※こちらのお話は潤翔です※





「"喰う"じゃなくて、そんな、、、!…"吸う"ですよ!」


「…どっちも同じだろ。」


「真面目に聞いてくださいよー!毎回ちょっとだけでいいんです!ちょっと噛ませて、ちょっと血ください!!」


「んなこと言われても…。」


「献血程度の気持ちで、、」


「バカか。」


「………お、美味しかったんです!!!」


突然声を張り上げたものだから、思わずびっくりする。

ギュッと手を握りしめ、堪えるようにする其の姿はまるで、、、


「美味しかったんです。久しぶりに人の血もらえて。…いつもその辺の野良猫とか、最悪トマトジュースで我慢して…。
でも、それじゃあ全然栄養とれなくて、、、やっぱり、人の血じゃないと…。いつもあのバーで相手探してたんですけど、だーれも捕まらなくて。。。頼るところもないし、、、」


「…。」


雨粒なのか涙なのか分からないのが、頬から伝って落ちていく。

そんな、必死に言われても、、、


「…お願いします!」


固く目を瞑って腰を曲げ、俺の方に手を伸ばした。


…人ならざるものとは関わりたくない。

今までだってそうして生きてきた。


でも、、、困っている奴をスルー出来る程、俺は酷い人間じゃない。


それに必死にお願いしてくるこの感じが、なんだか母性本能をくすぐられるというか、庇護欲が生まれるというか。


だんだんこいつのことが可哀想に思えてきて。

俺が救ってあげないとダメなような気がしてくる。


「…分かったよ………。」


「えっ、、ホント、ですか!?」


「ちょっとだけ、な。失血死とかやめろよ。」


「はい!ありがとうございます!」


雨でぐしゃぐしゃの顔で、目の前の吸血鬼は嬉しそうに笑った。

それがなんだか可愛く思えてしまったのは、きっと気のせいだろう。


ーーー


先程投げ捨てた傘を回収し、お礼に手料理を振る舞ってくれるというので、俺は安易に男について行った。

お互いに驚くほどびしょ濡れで、もうここまできたら傘もささなくていっか、ってことで、2人傘もささずに並んで歩いている。


「お前、名前は?」


「潤。潤う、って書いて。」


「ふーん。」


「えっと、あなたは?」


「櫻井翔。旧字体の櫻に、井戸の井。それから飛翔の翔。」


「すごい。芸能人みたいにカッコイイ名前なんだ、、、」


「んな大袈裟な。
………俺、さ。人と人ならざるものを見分けられるん、だよ、ね…。」


「え?」


「そう、だからあのバーに入った時、ピーンって来たよ。あいつは人じゃない、ってね。」


「…そっか、分かってたんだ、、」


「ま、吸血鬼ってことまでは見分けつかないけどな。」


「びっくりした?」


「んー…まぁ今まで人じゃないのは何回も見たことあって、その度に関わらないようにしていたからな…。
あっ、けどそういうところで言うと、話しかけられたのは初めてだったから焦ったなぁ。」


「でも、俺の作るお酒美味しかったでしょ?」


「…まぁ。。。」


そう…こんな感じで、人間でもない相手といい感じに仲良くなったのである。

…食物連鎖が俺らの間に成り立っているのに。


ーーー