「うわーかっこいいー!!!やっぱ元が良いとなに着てもかっこよくなるもんだね。」


感心するように1人うんうんと頷いた。


言っていた通り、アメリカンポリスを模したこの衣装。

黒いつばのキャプテンハットに後ろの裾が長いロングジャケット、その内に着ているのは金の2本線が入ったシャツ、黒いネクタイ。

両手にはフィンガーレスグローブが嵌められ、またまた金のサイドラインの入ったパンツに、極めつけはツヤのある真っ黒なロングブーツ。

ハットやジャケット、グローブは派手にギラギラと輝く紅いスパンコールで装飾が施されている。


「…これ、もしかしてほとんど手作りなんですか?」


「ん、まぁね。結構前からうちの店にあったんだけど、なかなか着る人がいなくて。でもよくお似合いの人がここに1名。これはもう翔ちゃんのものだよ。翔ちゃんの仕事着はこれに決定。」


「いや、だからここで働くとは、」


「よし、準備も整ったことだし、部屋に向かおうか。」


「…。」


歩く度にカツカツと音を立てる靴音が随分慣れない。

こんな服装で普通に歩いているのも恥ずかしいし、すれ違うこの店のスタッフであろう人にも不思議な目で見られる。


「…うちにはよくあるホストみたいな、ナンバーワンとかナンバーツーとか、そういうものはない。ただ、1人のお客様専属スタッフがここでは地位が高い。」


「専属…。」


「文字通り、そのお客様しか相手にしないってことだよ。一般客じゃなくて芸能人とか政治家とか、VIPな常連さんの専属だとなおさら店の中ではいい立場でいられる。
…俺は松本潤の専属なんだけどね…、」


話している途中でとあるドアの前で立ち止まり、ゆっくりとそのドア開けた。


…ドアの先はまるで高級ホテルのスイートルームのようで。

かなりレベルの高い部屋に圧倒される。


一つだけ違う点をあげるとするのなら、スイートルームとは違い、壁は無数の穴が空いていて、完璧な防音対策が施されていることだろう。


「…専属なんだけど…、今日は特別。俺の大切なお客様を貸してあげるよ。」


部屋の奥へと進むと鎮座しているベッドが目に入った。

そしてそこに座る松本潤の姿も。


彼と目が合うと、ハッとしたように息を呑んだのがすぐに分かった。


「潤くん、今日の代金は結構。その代わり、こいつも交ぜさせてもらってもいいかな?」


松本潤に近づくと、慣れたように隣に座り、それがさも当然と言うかのように腰に手を回す。


「…えっと…。」


「どうかな?彼、かっこいい顔してるでしょ?潤くん好みの。
…初めてだから色々教えながらやりたいんだよ。潤くんはまぁ、、、被験者みたいな?お試し無料プラン。いかがでしょう。」


「………カズも一緒にいてくれるの?」


「もちろん。彼に色々教えてあげないといけないからね。」


「カズがいるなら…。」


松本潤の伏せられた長いまつ毛が揺れ、こくりと首が縦に振られた。


「ふふ、ありがとう潤くん。大好きだよ。」


そう言って、二宮が彼に躊躇うことなく短いキスをした。


…この2人の雰囲気。

一体、ここまでのものになるまでにどのくらいの時間がかかったのだろう。

2人は確実に客とスタッフに過ぎないのに、そこら辺の付き合いたての恋人よりもずっとずっと甘い雰囲気を感じられる。


それに何より、お互いがお互いを信じ合っていて。


俺が入り込む隙間なんか一切ないように思えた。


「ほら、あんたもこっち来て。」


二宮に手招きをされ、恐る恐る2人の元へ近づいた。


「じゃあまず自己紹介ね。」


ん、と顎で差され、「やれ」という合図をされるけど、、、

なんにも教えられていないのに、まさかもう早速始める気なのか。


「櫻井翔、です。旧字体の櫻に井戸の井、飛翔の翔で、櫻井翔。」


「………翔、さん。」


上目遣いでこちらを見上げた。

その目は零れそうなくらい大きくて、うるうると潤っている。


初めて間近で見る、整いすぎた美しい顔に思わずゴクリと唾を呑む。

もちろんテレビで観るよりも、何十倍も何百倍も綺麗な人だ。


「松本潤です。よろしく、お願いします…。」


遠慮がちに、コクっと頭を下げた。