「…今日この後、な?」


「分かってるよ。」


………2人の間だけで行われている、見えない、聞こえない会話。

ただ見つめ合っただけで、彼らはそんな会話をしていた。


…2人で飲みにでもいくのだろうか。

そんな話は俺らメンバーの前ではしていなかったと思うけど。


でもまだ…昼前だけど。


そうこうしているうちに翔ちゃんは出ていってしまった。

帰る準備が出来ているのに取り残されたJは、相葉さんと話をしている。


そしてその話が終わると、楽屋から出ていった。


2人並んで出ていかないのはなぜだろうか。

なにか用事があるらしいのに。


どこか不審に感じるところはあるが、集まるのは決してこの後すぐとは限らないからな。

飲むならやっぱり夜だし。


「じゃ、俺釣り行くから帰るね。」


「えーいいなあ!俺まだ仕事あるんだよこれから。」


「頑張ってくださーい。」


「ちょ、全然心籠ってないって!」


あはは、なんて笑い声をあげながら、俺は楽屋を出た。


ーーー


1週間が経った。

分かったのは、1週間経った今でも人の心の声が聞こえるのは治っていないこと。


また、心を読めるのはメンバーだけだった。

つまり4人だけ。


全く…随分都合のいい能力だよ。


今日もまた5人でのレギュラー番組の収録だったんだけど、、、

Jの様子がおかしいのは人目見た瞬間に分かった。


なんというか…熱っぽい?


明らかに本調子ではなさそう。

疲れてるのかな。


体調を崩しやすいJのことだ。

まさかまた無理してるんじゃないだろうな。


「じぇーい。
…無理、しないでくださいよ。」


いつもの定位置のソファーに腰掛けるJの隣に行って、隣で囁いた。

スマホゲームをしながらだから、Jに視線を移すようなことはしていない。


けれども、隣からありがとう、という小さな声が聞こえた。


…スマホの画面には"CLEAR!"という文字が表示され、俺は顔をあげる。

ふと正面で新聞を読んでいる翔ちゃんが視界に入ったので、そのままバレない程度に見つめてみた。


「…ったく…ニノ近いんだけど。。。」


へ?


…えっ?

ええっ??

なにそれ、どういうこと?


なんか俺、嫉妬されてる…?


まだあまり状況が理解出来ていなかったが、慌てて俺はJから距離を取って、ソファーの端の方に腰掛け直した。


ちらりとまた翔さんを見たら


「…離れた。。。まぁまだ近いけど、許容範囲かな。」


ドッドッドとやけに早い心拍と、背中を伝う冷や汗。


それを誤魔化すようにして、また俺はスマホゲームを再開した。


…翔ちゃんとJの関係って、ただのメンバーだよね?