「ここでいいの?」


気遣うようにふっと笑った翔さんが悔しくて、「いい。」とぶっきらぼうに返す。


そこから、ソファーという狭い場所で始まってしまった。


…いや、「しまった」だなんて。心のどこかでこうなることを望んでいたはずだろうに。





ーーー


狭い場所ではどうも体の可動域は制限される。ある体勢が強制されることも多く、翌日には体が嫌な痛み方をしていた。


「はあ、、」


ため息もシャワーの水音に消えていく。
昨日俺はどんなことを口走っていただろうか。大して覚えていない。かつ、翔さんも昨夜のことなんて大して話さないだろう。

ただ残るのは、ソファーが汚れないようにと引いたであろうタオル。ゴミ箱に捨て損ねたティッシュ。使い終わったローションのボトルまで転がっていた。




シャワーを浴び終えてリビングへ戻ると、翔さんが
後片付けをしていた。

寝癖のついたぽやぽやの頭をした翔さんが、こちらに気づいて「おはよう。」と笑いかける。


「…ごめん。」


「えっ?なにが?」


「いや、、なんか…色々変なこと言っただろうから。」


「なあに、覚えてないの?」


寝起き特有のぼんやりとした空気を纏う翔さんが、ふにゃふにゃと笑った。


「…なんとなく、しか、」


「そっか。
でも、、可愛かったから大丈夫だよ。」


「俺は大丈夫じゃ、、、」


もごもごする俺に対し、翔さんは「あ、そうだ。」となにかを思い出したかのように顔を上げる。
俺が一体なんだろうと首を傾げる間に、スマホを手に取った。


「見て見てこれ。」


ぱっと目の前にスマホの画面を向ける。
そこに映っていたのは薄暗闇の中、仰向けになっているであろう俺の顔。額には汗をかいていて、前髪は貼り付いて乱れている。

これがなにかと聞かなくても、状況の判断だけはすぐについた。


「…えっ?」


どうやらそれは静止画ではなく動画のようで、翔さんはなにも言わずに画面をタップしてそれを再生した。


「…で、?だれが欲しいの?」


「ん、っ…しょおさん、、、」


「おれ?っ、もう十分じゃないの、、、?」


「、、ち、がぅ…おれ、だけの、モノになって、っ……、」


「ん〜?もっと、っ、ちゃんと言ってよ、」


「、ぅ、、だぁから、、!おれの、モノになって、、おれ、が、欲しいモノ、は、しょおさん、だか、っらぁ、、しょお、さん、だけ、だからぁ、、」


半泣きのぐちゃぐちゃの顔で、微かに揺れる身体と、うっすらと耳に入る水音。肌のぶつかり合う音。翔さんの荒い息遣い。

喘ぎ声混じりの俺を、カメラはしっかりと捉えていた。


「ふふ、、ほんっと、、、嬉しいこと言ってくれるじゃん…、、」


最後に小さく「よく出来ました。」という翔さんの低い声がして、動画は終わった。


「…。」


この感情はなんだろう。

怒り?
いや、翔さんにこういう面があるのはもう散々理解してきたつもりだ。だから今更別に、、

羞恥?
そりゃ恥ずかしいけど、でも翔さんに見られるなら何とも思わ、


「…ない訳ないだろ、、っ!!」


「うお、びっくりしたあ。」


「はぁ、、ほんっと。。まだそういう趣味あったんだね。」


「いやいや待て待て。これ潤から言い出したんだよ?」


「は?」


「本当。

撮って。ずっと残して。

って。」


「…俺が?」


「うん。」


…嘘をつかれている?でも翔さんはとても嘘をついているような態度じゃない。

ってことはマジで、、


俺は静かに頭を抱えた。


酒は呑んでもなんとやら。

って、そんな大量に呑んでもいないような。
まぁでも、酔うスピードはメンタル面も関係しているらしい。


…こうして付き合ってどれだけ時間が経とうとも、俺の欲しいモノが翔さんであることに変わりはないけれど、