心に違和感を抱えたまま、いつも通り収録を迎えた。

明らかに体調が万全ではなかったJも、カメラの前では一切そんな素振りは見せていない。

翔ちゃんも特にいつもと変わらずである。


…翔ちゃんの謎の嫉妬、、、

ただのメンバーに嫉妬なんてする?

すぐ隣に座っただけで。


まさか2人は…いや、そんなはず、、、


「…さん、二宮さん?」


「え?あ、はい!」


まずいまずい。

考えすぎていてMCの声が一切聞こえていなかった。


「…すみません。」


いつもと明らかに様子が違う俺のことを、メンバー含め色んな人達が心配そうに見ているのが感じられた。


ーーー


「ニノ今日どうしたの?」


収録終わり。

楽屋に戻ってきたところで、Jが俺に声をかけてきた。


収録前に比べたら体調は良さそう。


「あぁ、うん。ちょっと考え事してた。」


「ふぅん。」


「松潤、ちょっといい?」


「ん?あぁ。」


翔ちゃんに呼ばれたJはまた楽屋を出て行った。


…2人は右に曲がっていった、、、


チャンスはここしかない!

そう思って俺もすぐにその後を追った。
















楽屋を出てすぐに右を見れば、奥には翔ちゃんについていくJの後ろ姿。

そして2人はここから数部屋分離れた空き楽屋へと入っていった。


…盗み聞きはよくない、そんなのよく分かってる。

でも、、、


パタンとドアが閉められたのを確認して、俺はこっそりその楽屋のドアに耳元を近づけた。


「…ちょっ…、、、しょおさん………。」


驚いて思わず口元を覆った。


"しょおさん"??!!?!

なにその甘ったるい呼び方!!!


「ね、ダメだってば。。。」


"ダメだってば"??!!?!?


「、、、だって今朝だって…。
俺ずっと、腰痛かったし、、なんか…中途半端で最後まで出来ないまま終わったから、ムラムラして。。。」


"腰痛かった"、"最後まで出来ない"、"ムラムラ"…。


普段のJからは想像も出来ない言葉が次々に聞こえてくる。


ようやく分かった…いや、確信が持てた。


翔ちゃんとJは絶対にそういう関係にまで発展している。


…違和感の正体も無事に分かったことだし、これ以上盗み聞きをしていても意味がない。

けれども長年メンバーとして一緒に過ごし続けている彼らから生まれる恋人としての会話に興味が湧いて、まだ俺は壁際から離れられなかった。


「中途半端って、、、それは潤が空イ キばっかするからだろ。」


…なっ、空○キ…。。。

かっ………あれだよね、あれ。

なんか…出せない、ってやつ、、、


…。。

…、、、


そっ、そういえば、2人きりの時は翔ちゃんってJのことを"潤"って呼ぶんだ。


まぁそうか。

既に彼らは結構ガッチガチの恋人同士らしいし。



…あ、それでいったら、、、この前頭の中に響いてきた翔ちゃんの心の声。

あれ、Jのことを潤って呼んでたな。

あまりにも自然だったから、気にもとめなかったけれど。


「やっ、それは…その、、、」


「じゃあなおさら、今出しといた方がムラムラは収まるんじゃねーの?」


「えっ、こ、ここどこだと思っ、、、、、」


…会話が途切れ、音が聞こえなくなったと思えば、次に聞こえてきたのはJの明らかに善がっているような甘い声だった。
















「…はぁ。。。」


ため息を吐きながら、元いた楽屋に戻ってきた。

流石に最後までそういう声を聞いているのはちょっとね、、、


…えっとつまり彼らは仕事に来る前にどちらかの家で、、、、、うん。

そして収録終わりに空いてる楽屋で今まさに…。。。

お盛んだなぁ、、、高校生みたい。


呆れてソファーに座り込み、テーブルを挟んだ向かいに座っていた大野さんをぼんやりと眺めた。

真剣そうに釣り雑誌を読んでいる。


…大野さんを見ていたせいで、彼の心の声が俺の方にダダ漏れになってしまった。

これ、聞こうという意識がなくても相手を見てたら無条件に聞こえてくるから、そういう点はちょっと厄介かも。


「…ニノって今付き合ってる女とかいるのかなぁ…。翔ちゃんだって松潤を手に入れられたんだから、俺もいつかニノと………。」


「え"、」


「ん?どした急に変な声出して。」


「あ、いや、なんでもない、、」


…心臓がうるさい。


ま、まず2人の関係を大野さんは知っていた。

まぁそれは別にどうってことない。

問題はその次だ。


………どうやら、2人の関係をただ遠くから眺めているだけでは無理そう。。。

自分もこれから張本人になってしまいそうだ。


…。。。

大野さん、、、大野さんがねぇ。。。。。


「おーのさーん。このあと空いてますか?」


立ち上がって雑誌を読んでいた大野さんの隣に移動し、太ももがぴたりとくっつく近さでソファーに腰掛けた。


「、、、え…あ、いや、なんもないけど…?」


「飲みませんか?俺んちで。」


大野さんが俺のことをそう思っているなんて知ってしまうのなら、心を読める変な能力なんていらなかった。

俺だけが心の声が聞こえるなんて、大野さんとの駆け引きをこれからするとしたら、平等じゃないでしょう…?