花よりもなほ 2020.8.22 長瀬記念ホールOZU | ギンレイの映画とか

ギンレイの映画とか

 ギンレイ以外も

 元禄15年、切腹した主君浅野内匠頭の仇討ちをするかどうかで世間の注目を集めていた赤穂浪士は、どこで何をしているのだろう。

 

 いっぽう江戸の長屋に1人の若者がいた。彼の名前は青木宗左衛門と言い、信州の松本から江戸にやってきて、貧乏暮らしをしながらも江戸に留まって、父親の仇討ちを果たすため目指す相手金沢十兵衛を探していた。しかし中々見つからず月日だけが経って早2年。

 

 この映画の存在すら知らなかった。しかも松竹で時代劇。松竹マークの時代劇は最近では山田洋次と相場が決まっている。山田洋次は監督の経験も実績も抜群にあるし、時代劇はいくつもある。比べるのは双方に失礼になるが勝敗は明らか。

 

 ホールの名はOZUというのも何かの縁か。長瀬さんの思い入れだろうが、恥ずかしくないのだろうか。ネーミングライツの悪い例だ。それはさておき。

 

 人探しの侍といい紙くず屋の二人組といい、喜劇的要素の詰まった壊れ長屋の佇まいといい、山中貞雄「百万両の壺」を彷彿とさせられる。主役は仇討ちで江戸に来ている。仇討ちは成し遂げなければ戻れない。成し遂げなければならない業を背負った宗左衛門。仇討ちの相手が江戸にいるかどうか、まさに10年かかるか20年かかるか、のセリフも百万両と同じだ。

 

 江戸は赤穂浪士の仇討ちの噂で持ちきりだった。あれだけの出来事の後始末がなければ気がすまない世の中。きっとやるであろう、から多分やるはずになって、もしかしてやらないかもとなる。しかし武士たるもの、やらないわけにはいくまい。

 

 準備は細々としかし確実に進んでいた。まさにこの長屋にいた数人の侍がそうだった。赤穂浪士の幾人かが作戦を練っていたが、なかなか実行に至らない。

 

 ねらう相手が一人であるのは、大所帯の浪士と宗左衛門は同じこと。のちの歴史に記されるかどうかは関係ない。世の耳目を集める赤穂と、誰にも知られない仇討ちと言う違いはある。いずれにしろ武士の身分が仇討ちを強制した。望むと望まないとにかかわらず、やらねばならぬ。これは辛いことではなかったか。そう思うのは、封建社会でない現代の人間の思うことであって、当時は当時の規範から外れることはできなかったし、考えることもなかったのかも知れない。だがいくばくかの反発の気持ちが奇抜な作戦の元になったことは確かだ。

 

 赤穂は赤穂でやらしておきましょう。こちらはこちらのやり方がある。いいこと思いついた‼︎  祭りの余興をやってみよう、これいいアイデア。

 

 実際にやらなければ完結されなかった赤穂の面々と比べて、青木宗左衛門はある方策で切り抜けた。赤穂浪士は喝采を受けたが無駄死にだった。武士なんかになるもんじゃない。

 

監督 是枝裕和

出演 岡田准一 宮沢りえ 古田新太 香川照之 田畑智子 上島竜兵 木村祐一 加瀬亮 千原靖史 平泉成 絵沢萠子 夏川結衣 國村隼 中村嘉葎雄 田中祥平 田中碧海 木村飛影 ひろみどり 井内菜摘、 村山嵯都子 石橋蓮司 寺島進 遠藤憲一 田中哲司 中村有志 勝地涼 石堂夏央 トミーズ雅  南方英二 浅野忠信 原田芳雄

2006年