「…松本さん、これ。」


会議室のような部屋で目の前に座るのは、なぜかやけにかしこまったマネージャー。

そして事務所の社長であった。


なぜ社長がいるのかということも聞けないまま、緊張する俺の目の前に差し出されたのは1枚の紙である。


「…。」


白黒の写真は俺と翔さんと思わしき人が映っていて、翔さんと思わしき人は俺の腰を抱いている。

恐らくこの前の…店からタクシーまでの数mの距離を付き添って歩いてくれていた時だろうか。


上の部分には「人気若手俳優の知られざる素顔?!」とデカデカと面白がるように書いてあった。

…ソッチの感じに見えるように。


そして下の方にはあからさまに盛ったような文章がズラリ。


…ったく、こんな嘘ばかりを書くことを仕事にしてなにが楽しくて誰が得するんだろう。

ま、嘘じゃない部分もあるんだけど。


「説明してもらえるかな、」


一切表情を変えないまま社長が言った。


「………。
なんだか変なように書かれていますが、出てきた店はただのバーです。最近行きつけの。
隣の方は友人です。少し飲みすぎてしまったのでタクシーまで付き添ってもらっていました。」


こんなのもちろん全部嘘だ。


あのビル、一応バーが入っていてね。

それもSMクラブと同じ店長。


もし撮られるようなことがあればバーに行ってましたって言いなさい、ってカズに言われてた。


翔さんがスタッフであることまでは知られていないし、まぁ大丈夫だろう。

俺と外に出る時、翔さんには普通の格好をしてもらっているし。


「…理由はなににせよ、今後に少し影響があるかもしれません。
やはり最近勢いのある松本さんは狙われると思っていたんですよね…。」


はぁ、とため息をこぼしたマネージャーを見て、無事に誤魔化せたと安堵した。


「…しばらくはその店に行くことを控えた方が良さそうですね。」


「えっ、」


「張っているかもしれません。」


「そんな、、、」


本当の理由を告げていないからには、これ以上なにも言うことが出来ない。


でも、しばらく通えないなんて…。

ツー、と冷や汗が背中を伝っていくのを感じた。


「これ以上おもしろおかしく事実ではないことを書かれても、困るのは松本さん本人ですよ。」


「………分かりました。。。」


…どうしよう、俺。


ーーー




S side


「ニノ、、、」


「さぁね。だから忙しいんでしょう。」


ソファーにだらしなく寝転がってスマホゲームをしているニノの名前を呼んだ。


はぁ、と思わずため息が漏れる。


潤がまた店に来なくなったのだ。

最後に来たのは3時間コースだったあの日…もう1ヶ月前になる。