「…あ、、」


「ん?」


智さんが目を懲らす先に、自分も視線を移す。


すると新雪の中、明らかに不自然な雪の積もり方をしているところがあった。

まるで、誰かが倒れているところに雪が積もったような、、、


雪に足を取られながら、慌ててそこに駆け寄った。


「潤様…!」


うつ伏せに倒れていて、背中に積もった雪を払い、顔を優しく素手で払うと、見慣れた綺麗な顔が出てきた。


「…とりあえずは良かった…、すぐ近くで…。」


「、、、酷い熱です。呼吸も荒い…すぐ王宮に戻りましょう。」


「馬車を呼んできます!」


智さんが来た道を戻り、俺は雪から潤様を取り出す。

いや、掘り起こす?


もう、なんでもいいけど。


クッションは冷えきっていたけれど、馬車からそれほど離れていないところに倒れていた。

…ということは、ここで倒れてからかなり時間が、、、?


「潤様、潤様…!」


必死に呼びかけ続けるも返事はない。

が、、、


「………あれ?」


数十m先に、馬車と荷台のようなものが見える。

雪が降り積もっているけれど、あれってもしかして、、、


いや、今はとにかく潤様だ。

そう思って仕方なーく潤様を引きずりながら、来た道を戻った。


ーーー


「王妃、、!」


「ちょっと引きずっちゃったので雪まみれに、、、」


「いいんですよ、今は。」


2人一緒になって、潤様についた雪を払った。


「そうだ。潤様が倒れていた数十m先に、馬車のような物が見えました。雪が積もっていてはっきりとは見えなかったんですが、あれは恐らく、、、」


馬車の中で潤様を横にし、毛布やらなんやらを掛けながら言った。


「行方不明だった…?」


「はい。
…私がここに残ります。彼らの安否も大切です。」


「え?」


よっこいしょと、一緒に積んであった食料などの荷物を抱えた。


「潤様をよろしくお願いします。」


深々と頭を下げて馬車を降りた。


「…お任せ下さい。」


背後から力強い智さんの声が聞こえた。




ーーー




翔 side


「…本当によろしかったのですか。王妃を行かせて。」


窓の外を眺めているカズが、視線をこちらに動かさないまま呟いた。


王妃である潤とその側近。

それから衛兵1人と頼れる官僚である智さんを連れ、潤は行方不明となっている者を捜しに出て行ったところだった。


「…自ら行きたいと言い出したのだ。なにを言っても聞かなさそうな、あんな意思の強い目は初めて見たよ。」


先程の光景が頭に浮かんだ。