あれから一年…今聴いてほしいCD二題 | 釋辰量の芸能・音楽の50!

釋辰量の芸能・音楽の50!

あっしことデハ712こと釋辰量が主に芸能・音楽についていろいろと書き殴っております。

東日本大震災から一年が過ぎました。


発生当時の混乱を経て、現在ではさまざまな形での復興支援が行われています。行政と政治は保身と党利と政争に明け暮れて復興への取り組みが遅々として進まない中、アーチストやアスリート、果てはお笑い芸人までもが被災者を元気づけようとさまざまに活動しています。


そんな中で迎えた震災一年。あっしは2つのCDをご紹介したいと思います。


MUSIC FOR SENDAI(仙台フィルのためのコンサート)

釋辰量の芸能・音楽の50!



これは、震災で大きなダメージを負った仙台フィルハーモニー管弦楽団の支援のために、ドイツのベルリンで活動している日本人オーケストラ奏者有志によって企画、2011年9月9日に行われたチャリティコンサートのライヴ録音です。当日の収入は全て仙台フィルに贈られ、またこのCDの収益も寄付されます。

なぜこのCDをご紹介するかというと、出演者の中に、ベルリン・コーミッシェオーパーで活躍中のオーボエ奏者、真坂亮一君が参加しているからです。

実は真坂君はあっしの中学校の後輩であり、一時はあっしが今も所属する吹奏楽団で共に演奏した仲間でもあります。

中学時代、そして楽団所属時代はトロンボーンを吹いていましたが、一念発起してオーボエに転向して研鑽を積み、武蔵野音楽大学を経て現在ベルリンで活躍しています。

あっしは真坂君がこのような形で震災の復興支援に立ち上がったことに感銘し、それほど暖かくはない懐をはたいて即購入しました。

真坂君のほかにも、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターに就任した樫本大進さんをはじめとした奏者のみなさんが、篤い思いをこめて演奏しています。単なる企画物ではない素晴らしい演奏です。ぜひお買い求めいただいて、当日の出演者の思いをさらに広げていただきたいと思います。


もう一枚はこちら

J.S,バッハ:ブランデンブルク協奏曲(全6曲)


釋辰量の芸能・音楽の50!

これは、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサートマスター、ゲヴァントハウス減額四重奏団のリーダーとして活躍され、ゲヴァントハウス退任後は日本に移住され、教育、演奏の両面で活躍されたゲルハルト・ボッセ先生の演奏です。
先生は今年2月1日に90歳でその生涯を閉じられました。晩年は指揮者として新日本フィルハーモニー交響楽団で主にバロック、古典期の作品を中心に活躍されました。今はなきお茶の水カザルスホールでの室内オーケストラ編成での公演やすみだトリフォニーホールでのチェンバー・シリーズなど、あっしは何度もその引き締まったそして滋味あふれるアンサンブルを楽しませていただきました。

そして何といっても2002年に行われたベートーヴェンの交響曲全曲演奏会。あっしは皆勤しました。先生の長年のわたって培われた経験と、新しい研究成果に基づく清新な解釈が相俟った素晴らしいチクルスでした。この公演はすべて映像に収められ、DVDになっています。

そして、晩年の先生が最も力を入れておられたのが神戸市室内合奏団の育成でした。1998年に首席指揮者、2000年に音楽監督に就任して以来、この楽団をみっちりと鍛え上げ、日本を代表する室内合奏団に育てたのです。

このCDは、90歳を目前にされた先生が手塩にかけたアンサンブルで、これもまた先生の自家薬籠中のバッハの傑作の全曲演奏に挑まれた演奏会のライヴ録音です。

演奏会が行われたのは2011年3月10日。東日本大震災の前日でした。そして、3月12日には東京での公演が予定されていました。

2011年3月11日14時46分、東日本大震災発生、その時先生は東京に向かう新幹線の車内におられました。京都の手前で緊急停車した列車は名古屋で打ち切り、先生は大阪へ引き返しました。当然公演は中止となり、その後先生が体調を崩されたため、東京での再演はついに果たせぬまま先生は亡くなられたのです。

この全曲公演は、先生の80年を越える音楽活動の集大成となりました。客演ソリストには先生とのご縁が深い奏者が集結。新日本フィルの首席奏者として今も活躍を続ける白尾彰先生(フルート)、今や日本を代表するオーボエ奏者である古部賢一さん、先生が事実上主宰されていた霧島国際音楽祭の常連である高橋敦さん(トランペット)を筆頭に素晴らしいアンサンブルを展開しています。そして御歳89歳とは思えないスタイリッシュな指揮…

先生もその演奏には満足されていらしたようです。ライナーノーツにはこの世を去る1ヶ月前の先生の手記が掲載されていますが、東京公演が実現できなかったことの無念と、神戸公演での演奏の素晴らしさ、そして大震災の被災者への祈りで結ばれています。

実際の演奏も実に素晴らしく、我々日本人に古典音楽の素晴らしさを伝えてくださった先生の思いがあふれています。

これもぜひこの時期に、いやこの時期だからこそ聴いていただきたい1枚です。