「あ、知ってます?この人。」
ぼんやりと外を眺めていたところ、不意に相葉さんにそう言われ、天井近くの角に設置されている小さなテレビに視線を移した。
…テレビがあるんだ、ってびっくりした?
設置されてはいるんだけど、実は観ちゃダメなんだよね。
でも巡査長の岡田さんがパトロールに出て居ない時は、相葉さんがこっそり観てる。
俺はなにも言わないけど。
だって怖いし、岡田さん。
「…かっこよくて綺麗な人ですよねー。」
画面に映っているのは炭酸飲料のCMで、出演しているのは潤だった。
「…。」
急に当たり前のことを思い出す。
潤は俳優なんだって。
それも最近人気の。
意外な一面を知ってから、俳優・松本潤をこうしてテレビで見るのは初めてだった。
炭酸飲料のCMということもあって、汗を垂らしながら爽やかな表情をしている。
「…松本潤、ですね。」
「まるで別世界の住人ですよねぇ。こんな人が同じ東京に住んでいるなんて考えられない。」
見惚れているかのようにぼんやりとテレビを眺めながら、相葉さんが呟いた。
…別世界、か。
きっとなにも知らないままで居たのなら、その言葉によく共感出来たと思うんだけど。
実際に彼は昨日、俺の下で、、、
「あっ、やべ!!!岡田巡査長帰ってきたかも!今俺の直感がそう告げた!」
「…。」
慌ててテレビの電源を落とし、リモコンを引き出しの中に仕舞った。
まだ岡田さんの姿はなく、今回も無事にバレることはなかったということでホッと一息ついていた。
、、、直感だから、ホントに帰って来るかなんて分からないけどね。
「松本潤、好きなんですか?」
「え?まぁ。かっこいいですし。
…人って外見を気に入ったら、中身をもっと知りたいって思うようになると思うんです。今はそれになりかけてるってところ…でしょうか。
あ、もしかして同担拒否ってやつですか?!それだったらごめんなさい!」
「いや、別にそんなんじゃありませんよ。ただ聞いてみただけです。」
口ではそんなことを言いながら、そういえば昨夜の潤の急用ってなんだったんだろうとふと思う。
マネージャーが直接会って話したい、って言ってたのは覚えているけど、あんな夜遅くに呼び出すなんてことあるんだな。
ーーー
次にあの店へ行けたのは3週間後だった。
ほぼ1ヶ月振りだが、いつも通りスタッフルームに入った。
が、そこにニノの姿はなかった。
今夜はちょうど潤が来ているのだろうか。
で、潤の相手をしている、とか。。。
フロントに声を掛けに行こうかと、既に熟れた感じを出そうとしている自分に内心苦笑したが、スタッフルームを出ようとしたところでドアが開いた。
「おっ、びっくりしたぁ。
来てたんだね。」
入ってきたのは案の定ニノだった。
「えぇ、まぁ。
潤来てたの?」
「いや、ちょっと出てただけ。煙草切らしちゃってね。」
ん、と手に提げていたコンビニ袋を掲げた。