【7】眠りの森のミハル
ミハルの葬儀の日には、たくさんの人間が訪れた。
会社の同僚や、同窓生たち。過去の担任の先生……
みな、喪服を着て、数珠を持って、形どおりに葬儀に参列した。
…涙を流して悲しんでいる人間は、家族を除いて一人もいなかった。
僕は……悲しかったのか、悲しくなかったのか…
進行してゆく葬儀をただ、ぼんやりと見ていた。
火葬されたミハルの遺骨は、ほとんど原形をとどめていなかった。
さらさらとした……きれいな白い砂のようだった。
遺骨は、ミハルの遺言で、見晴らしのよい海辺の崖から、
そっと海へと送り出された。
白い砂になったミハルは、吹き渡る風とともに旅立っていった。
きれいな青い空の下、ミハルが送り出された海辺の崖の上───
僕は一人、ずれたイヤホンを充てなおしながら、
軽く目を閉じてある歌を聞いていた。
ミハルが、小さい時に歌ってくれた歌。
僕の苦しみが軽くなるように、隣で歌ってくれた歌。
ミハルへのプレゼントを探しに入った店で、偶然CDを見つけて買ったものだ。
透き通るような歌声で、無名の女性ボーカリストが必死に歌う。
優しく…悲しく…苦しく。
でも、とても力強い言葉で…
結局のところ、ミハルの死因は解明されなかった。
誰一人、痩せ細った理由に思い当たる人物はいなかったし、
みながいろいろな解釈をし、勝手な納得をして、
真相はゆっくりと消えていった。
でも本当は。 僕だけは。
ミハルが痩せ細って死んだ理由を知っていた。
…ミハルが教えてくれたから。