※こちらのお話は潤翔です※





S side


あぁ、最悪だ。

目を覚ました瞬間、そう思った。


眠らされた後の、普通とは違った体の気怠さ。

そんな体はベッドに横にされている。


が…予想外なことに、他には何もされていなかった。

というのも…例えば、拘束されたり、目隠しされたり…。

でも、何もされていない。


…とりあえず部屋から出ようと、何度かドアノブを捻ったものの、ドアは開かない。


まぁ、そうだよな。

拘束されていないから、逃げることを考えるだろうと、あっちも想像ついていたはず。


「…はぁ。。。」


あー、本当に面倒だ。

時計も窓もないから、今が何時なのかも分からないし。


早く家に帰りたい。

仕事したい。


…なんであんな頼みを正面から受け入れたんだろうなぁ。

母性本能だとか庇護欲とか言ってた前の自分をぶん殴ってやりたい。

やっぱり人ならざるものとは関わらないのが1番だった。


イライラして八つ当たりにドアを蹴飛ばしたら、たまたまドアの解錠音とともに、潤が部屋に入ってきた。


「うおっ、」


タイミング良すぎ。

ドア蹴飛ばしたから殺されるかと思った。


「起きたんだ、おはよう。何してんの?」


「あっ、、いや…、」


「そこ、座って。」


そう潤が指したのは、先程まで俺が寝ていたベッド。

まぁ座るっつったらベッドぐらいしかないし、そもそもこの部屋ベッドしかないし。


座ろうと、ドアに背を向けてベッドの方へ歩き出したところ、背後でドアに鍵をかける音がした。


…随分用心深いんだな。

そういう性格か?


やがて腰掛けた俺の前に立った潤は、おもむろに口を開いた。


「今日から翔さんと俺はここで一緒に暮らす。」


「いや…だからさ、」


「異論は認めない。無条件で。」


「…。」


その表情を見れば本気であることはすぐに分かった。


…そしてこの口調。

昨夜(と仮定する)のあの甘え上手な可愛らしい雰囲気とは違い、ニコリとも笑わずに、刃物のような鋭さを持った言葉を投げつけてくる。


………あれは全て演技だったのか?

同情させ、ここまで連れて来るための。


「でも俺は監禁なんかしない。…あの人とは違うから。
仕事は今まで通りに行っていい。戻る家はここだけど。」


「つまり、外に出ていいってこと?」


「俺の元から居なくならなければいいだけ。もし逃げたら殺す。」


「…、、、」


とんだ脅し文句だな、と思った。


「逃げても無駄。すぐに場所は分かるから。」


「…確認するけど、、、俺はお前に血を吸わせてやるだけ、だよな?」


「今のところはね?」


怪しげに視線を逸らした潤が気になって、眉をひそめた。

…この含んだ言い方、、、絶対になにかある。