜け出し逃亡者となって、ある映像を見るべく上映場所を探していた。

 

 張芸謀は生きていた。オリンピックといい、最近の作品と言い、張はもうすでに往年の彼ではなくなったかと思っていた。つまり「紅いコーリャン」「初恋のきた道」などの、特に「活きる」のような国内上映禁止になるような作品は作らなくなっていた。もちろん映画は途切れることはなく作っていた。「HERO」「LOVERS」などで儲けた金を作りたい作品に回す、よくあるパターン。今作はどちらだろう。

 

 映画の話で、タイトルは1秒間、フイルムにすると24コマだ。そこに写る自分の娘の姿を見るのために奮闘する父の話だ。これは期待できる。問題は出来だ。

 

 強風吹き荒れる砂丘を歩く男、風が次第に落ちついてくる。彼の目指すところは決まっているようだ。

 

 中国の広大な大地は移動にも大変な労力がいる。彼はどこから来たのだろう。「妻への家路」を思い起こした。政治犯の入れられる施設だ。中国にはそういう人の入る監獄がある。

 

 反政府活動は犯罪になる、これがわからない。なぜ現在の政府に反することを企み、発言、行動したものを取り締まるのか。よほどそういう活動を恐れているのだ。自分たちの政治に自信があれば、そんなことをする必要は無い。むしろきちんとした批判をもらって正せばいいだけだ。ありがたい発言ではないか。それを吟味することなく頭から取り締まろうとし否定する。独裁者のやる事はいつでもどこでも同じだ。

 

 中国を始めとする独裁国に暮らす人々が気の毒だと思う。ロシアの現状を見よ! 1人の独裁者が戦争を起こした。こういう例は過去から現在そして未来もなくならないだろう。しかも日本にも危機が迫っている。

 

 この映画は表面だけだとわかりにくい。解説をつけるか何かで説明してくれないとわからない。それが不満だ。それがこの監督の現在の位置を示している。発言しているが語っていない。わかる人にはわかるが現場を知らない人には伝わらない。

 

 映画は何も知らない人にも伝わらないといけない。現代の中国人にはどう伝わるのだろう。年配者はわかるが若い人にはわからないかもしれない。中国国内で弾圧がある事は知られていないと思う。マスコミは政府が握ってコントロールをしているからだ。ニュースやSNSインターネットは操られている。

 

 そんな中で中国の映画がつまらなくなっている。現状を肯定して、良い事は政府の功績とするような、そんなのばかり。これは日本映画も同じようなかんじ。映画ではアメリカ映画はきちんと発言するものがある。多くの娯楽作と一部の良心作がある。アメリカに自由はあると言える。

 

 世界の体制を2つに分けるのは無理がある。資本主義と社会主義といっても、資本主義は超資本が跋扈して、正しい資本主義の体裁をなしていない。社会主義を名乗る国がいくつかあるが、まともに機能している国はない。中国キューバベトナム北朝鮮など産業と民主主義が十分に発展していない国で社会主義を目指すのは無理がある。

 

 実験するなら中国が1番だ。もし本気で中国が本当の社会主義を目指したら成功するだろう。しかしその気がない。資本主義を基にした社会主義=独裁をこれからも進めるつもりだから、うまくいかない。国民を押さえつけ政府に従わせることしか考えていないからだ。やる気になれば世界初の社会主義国家が成立するのになぜしない。

 

 私は以前世界の中で社会主義が最も遅れるのはアメリカと予測したことがあった。これを訂正する。アメリカは案外早く体制を変革するかもしれない。といっても100年か200年はかかるだろうが、中国のような大回り遠回りする間を縫ってアメリカが先を行くことになるだろう。日本もアメリカにならって欲しい。

 

 映画館が常設であるのは都市に限られる。映画を見るところと観客数は比例している。大都市にはいくつも映画館があるのに田舎にはない。そこで映写機とフィルムを持って移動上映会がある。夏休みに学校の校庭で上映会があった。楽しいお祭り気分だった。今もやっているところはあるのかなぁ。

 

 中国のそれはかける映画も中国独自だ。いわゆるプロパガンダ作品が上映されて大いに人気があった。これって本当かな。中国の英雄に拍手喝采は、日本で言うとチャンバラ映画で正義の味方に拍手喝采するようなものと同じだ。

 

 中国にもこんなんじゃなくて、もっと叙情的な素晴らしい映画があるのだから、そんなのも上映されたと思う。今回上映されるのは英雄少女と言うので、勝った勝ったの素晴らしい英雄譚。そうそう彼の見たいのは本編ではなくニュース第22号だ。そこの労働者の働きを見せる部分で、娘が一瞬映る。1秒間だ。

 

 映画館でニュース映画も併設上映されていた。私は思い出せる。毎日新聞ニュースなんてのもあった。テレビの台頭でなくなったと思う。ニュース映画だけ上映する映画館があったらしい。

 

 映画館の映写室に潜り込みたい。映写技師の話って案外あって「ニューシネマパラダイス」は有名だ。映画と毎日接していて、客の様子も見える。もちろん映画そのものもよく知っている。映画を作るわけではなくても接する数では監督もかなわない。

 

 ここに出てくる映画の技師は上映権が彼個人にあるかのようだ。彼が動かなければ上映が始まらないからだ。だから威張っている。この上映会とそこに入り込んだ1人の男のニュース映画の上映希望の間で、彼は自分の役目を存分に大衆に見せつける。自分の働きがどれだけ重要かつ不可欠であるか。ニュースフィルムが事故でダメになりそうな時、彼の発言行動は他力本願だったが自己満足を確保した。ここで自分を売る良い機会と捉えた。中国社会主義は個人の欲望で成り立っている。下っ端からトップまで皆そうだ。

 

 だけど上映会が終わった後に観客1人のために何度もニュースを回したのは彼の優しい心根と見て良い。このことを知っているのは2人だけ。彼の自己欲を満たすだけでは無いところがよかった。

 

 テーマは監督の自家薬籠の映画のことで、十分に素敵な作品になる条件は揃っている。それなのに狭い範囲の縮こまった話になっている。中国の政治がそうさせたのだろう。あれだけの監督が、いやあれだけの影響力のある監督だからこそ狙われたと言える。自由な創作を望む。

 

監督 张艺谋

出演 张译 刘浩存 范伟 余皑磊 李延 张邵勃 唐孜悦

2020年