突然あんな言葉を言ったのは、きっとニノの気持ちが現れているんだろう。

もしかして、元々タメ口でガンガン距離を詰めてくるような人ではなかったのかな。


自分を変え始めたのもこの仕事のため…とか。


せっかく「松本潤の専属スタッフ」という、店では最も優秀な肩書きを手にしたのに、俺はそれをいとも簡単に掻っ攫った。

そして専属がニノと俺…2人になった潤だけど、きっと潤はもう俺ばかりを、、、いや、俺しか見ていない。

ニノも既にそのことには薄々勘付いていたのだろう。


まぁ、、、もし俺がニノの立場だったら、普通に腹立つよな。

悔しいし、悲しいし、何よりも腹立つ。


こればかりは潤が全部決めていくことだから俺にはどうしようもないし、ニノだってバカじゃないからそれぐらいわかっているはず。

不満が溜まるのはどうしても抑えきれないけれど。


…ニノ、これからどうすんだろう。

どちらにせよ潤が2ヶ月ここに来なければ専属はどちらも解消になってしまうが、例え来たとしてもどちらか1人が2ヶ月以上指名されない場合は、その1人だけが専属解消ということになってしまう。

潤はこのことをきちんと分かっているはずだ。


俺に特別な気持ちを抱いているのかはほぼ確実に近いと思うが、果たしてニノへはどうなんだろう。

本気で切りたいなら、潤はもう二度とニノを指名しないだろう。


ニノ自身に他のスタッフに嫉妬されないようにね、って言われたのに…。


「はぁ…。」


潤が来ない理由は週刊誌に撮られたからなのか、俺のことが好きになっているからなのか。


撮られたのは事実。

何度も言うけど好きになったのかどうかはまだ分からないこと。


1番はまたすぐに潤に会えたらいいんだけど…。


きっと無理だよな。

だって俺らと潤が住んでいる世界は別だから。


ーーー


潤が来ないなら…と、俺も店に行くことがなくなった。

まぁその方が睡眠時間も増えて疲れがとれるから、体の健康的にはいいのかもしれないけれど。


でも潤へサービスを提供するのは、正直めちゃくちゃ楽しかった。

潤も楽しんでくれていたけれど、それと同じくらい俺も楽しんでいたのは事実だ。


だから、前のようにまた店に来て欲しい。

そんな思いが強い。


だけど、、、


ーーー


ー◯日に来て欲しいんだけど、来れる?

数日前にニノから来たLINE。

なにかあるのだろうかと、特に大したことまで考えず、店に久しぶりに来たのだが。


いつも通りスタッフルームに入ると、色んな書類にせっせとペンを走らせているニノの姿があった。


「なにしてるの?」


何気なく聞いただけなのに。


「辞めることにした。」


「…え?」


「辞める。」


「…辞めるって…ここを?」


「ここ以外にどこがあるのさ。」


「、、、いやいや、え、?なに言ってんの?」


「潤くんの専属解消されたんだよ。」


「え、でも…。」


「最後に来た時は翔ちゃんが指名されたから翔ちゃんの首の皮はギリギリ繋がったけど、俺はもう流石にアウト。
…潤くんの専属だったのに降格して一般人相手するとか、正直やってらんない。」


「…。」


ふっと鼻で笑い、吐き出すように言った。