寓話:通り魔の話 | 銀のスズメバチ

銀のスズメバチ

失敗作 欠陥品 不良品 劣化レプリカ
ってなじられてきましたが
ひとりみつけられたらもうそれでいいのです

To be alone is to be different.
To be different is to be alone.

Suzanne Gordon

2011年11月05日開始


超絶短編です。
やっつけ。推敲なし。校正なし。3コンボの オワタ小説です。
童話みたいなもんですね。


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昔々、とある国に何人も殺して捕まった通り魔がいたそうな

その知らせは国中を駆け巡り、人々は彼の所行を非人道的だと騒ぎ立てたそうな
そんな人の道を外れた人は死んだ方がいいとか
それでも人間だから裁きを受ける権利はあるのだとか
あらゆる人が人道的観点からあらゆる意見を述べたそうな

そして彼の経歴は何者かに洗いざらい晒された
正義に燃える民衆に彼の血縁だと暴かれたある娘は
住まいを荒らされ毎日のように嫌がらせを受けることとなった
生きていくのがつらくなった娘は逃げるようにそこから消えた
髪を切り落とし名を変えて隠れるように生きようとしたが
それでも正義の名の下に民衆の目は彼女を探し出し、その居場所を晒す
耐えかねた娘はついに命を絶ってしまった

彼女に会ったこともない人たちは口々に
娘がかわいそうだとか仕方ないとか当然の報いだとか
家事の片手間に噂をしていた

かくして通り魔が裁きの場に立たされる時がきた
沢山の人の命を奪ったのはまぎれもなく事実であり
そこに然したる事情も斟酌の余地もない
単純な快楽殺人だということが彼の口から談笑のように語られた

傍聴していた人達からは怒りの声が上がった
人の道に外れし者には最高の罰をと
気が狂うほどの拷問と苦しみの中での死を与えよと
それに対し人道的観点から
どんな人間も命を奪われるいわれはないのだから
死刑にせず生きて償わせるべきだという人が声をあげた

家族の気持ちを考えたことあるのかと反論する者
たとえ自分の家族が被害者でも自分は死刑を望まないと言い返す人
何を言おうがたった今彼らは当事者ではないことだけは確かだった

世論はさておき、司法の場では彼に死刑が宣告された
あまりに残酷なことを繰り返してきたため
怒り狂った人々は口々に公開処刑を求めた
しかしどんな悪人でもやはり人なのだから
苦しみを最小限にした死刑に処するのが人道だろうと
数日にわたり「人道的な死刑の方法」についての会議が行われた

薬で眠るようにというのはどうだ?
あれでは死んだかどうかわかりにくいから納得されないのでは
古くからあるギロチンは人道的だというがどうだろう?
いやあれは首が切られた後も少しの間意識があるらしい
それより絞首刑はどうだ?気持ちいいらしい…

そんなことが国のお歴々によってまじめに会議で語られた

最後に決まったのは薬で眠らせた上での斬首刑
これならあまり苦しまないだろうし観衆も溜飲を下げ納得するだろうと


死刑執行の日
死刑台に上がった通り魔の男は笑いながら言った

おまえたちは何日もかけて俺の殺し方について
真剣に議論していたそうじゃないか
俺も獲物を殺すのにどんな風に殺してやろうかと
一人で何日も考えを巡らせていたものだ
気持ちはよく判るぜ、同類!

それを聞いた斬首役の執行人は
薬を飲ませる前に有無を言わさず男の首を切り落とした

執行人は形ばかりのお咎めを受け
この事件はそのまま忘れ去られてしまったそうな


おしまい。