「…夜一切空いていないほど忙しいもんなのかね、俳優って。」
「さぁ。俳優じゃないから分からないよ。」
「あえて来ないようにしてるのかな…。」
「なんで?」
「…なんでって、、、まぁ。。。」
ニノをごまかせるような口は持ち合わせていないが、それでも視線を逸らした。
じーっと、隣から視線が突き刺さるのを感じる。
が、すぐにスマホに戻ったのが横目で見えた。
「えっと…ニノってさ、いつも潤にどんなこと言ってるの?」
「…はい?それ今関係ある?」
「うーん、まぁ…それなりに…。」
「あんまり手の内を明かしたくないんだけど。」
「…。
じゃあさ、『愛してる。』って言ったことある?」
今までスマホに落としていた視線を今度こそこちらに向け、上体を起こしてきちんとソファーに座る形になった。
「…そんなのある訳ないでしょ。」
「そんなのって、、、」
「いくら嘘でも『愛してる。』は可哀想だなって。自分では言わないようにしてる。他のスタッフはどう感じているのか知らないけれど。
どちらにせよ、俺らはアイドルでもなんでもないし。誤解させても嫌でしょ?変に好意抱かれたら終わりなんだから。」
「………そっか。」
俺、「愛してるよ。」なんて言わない方が良かったのかな。
その後の潤からの「俺も、愛してるよ。」っていうの、なんかすごい悲しそうな顔で…、声も少し震えていたように思えるし。
それに、、、初めて挿 入った時も「嬉しい。」って泣いて。
その時にも思ったけど、もしかしたら潤は俺のことが好き…なのかな。
それで…来なくなった?
俺が「愛してる。」なんて言ったことで、余計に辛い思いをさせてしまっただろうか。
…自惚れてるのは分かってる。
あんなイケメン俳優がこんな俺のことを好きだなんて。
でも今までの潤の様子を見ている限り、そういう風に感じとれることが多くて。
「あ、、、」
すると横でニノが声を漏らした。
「ん?」
「………これ。」
ぐいっとスマホの画面を近づけてきたので、画面に表示されている画像を見た。
「え、、、」
そこに映っていたのは、ここの店を出たところで潤とその腰を抱くように支えている俺…、の姿。
俺の顔にはモザイク加工が施されている。
「これって。。。」
「…どっかの週刊誌に撮られちゃったんだね。だから来にくいのかも。
、、、じゃあしゃーないね。こればかりはドンマイとしか言いようがない。」
ふーん、とまるでどこか他人事のように話すニノ。
なんだか少し引っかかってしまった。
「…なにその言い方…。もうちょっと心配してあげてもよくない?」
「心配?
………心配した方がいい?」
「…そりゃそうだろ。撮られたら仕事とか私生活にも影響は出ると思うし、」
「…潤くんはもう俺なんか眼中にないはずだけど。専属という肩書きを、文字通りただ背負っているだけの俺が心配しても別にねぇ。」
「……ニノ、、、?」
「ほんっとに皮肉なものですよね。」
戸惑いを隠せない俺を一瞥すると、スタスタと部屋から出ていってしまった。
バタン、と勢いよくドアが閉められる。
俺はただなにも言えずに立ち尽くすことしか出来なかった。