※こちらのお話は潤翔です※





「…なにその目。。。
あっ、血の味が気になるって?」


そう笑うと、顎を掴んで無理矢理唇を重ねてきた。


           っ、!!、、、」


躊躇いもなく舌が入ってきて、奥で縮こまる舌を吸うようにして絡め取られる。


「ん"んっ、、」


口の中には微かに自分の血の味が広がり、堪らず顔を顰めた。

やがて、満足したような潤の唇がゆっくりと離れていった。


「何考えてんだよ、」


「美味しいでしょ?」


「ただの血だよ。
てか俺はノンケだって、前言ったはずじゃ…!」


「俺ならすぐにその気にしてあげられる、って、これも前言ったね。」


「チッ…早くどけろ。満足したんだろ。」


唾液で濡れた口を袖で拭い、早く立ち上がるよう催促した。

…こんな綺麗な奴がずっと俺の上で馬乗りになってたら、変なことしか頭に思い浮かばなくなってしまうから。


その目が妖しく俺を誘い、赤い唇が耳元で言葉を囁き、白く綺麗な手が俺の上を這い回る。


…それが近いうちに現実になってしまいそうだから、なおさらだ。


「こっちはまだ不満だけどね。」


ニヤリと笑い、股間を撫でるように一瞬触ると、ようやく立ち上がった。


「……シャワー浴びる。」


完全に俺をその気にさせようとしている態度に腹が立って、着替えを使ってシャワールームに向かった。

だが、


「ねぇ、気づいてないから言うけどさ。シャワー浴びてるとこ、丸見えだよ。」


「は?」


こっち、と潤に手を引っ張られ、リビングに連れて行かれてシャワールームに視線を向けた。


そしたら、、、

いや、脱衣所が無くて、浴び終えてシャワールームを出たらリビングから丸見えだとか思っていたけど、まさかシャワールームの中までこちらから…。

だって、シャワーもシャンプーも見えるし、、、、、


「でも鏡……マジックミラーか!」


「せいかーい!」


「チッ。。。」


「舌打ち多いなぁ。」


「ふざけてんな。」


「あれは俺がやったんじゃないよ。恋人が俺に残していったこの部屋が、最初からそうなってたの。
…ふふ、何考えてたんだろうねぇ。」


クスクスと肩を震わせて笑う潤に心底呆れて、構わず俺はシャワールームに向かった。













………きっと舐めるように見られているんだろうなと思う。


シャワールームに入ってしまえば、こちらから外の様子は一切窺えない。

だってただの鏡なんだもん。


見られていていい気分になる訳がないので、さっさとシャワーを浴び終えた。


ーーー


それからしばらく、会社から帰ってきたら血を吸われる日々が続いた。

どうやらスーツ姿のままの俺に噛み付くのが好きらしい。


帰って来るとすぐに抱きついて、いやらしい手つきで身体中を撫で回しながら、

「お腹空いた♡」

なんてハートマークがつきそうな台詞を吐く。


人間にとっても、楽しめる食事はいいことだ。

きっと吸血鬼にとっても、普通に血を吸うよりかはスーツを脱がせられるオプション付きの方が、より"食事"を楽しめるのだろう。


…1度だけ、聞いたことがある。

「この生活って、いつまで続くの?」

って。