M side


「今日のせんせーは随分ソワソワしてますね。」


…1年生から彼のことを見てきたけれど、すっかり大人になった菊池。

そんな彼ももう、高校3年生の中盤である。


あ、どうやら菊池もK大に行くらしい。

最近知った。

…教師になるつもりはないらしいけどね。


「…菊池はいつから俺のエスパーになったの?」


「こんだけ一緒に居たら分かりますよ。ま、1番は先生が顔に出やすいからですけど。」


「え?顔に出やすい?」


「とても。」


「…。。。
今日は教員試験なの。翔くんが朝出発して。」


「へー!今日だったんすか!」


「…あの翔くんなら絶対大丈夫なんだけど、、、でもやっぱり心配で…。」


「ふーん。じゃあ今日1日中先生はそんな感じってことすか。」


「そ、そうだね。自分ではいつも通りのつもりだけど。」


するとポケットの中でスマホがブーブーと震え始めたので出してみると、翔くんからの着信だった。

微かに震える指先で通話に出た。


「も、もしもし?」


「無事に終わったよ。」


「…!
そう、よかった、、、!」


視界の隅で面白くなさそうにしている菊池が目に入ったが、構わず通話を続けた。


…聞くところによると、翔くん的にはかなり自信があるらしい。

色々と過去問を解いてきたけど、今回のは比較的簡単だった方らしい。


その言葉に、重たい肩の荷がグッと降りたような気がした。


きっと今が昼休みであることが分かっているから、翔くんは電話してきてくれたのだろう。

電話越しとはいえ、本人の声が聞けたことに酷く安心した。


ーーー


試験日の俺の心配は杞憂に終わった。

一次試験も…その後の二次試験にも合格したんだ。


翔くんからLINEで結果を教えられたその日、今までにはないスピードで帰宅した。

息を切らしながら玄関のドアを開けると、目の前には満面の笑みを浮かべる翔くんが。


「おめでとう、翔くん。」


「…ありがとう。」


「、、、っご、ごめん、、!急いで帰って来たから、何も買ってきてないけど…。」


「いいんだよ、別に。
…俺は、いつも通り過ごしたい。それが潤からの合格祝いでいいよ。」


「…ん?」


翔くんの言葉の意味を理解しようとするため、グルグルと頭の中で考えていると、翔くんがギュッと抱きついてきた。


「…潤との時間をちょうだい?」


ーーー


「…っ、あ、しょおくん、、、」


…思えば、とんでもない台詞だった。


「だめ……そんな、、、」


その後は結局一緒にご飯を作って(とは言っても、翔くんはお湯を沸かしただけ。他は危ないから。)、作ったご飯を一緒に食べて、一緒にお風呂に入って、一緒にテレビを観て、、、

そして、一緒のベッドに入って今に至る。


「潤、、なんか今日すごいよ…。」


「、っ、そんな、、」


翔くんが今最も大切なのは教員試験だから、って、ずーっとずーっと控えていた。

…お預け食らってたのは俺も同じで、…ホントすんごい久し振りなんだから。


「…っ、だって、俺だって、ずっと、、我慢して、、、、、」


正 常 位だったのから、上半身を起こして翔くんの首に腕を回す。


「ホント、よかった、、、」


そのまま自然と唇を重ねた。


ーーー