※こちらのお話は潤翔です※
「この生活って、いつまで続くの?」
「ずっと。」
「…。」
「ずっとだよ。」
全く悪びれる様子もなく答えた。
「…逆にどういう答えが返ってくると思った?だって翔さんは俺の食糧だよ?そんなの、地球からいつ食糧が尽きますか、って聞いてるのと同じだよ。」
「そ、そうか…。」
「翔さんの未来は決まっている。ずっとずーっと俺に血を吸われながら生きていくこと。いいじゃんいいじゃん。住む場所があるんだし。」
…きっとこう言われた時から、もう。。。
ーーー
俺が"食糧"となってから、数ヶ月が経った。
疲れて帰ってきたところを襲われて…っていう生活を毎日毎日毎日。
こんなのが一生続くと思うと、気が遠くなるようだった。
毎日噛まれたことで、体中は噛まれた痕まみれ。
全てが綺麗さっぱりと消えることはなく、前に噛まれたところは痕が残ってしまっている。
こんなんじゃ接待で温泉とか行けねーし…。
いつの日かそんなことをボヤいたら、潤は楽しそうに笑っていた。
「翔さんの裸を見られるのは、本当に俺だけなんだね。」
って。
…グイグイ血を強請るくせに、恋愛は奥手なのだろう。
俺を見る目や、それに近いようなことをするようになってきて、気持ちがあるようにしか見えなかったが、、、直接的なことは一切していない。
ただ"食事をするため"として、俺の身体に触れるだけ。
…まぁ、そっちの方がありがたい。
こちとら男にする、されるということには興味がないし。
あ、案外最初の頃に
「ノンケだから。」
って言ったのが響いてるのかな。
そうだとありがたいんだけど。
…まぁどちらにせよ、限界は近づいていた。
いや、、、既にもう限界を超えてしまっていたのかもしれない。
ーーー
「…少しも話す気はない、って感じ?」
「ん…まぁ、、、色々ややこしい話だからな。」
「ふぅん…。」
朝、潤が寝ている隙にこっそりとスーツケースに少しの荷物を詰めて、雅紀にお願いした。
「数日だけ泊めて欲しい。理由は聞かないでくれ。」
って。
…そう、逃げたかったんだ。
あの暮らしから。
随分迷惑な話だが、心優しい雅紀に漬け込んだ。
思った通り、雅紀は快く了承してくれて、今雅紀の家なんだけど、、、
「ま、翔ちゃんも色々あるよね。ここ最近ずっと疲れた顔してたし。」
「そうか?」
「うん、恋人もいないのに、どうしたのかなーって思ってた。」
「…そう。」
平然を装っているフリをするが、実はさっきからポケットで震えているスマホが気になって仕方がない。
確認しなくても分かる…、潤だろう。
帰って来ない俺を心配するメッセージ。
でも既読がつかないから、恐らく心配のメッセージから疑いのメッセージへ変わっていくはず。
…最初に言われた。
「逃げたら殺す。」
って。
でも、スマホに勝手にインストールされたようなGPSのアプリはなかったし、雅紀の家の場所なんて潤には分からない。
だからこの逃亡劇は、俺の完封勝利で終わる。
…はず。
さて、いつまでも雅紀の家に居座る訳にはいかないから、どうしようか。
なんてことを呑気に考えていた。