不適格者【7】 | 銀のスズメバチ

銀のスズメバチ

失敗作 欠陥品 不良品 劣化レプリカ
ってなじられてきましたが
ひとりみつけられたらもうそれでいいのです

To be alone is to be different.
To be different is to be alone.

Suzanne Gordon

2011年11月05日開始


【7】眠りの森のミハル



ミハルの葬儀の日には、たくさんの人間が訪れた。
会社の同僚や、同窓生たち。過去の担任の先生……



みな、喪服を着て、数珠を持って、形どおりに葬儀に参列した。

…涙を流して悲しんでいる人間は、家族を除いて一人もいなかった。


僕は……悲しかったのか、悲しくなかったのか…

進行してゆく葬儀をただ、ぼんやりと見ていた。


火葬されたミハルの遺骨は、ほとんど原形をとどめていなかった。

さらさらとした……きれいな白い砂のようだった。


遺骨は、ミハルの遺言で、見晴らしのよい海辺の崖から、
そっと海へと送り出された。

白い砂になったミハルは、吹き渡る風とともに旅立っていった。





きれいな青い空の下、ミハルが送り出された海辺の崖の上───

僕は一人、ずれたイヤホンを充てなおしながら、
軽く目を閉じてある歌を聞いていた。

ミハルが、小さい時に歌ってくれた歌。
僕の苦しみが軽くなるように、隣で歌ってくれた歌。

ミハルへのプレゼントを探しに入った店で、偶然CDを見つけて買ったものだ。


透き通るような歌声で、無名の女性ボーカリストが必死に歌う。


優しく…悲しく…苦しく。
でも、とても力強い言葉で…


結局のところ、ミハルの死因は解明されなかった。

誰一人、痩せ細った理由に思い当たる人物はいなかったし、
みながいろいろな解釈をし、勝手な納得をして、
真相はゆっくりと消えていった。

でも本当は。 僕だけは。

ミハルが痩せ細って死んだ理由を知っていた。



…ミハルが教えてくれたから。