一部の方のコメ返で3話構成とか言ったんですが、収まらなくて4話になりました!
「晩ご飯いらないからー。」
なんて言い残してひらひらとこちらに手を振ってから夜に出ていき、大体深夜に帰って来る潤。
大体週に3〜4回ってところだろうか。
行き先を聞いても誤魔化されるだけ。
そんなことが数回続き、ついに気づいた時には言葉も出なかった。
首筋についた紅い痕。
毎回違う知らない香水の匂い。
「着替え出してなかったわー。」なんて呑気に言いながら、半裸で歩き回っている時に見えた背中の引っ掻き傷。
よく恋愛には疎いと言われてきた俺でも、こんなにたくさんのヒントを突きつけられれば流石に気づく。
俺と潤、付き合っているはずなのに。
バーで一目惚れした日、告白して付き合い始めた日、どれもつい最近のことのように覚えている。
確かに付き合っている。そして今があるはず。絶対絶対、忘れてなんかいないはずなのに、
目の前で美味しそうにご飯を頬張る潤に、なんとも言えない絶妙な気持ちが湧いてくる。
…顔はいいのにろくでもないヒモで、恋人という存在があるにも関わらず色んな相手を取っ替え引っ替え。
ストレートに言うのなら、彼は正真正銘クズ男なのに、俺が彼に惚れているせいで別れるなんてもっての外なのだ。
誰がどう見ても、辛いのは俺だけなのに。
「ねえ潤、」
「ん?」
「あとでさ、セ ックスしような。」
「ん"んっ、!…ぅ、びっくりしたぁ。
…ちょ、急にそんなこと言わないでよ。ご飯吹き出すとこだったしょ。」
あっぶねー。なんて声を漏らしながら潤は続ける。
「へぇ………どしたの急に。」
じっとこちらを見た顔は、さっきの潤とは違う。
全て見透かすような視線、相手を隅から隅まで見尽くすような。
きっとこの顔は、他のどの相手にも使っているんだろう。
…無性に腹が立った。
「…あー…あとでじゃなくて、やっぱ今からがいいな。」
そう言った俺の顔は、恐らくニコリとも笑っていなかっただろう。
潤の返事を聞かぬまま、俺は立ち上がって彼の元へ。
「え?まって、ごはん、」
「別にいいよ、」
「や、口だって…。」
あたふたする潤に思わずため息が漏れる。
かわいこぶってんのかな。
潤を抱いているのは俺だけだから、かわいこぶれるのも俺の前だけだもんね。
まぁでも…それが浮いたものじゃなくてちゃんと可愛いんだから…やっぱ俺も俺だよな。