せっかく翔さんからサービスを受けていたところだったのに、マネージャーからの1本の電話で中断せざるを得なくなった。
夜遅いのにも関わらず、直接会って話がしたいというので仕方なく店を出た。
…マネージャーには近所のコンビニまで来てもらい、マンションのすぐ近くまで車を停めてくれた。
そして降りようとしたのだが。
「ここで話しましょう。すぐ終わりますし。」
真っ直ぐ前を向きながらそう言ったのですぐ終わるなら…、マネージャーの言う通りにした。
「…最近うちの事務所が週刊誌に狙われています。他の俳優さん方が撮られていたのはネット記事で見かけましたか?…くれぐれも変な写真を撮られないように気をつけて。」
「…。
え、それだけ?」
「えぇ。」
「…それなら別に直接じゃなくてもよかったじゃん。」
「松本さんなら直接がいいかなと。ただの勘です。」
「俺だってせっかく早く切り上げて帰ってきたのに…。なんだ、それだけか。。。
じゃ、お疲れ様。おやすみ。送ってくれてありがとう。」
なんてこんな風に普通に返事をしたが、内心はドキドキと心臓が早鐘を打っていた。
勘って怖い。
まるで俺があの店に通っているのを知った上、忠告する意味も込めて言ったのかも、、、なんて思えてしまう。
もし撮られたらどうしよう。
週刊誌なら嘘も本当のように感じられるように書くし、多少盛ることもある。
店から出てくるところを撮られたら、俺は…。
「…1ヶ月………。」
その時、1ヶ月だけ我慢しようと思った。
1ヶ月程度経ったら週刊誌記者たちの熱も引いて、うちの事務所から目を離すかなって。
ーーー
それから決めた通り1ヶ月ちょっと店へ行くのを我慢して、久しぶりのサービスは翔さんから受けることにした。
なんだかさ、カズよりも翔さんの方が好きだなぁって思えてて。
カズももちろん好きなんだけど、、、
だから、1ヶ月ぶりにとても楽しめた。
そう、それでね。
翔さんが最後に、
「おいで、愛してるよ。」
って。
本心じゃないのは分かってる。
翔さんはスタッフで俺は客で、普通の恋人同士ではないから。
でも、もう時間は終わっているはずなのにそんなこと言ってくれる翔さんが…。。。
…翔さんからしては本心じゃなかったけど、俺からは本心を伝えた。
翔さんに本心はきちんと伝わっていないと思うけど、
「…俺も、愛してるよ。」
って。
嘘だけど…一切心にもないことなんだけど、翔さんに愛してるよって言われたことが、その時の俺は嬉しくて嬉しくて…。
内心舞い上がってしまっていた。
ーーー
嘘の「愛してるよ。」を言われた翌日も、当たり前のように仕事が入っていた。
いつも通り無事に仕事を終えられて、帰ろうと思ったところでマネージャーに声を掛けられた。
…話があるんだって。
また?
って思ったんだけど、そんなスルーする訳にもいかないし。
そうして、マネージャーの運転する車でなぜか事務所へまで連れて行かれた。