「そっ、卒業旅行、、!?」


翔くんの合格発表がされた数週間後の、10月も半ばの頃。


「うん。今日言われてさ。」


驚いて目をパチクリさせる俺とは違い、至って冷静に続ける。


「教育学科の友達…4人くらいかな。無事にみんな受かったから行こう、って、言われて。」


「も、もう日程とかも決まってるの?」


「うん。再来週。3泊4日の沖縄旅行。」


「沖縄、、、、、」


あれ…、なんか、目眩が、、、←


「お、おお沖縄、沖縄かぁ、、うん、まぁ、いいところだよね。うんうん。暖かいし。」


3泊4日…少なくとも4日は翔くんと会えないってこと、、、?

4日だけ……、いや、4日もだろ?!


てか…再来週って…。


「再来週…俺確かヒートだよ。」


「えっ?!」


「うん。間違いない。昨日確認したもん。」


「そんな…、、じゃあ旅行行かないよ。」


「何言ってんの。ダメに決まってるでしょ。」


「でも、、、」


「いいよ、ヒートぐらいで。いつものことだし。」


明らかにシュンと項垂れている翔くんを見て、呆れたように笑った。


ーーー


そしてあっという間に日が経って、キャリーバッグに大きめのリュックを背負った翔くんが旅立った。


…計画はなんでも細かいところまで立てないと気が済まない翔くん。

どこへ行くのかとか、どこのホテルに泊まるのかとか。


予約も含めた計画立ては、翔くんが自らやると立候補したらしい。

嬉しそうにスマホの画面とにらめっこしていた。


「…。」


翔くんの居ない部屋。

やけに広く、寂しく感じる。

…翔くんと番になる前って、俺、どんな風に過ごしてたっけ。


「…とりあえず薬飲まないと、、、」


今はまだヒートの症状は起きていないが、明日にはどうなっているか分からないから。


その日の夜は、沖縄に到着したらしい翔くんから何枚もの写真が送られてきたから、退屈しなかったけど。


ーーー


「、、、う、……。」


翌日の朝。

しばらくベッドから起き上がることが出来なかった。

予め学校には今週1週間はお休みもらっているから、家で休んでいていいんだけど。


なんせこれはΩだけが起こすヒートで。

まさかベッドの上で安静に、大人しく、、、なんてことが出来る訳もなく。


「しょお、くん………、」


ベッドの上でいくら名前を呼び、手を伸ばしたって、その手は空をかくばかり。

隣で寄り添って、体温を分け合ってくれる翔くんなんか居ない。


「……っ、、、」


翔くんが居ない。

翔くんが。

俺の翔くんが、、、


その事実が、どうしようもなく俺を不安にさせた。