日本の詩人、日夏耿之介さんのゴシック・ローマン詩體の荘重幽玄な短詩を1つ紹介


愁夜戯楽第七番

薔薇笑きぬ
その罪 紅し矣
小夜ゆく鐘に
夢みだれ
若き樹の間を
ああ 今宵の月、熱をやむ 
注 : 宵の旧字体はマイクロソフトのIMEには存在していないので新字体を使う。


以下、平仮名書き
ばらさきぬ
そのつみ あかしかな
さよゆくかねに
ゆめみだれ
わかきこのまを
ああ こよいのつき ねつをやむ 


私の青春期に日夏耿之介さんを知り、文庫本を買ってきて詠むのですが、漢詩の如き難解な漢字(見た事も無い漢字が溢れている)の多用と、複雑な語彙やリズムを駆使した詩を詠むとき、悪戦苦闘したことを懐かしく思い出します。




日夏耿之介(ひなつ こうのすけ、1890年〈明治23年〉2月22日 - 1971年〈昭和46年〉6月13日)は、日本の詩人・英文学者。本名樋口 國登(ひぐち くにと)、通称は「圀登」の字体を愛用)。号は夏黄眠、黄眠道人、黄眠堂主人、聴雪盧主人、石上好古、溝五位など30数種類存在する。広範な学識と多岐にわたる文学活動で「学匠詩人」と称される。
詩人としては自らゴスィック・ローマン詩體と称す高踏的で荘重幽玄な詩風であり、その神秘主義的な象徴詩は他に類をみない個性を放っている。また、訳詩や文学論考、随筆などの幅広い著作があり、明治大正期の文学論でも知られる。

佐藤正彰(解説者)
どの頁を開いてみても、見慣れない文字、特殊な訓、異様な語句、風變りな措辞、語彙を和漢洋から汲み、體を雅俗から取ったこの詩の「形式」が、のつけから、葷酒山門に入るを許さずと云った風に、この「ゴシック・ロマン體」の大伽藍に、 濫りに人を近づけない概がある。

 

時代は前後しますが、蒲原有明(かんばら ありあけ、1875年(明治8年)3月15日 - 1952年(昭和27年)2月3日)さんの詩は、日夏耿之介さんと比較すると難解な漢字は少な目で、文語体のひら仮名を使われているので読みやすかった。
またソネット(14行詩)形式の詩が多いのも、蒲原有明さんの詩の特徴です。
記載内容に勘違いが有ったので、2024年2月12日に訂正する。